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第三十三話 【罪焔聖妖胎界迷宮イグニス=ラグナ】

 扉を開き、中へ入ると入口から順に灯りが点いていった。

 看板がすぐそこに刺さっており、そこにはこう書かれていた。


『【罪焔聖妖胎界迷宮ソラリス・アウレア・ジェネシス・メイズイグニス=ラグナ】に辿り着きし者達よ。汝らの燃え盛る野望を計りし聖なる場所である。偽りは許されぬ事を心に刻め』


 【イグニス=ラグナ】という迷宮は聞いた事が無いな。

 というより、文面が《憤怒(ラース)》のように古い物言いをしている事が気になる。

 やはり過去の《大罪》が作った迷宮なのだろうか。


「進むしかない……か」


「みたいだなー」


 壁は外と同じく赤褐色で、灯火魔道具がかけられている。

 仮に昔に作られたのであれば、このレベルの魔道具が過去に存在していたという物的証拠になるだろう。


 やはり世界は作り変えられている。

 《大罪》はそれに抗うのが使命なのか……。

 だとして、ここまで緻密な設計が成された魔道具を作れるレベルの文明でも負ける、あるいは世界は変えられてしまうのか。

 中々な無理難題ではあるな。


「一本道か。何があるか分からんな」


 ひたすら真っ直ぐに道が続いている。

 所々同じ様に看板のような物が刺さっているのが見える。


 二つ目の看板にも同様に文字が書いてあった。

 そして読もうとすると、いきなりガシャンと道が閉ざされ、左右の壁が開いた。


『選ばれし者よ。汝らに課せられた使命を理解している者は右へ。己が未来を貫かんとする者は左へ進め』


 問いかけの結果で何か変わるのだろうか?

 《大罪》に課された使命といえば、先程考えてたあれに該当するだろう。

 そう思ってレアと共に右に進もうとしたが、シトリーヌが左へ進もうとしていた。


「あれ、お前らはこっちじゃないのか?」


「ああ。俺にはその使命が分かっている。逆にお前は分かっていないのか?」


「んー、分かんねえな。オレは飯が食いたいだけだ」


 そう言いながら左へ進んでいく。

 俺達も進むか。

 またもや一本道で、ただ歩く事しか出来ない。

 そのままずっと歩いていると、先程のように看板が見えて来た。

 読もうとしたが、何やら後ろから叫び声が聞こえて来た。


「ギャアーー!! 助けてくれー!」


 シトリーヌがこちらへ走ってきている。

 何故後ろから……?

 というより、何に追われているんだ?


「おい、お前ら! 逃げろ! ……ん?」


 シトリーヌがふと後ろを振り向くが、そこには何も無い。

 幻覚でも見えているのだろうか。


「どうしたんだ? 俺には何も見えなかったが」


「おかしいな。いきなり後ろからでけえ石の球体みたいなのが転がってきて、壊そうとしたんだけど硬すぎてさ。でも転がってくるから逃げてたんだけど……?」


 俺には何も見えなかったから、幻覚か別次元との境にでもいたんだろう。

 レアにも見えていなかったようだしな。

 無事だったのならそれで良い。

 次は何だ?


『選ばれし者よ。汝らの力の根源を認知している者は右へ。己が力で勝ち取ったと思う者は左へ進め』


 《大罪》の力の根源は感情だ。

 感情に由来して力が生まれている。

 もしかしたら俺の場合はエレボスが関連しているのかもしれないが。

 兎に角根源自体は理解している。


「まあ、右だな」


「ん」


「オレも右かな」


 満場一致で右へ進む。

 今度はそこまで遠くない場所に看板があった。


『選ばれし者よ。汝らの負が動力源となっている者は右へ。欲が全てである者は左へ進め』


「右だな。あいつらにされた事を忘れてはいない」


「……私も、一応はある」


「オレは左だけど……多分お前らの方が正しそうだな。オレも右にしよう」


 それで良いのか?

 分からないが、とりあえず右へ進んでいくと、いきなり壁が閉まった。

 そして何やら文字が書かれている。


『偽りは許されぬ』


 シトリーヌの事か?

