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第二十二話 《影光の結理》

 街中の冒険者に緊急招集がかかった。

 主にB級冒険者は戦闘要員、C級冒険者は物資運搬や規制などの雑用である。


「各員臨時パーティを組んでくれ! 出来るだけ大人数で頼む!」


 そう大声で呼び掛けているのは【冒険者ギルドヴァルグレイア支部副ギルド長】のエーヴァルトだ。

 元A級冒険者で、【黒晶迷宮ノクティルム】を第六階層まで初めて攻略した人物。


 エーヴァルト以外にも【ノクティルム】で有名になったA級冒険者は多くいる。

 例えば《白刃の宵姫》の二つ名を持つヴァイスフェルト。

 彼女は【ノクティルム第一階層支配者】のタナトスピアを最初に攻略し、大量死の時代を終わらせた。

 他にも《夜織りの魔女》と呼ばれたロザリンデ、《静夜の観測者》イザークなどがいる。


「あ、ルク……カイ! 一緒に組もー!」


 《運命の輪シックザールスクライス》の三人が誘いをかけて来た。

 まだ慣れていないのか、名前を間違えかけるも訂正してくれた。

 もしこいつらが来なければどうしようかとも思ったが、全員問題を見過ごす事は出来ない人達なので来るとは確信していた。


「ああ、俺達もそのつもりだった。そこで、お前らに頼みたい事があるんだが、頼まれてくれるか?」


「うん! カイの頼みなら何でも聞くよ!」


「おいおい、エルナ。いやまあ、別に拒否はしねえけど、先に話を聞けよ」


 快諾するエルナと、それを止める二人。

 まあ話を聞く前に引き受けるのはやめた方が良いな。


「それは俺もそう思うが、とりあえず三人に頼みたい事を伝える。まず、俺達はギルドの指示に従うつもりは無い」


 それを聞いて困惑する三人。

 正常な反応だろうな。



 そうして俺らが下層を目指していく事、それに伴った冒険者達の保護、万が一の緊急脱出についてを伝えた。

 《帰途の楔(ウェイバック・ピン)》を渡すと、存在は知っていたものの実際に使った事は無かったのか、凄く興味深そうに眺めていた。


「臨時パーティは組み終わったか!? 準備が出来次第突入するため、臨時パーティを組んだ者達は代表者が報告を頼む!」


 エーヴァルトが今後の動向と今必要な事を呼び掛けている。

 そういえば、俺とレアのパーティの名前をつけてなかったな。


「なあ、レア。俺達パーティ名つけるの忘れてたな」


「……実は私、考えてたものがある」


 おお、何だろうか。

 気になるな。


「《影光の結理シャッテンリヒト・クロイツ》……どう?」


 おお、中々良いじゃないか。

 俺は好きな響きだ。


「かっこいいな。じゃあ、それにしよう」


「そう……? ありがと、ふふ」


 褒められて嬉しそうなレアを片手に撫でつつ、フリードに話しかける。


「で、フリード。俺らは報告に行くか。じゃあ、レア。喧嘩すんなよー」


「ああ、そうだな。お前らも、仲良くしろよ」


 人が多く、複数人でいくと邪魔なので仕方なく置いていく。

 レアが少し目を見開いてあわあわとしていたが、まあ平気だろう。


「すまない、臨時パーティの申請をしたいんだが」


「はい。パーティ名と所属メンバーをお願いします」


「《運命の輪シックザールスクライス》の、俺がリーダーのフリードだ。メンバーはエルナとリーゼルだ」


「俺は《影光の結理シャッテンリヒト・クロイツ》。カイとレアの二人だ」


 ほぼ殴り書きのような感じで急いでメモしている。

 更に色々と資料を見ながら照合していく。

 これだけ仕事がありゃ大変だな。


「はい、登録完了しました。仮にパーティKとしますので、どうぞ、準備が出来次第【ノクティルム】の攻略をお願いします。五人の内四人がB級なので第四階層までが認められますが、無理はせずに帰還して下さい」


「ああ、分かった」


 まあ、《大罪》がいなければ無視して第六階層まで行くが。

 早くレアの元に戻ってやるか。


「なんか久しぶりだな。ル……カイとこうやって臨時パーティを組むのは」


「ああ、そうだな。《光剣の誓約リヒトシュヴェルト・エイド》がA級になってからは、会う事すら難しかった。またお前らとこうやって戦えるのは嬉しいよ」


「本当に、お前と初めて会った時はまだあんな子供だったのに。いつの間にか越されちまったな」


 はは、と笑いながらそう語りかけてくるフリード。

 フリードらにはとても世話になった。

 こいつらがいなければ俺はもっと早く死んでいたかもしれない。

 いつか恩が返せると良いのだが。


「親かよ、はは。まあ、似た様なもん……ん?」


 人に溢れているはずの冒険者ギルドで、何故か少し人が避けている場所がある。

 しかもそこにいるのはレア達三人、と……茨で巻かれた男が三人。

 駆け寄ってレアに事情を聞くのが先だな。


「おい、レア。何があったんだ?」


「……こいつらが、無礼だった。それだけ」


「だからってわざわざ茨を出してまで、何をされたんだ?」


 レアは別に沸点が低いわけではない。

 俺の事となると一瞬で激昂するが、まあそれだけ大事にされているという事だろう。

 それは置いといて、一体何があったのやら。


「カイ、レアは悪くないの。だから、責めないであげて……?」


 エルナがレアを庇うように話しかけてくる。

 別に責めているわけではない、ただ何があったのか知りたいだけである。


「……こいつらがエルナとリーゼルにベタベタ触るから、仕方なかった。私は悪くない」


「あ?」


 低く重い、冷たい声がつい口から飛び出る。

 レアが怯えているが、誤解を与えてしまったようだ。

 抱き寄せて撫でながらもう一度聞き出す。


「こいつらが、二人に、何したって?」


「……エルナとリーゼルを引っ張って無理矢理抱き寄せたり、胸触ったりしてた」


 決めた。

 殺す。


「おいおい、とんだ命知らずもいたもんだなあ? あ? てめえら、迷宮に入るよりも先に死にてえか?」


 茨で縛られているので、下手に動く事が出来なくなっている。

 とりあえず《怒気解放(ブレイズギア)》を発動させ軽く蹴り飛ばす。

 そこまで力を入れたつもりはないが、吹っ飛んで行った。


 悲鳴が聞こえてくるので少し楽しいかもしれない。

 残った二人も飛ばしていく。


「ふう。レア。あの茨って今からでも毒入れられるか?」


「……出来る、けど、どうするの?」


「食中毒とかって入れられたりするか?」


「入れられるよ。強さは?」


「そうだな、一週間くらい苦しむやつで頼む」


「分かった。……出来たよ」


「よくやった。そしてよく二人を守ってくれたな。ありがとう」


 褒められる事が予想外だったのか、少し驚いたように目を見開く。

 そして微笑んで、口を開いた。


「エルナは、カイの大事な人だから、リーゼルも。だから、私にとっても大事な人。だったら、私が守らなきゃ」


 そう言って貰えるとありがたいな。

 俺の為であったとしても、取った行動は良かった。

 まあ、現場を見てないから分からないが、転がってるあいつらを周りの冒険者が追撃しているため、恐らく常習犯なのだろう。


 いやあ、時間がかかってしまった。

 早く【ノクティルム】へ向かわねば。

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