 と考えていると、床がスッと開き落ちていく。


「はあ!?」


「何だこれ!」


 幸いそこまで深くには落とされなかったようだが、何やら大きな部屋に出た。

 以前の【ノクティルム】のボス部屋(・・・・)のような……。


「そういう事かよ……」


 “聖炎熾天サンクトゥス・ソラリス・セラフィム イグニス・エゼル”


 天使かよ……。

 悪魔はよく見るが、天使は今まで戦った事が無い。

 それどころか、天使は信仰対象になっている場所も多く、戦う事が許されない。

 一体どんな技を使ってくるんだろうか。


「《聖抑輪冠(ヘリオス・コロナ)》」


 天使の頭上の輪が冠となり、光が放たれる。

 身体の魔力が抑制され、だるくなっていく。


「成程な。こりゃあ中々な理不尽だ」


 《憤怒》がほとんど発動しない。

 この身一つで戦えと?

 無茶な事をしてくれる。


 《怒剣ラグナ・レイジ》を顕現させるが、使い物にならない。

 ただの剣と化してしまったが、素手よりはマシだろう。

 いつも通りに斬りかかろうと思うが、身体が全くと言っていい程動かない。

 天使に何とか近づくも、ひらりと避けられ相手にされない。


「クソ、どうしたら良いんだ?」


 《憤怒》は発動しない上に、天使の動きは素早い。

 まともに攻撃が当てられるはずも無く、対抗手段が存在しない。

 思考を巡らせるが、天使が攻撃してこないわけもない。


「《天炎墜罰(ヘリオスレイン)》」


 炎の雨が降り注ぐ。

 気合でレアを抱えて避けるが、一発足に掠ってしまった。


「クソ、あっちいな……」


 再生が遅い。

 《怒気解放(ブレイズギア)》はとうに発動させているというのに、身体が重く鈍くなって動いてくれない。

 シトリーヌはというと、元から身体能力が良いのか俊敏に動いている。


「シトリーヌ! 何か異常はあるか?」


「オレは特に何も無いけど、二人ともなんかあったのか?」


「俺達は使い物にならないと思ってくれ! すまないが、頼む!」


 そうシトリーヌに叫んで伝えながらも炎を避ける。

 まだ終わんねえのかよ……!


 それから少しして天使の炎がようやく途切れた。

 その隙にシトリーヌがどこからか出したハルバードで斬りかかるが、俺のように避けられてしまう。

 どうにか戦う方法は無いのか……?


 仮にあいつがただの天使であるならば。

 この俺程度までしか抑制出来ないのならば、対抗する手段が一つだけある。


「来い、《怒剣ネメシス》!」


 通常通りに使えるかは分からないが、物は試しだ。

 前と同じように地中からせり上がってくる。

 柄を握ると、始祖エレボスの怒りが身体中を巡って満たしていく。

 これならいける、と思うものの、ネメシスが抜けない。


「おい、ネメシス。どうした?」


「分からぬ。恐らくだが、結界による次元の乖離が原因だろうな。すまないが、我にはどうしようも無い」


 ふざけるな。

 こいつも使い物にならねえじゃねえか。

 せっかくの希望が潰えてしまった。

 どうしたものか……。


 とはいえ体内の魔力は回復している。

 これなら戦えるかもしれないが、ネメシスを手放した瞬間に消えてしまう。

 しかしネメシスはこの場から動けない。

 レアに頼るか。


「レア。俺の魔力を使えるか?」


「うん。普通なら出来ないけど、ルクスのなら出来るよ」


 レアが俺の身体に手を当てて魔力を行使していく。

 何ともみっともない恰好をしているような気がする。

 まあ、ネメシスが抜けないのが悪いな。


「《嫉茨共生シンバイオシスエンヴィ》」


 レアの茨が天使へと飛んでいくが、ひらりと翼をはためかせて避けられた。

 次なる茨を飛ばしていくものの、全て避けられてしまう。

 だが、その援護のおかげでシトリーヌの一撃が直撃した。


「オラァ!」


 雄々しいな。

 そのたくましさのおかげで生きてこれたのだろう。

 吹っ飛んでいく天使をレアの茨が捕捉した。


「《嫉茨侵花(エンヴィ・パラサイト)》」


 天使が茨に包まれる。

 だが、眩い光が部屋を覆った。

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