表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セフレ・アイドル  作者: 055ジャッシー
第十二章「逢瀬」
93/96

メイド喫茶

 神田君と別れた僕はプレッシャーから解放された。別に彼が嫌いとかいう訳では無い……僕の隣に神田君の「推し」相模絵美菜が変装して立っていたからだ。

 テレビのドッキリ番組で、仕掛け人はきっとこんな緊張感を味わっているのだろう。もちろんファンを目の前に白を切っていた相模絵美菜こと鮎川桂も同じ気持ちだったに違いない。


「まっくーん、お腹空いた! そろそろお昼ご飯にしない?」


 前言撤回。彼女は全く緊張していなかった! しかもお腹空いたって……つい数分前におでん缶を食べたばかりじゃないか!?


「さっきおでん缶食べたでしょ?」

「えっ、あれで足りる?」


 まぁ確かに、昼食が缶詰一個というのは流石に物足りないだろうが……ただ、先程は変装がバレなかったとはいえ油断は禁物だ。

 何と言っても隣に居るのは芸能人、しかも昨日活動再開を表明したばかりの国民的アイドルグループ・カントリバースのメンバーだ……世間の注目度は高い。

 そんなトレンドワード上位にランクインしている人間とどこでランチをしたらいいんだ? 高級レストラン? いや、それは夕食で予約済みだし今から飛び込みで入れる訳が無い。意表を突いてファストフード店? それは危険すぎる……僕がお店選びに悩んでいると、


「私の知ってる店が近くにあるの! そこにしましょう」


 どうやら桂の行き付けの店があるらしい……取り越し苦労だったな。



 ※※※※※※※



「メイド喫茶やってまーす! よろしかったら遊びに来てくださーい」


 しばらく進むとメイド喫茶のビラ配りに遭遇した……もうすっかりこの界隈の名物だ。最近はコンカフェ(コンセプトカフェ)とか呼ばれていて、メイド以外にも様々なテーマで統一されたカフェや喫茶店が存在する。

 アルコールを提供する店が増えたからだろうか……夕方から開店するイメージが強いが、それでも昼から営業している店はまだまだ多い。


 それにしても、現実では絶対に存在しないであろうミニスカートのメイド服……こんな真冬に大変だなぁと心配しつつも、今の僕たちはメイド喫茶に用は無い。もしうっかりミニスカメイドと目が合い、しつこく勧誘されたら困る。ところが、


「あっもしかして、カントリバースの相模絵美菜さんですか?」


 えっ……バレた!?


 こっ、これはマズい! 最悪のパターンだ! こういう子たちってすぐSNSで発信しがちだ……多分だけど。

 桂はどういう対応を取るのだろう? 否定する? 適当にごまかす? いずれにせよ、この状況で認める訳にはいかないだろう。


「そうですよ」


 認めやがった! いいのかよ!? 隣に男がいるんだぞ!


「あ、あの! 大ファンです! 握手してください」

「いいですよ」


 桂は何食わぬ顔でミニスカメイドと握手した。さらにミニスカメイドは配っていたビラを取り出してサインをねだったが、


「えっ、それに(サイン)するの? 駄目よ、商売道具じゃない」


 と、目立たぬよう静かに諭した。だが、


「すぐに交替するでしょ? (店の)中に入ったらちゃんとサインするから」


 え? 中って……?


「あっそうそう! 店長いる?」

「あっはい……い、います!」


 しかも店長って……桂の行き付けってここだったのか!?


「さ、()()()()! 入りましょ」


 桂は僕の名前を呼ぶと店の階段を上った……ってあれ? 今、僕のことを「まっくん」じゃなくて苗字で呼んだよな?



 ※※※※※※※



「お帰りなさいませ~ご主人様! お嬢様!」


 僕と桂は入り口に「Sun’s(サンズ)」と書かれた店に入った。最近は多種多様な……所謂コンカフェが増えたが、どうやらこの店は王道の(?)メイド喫茶みたいだ。すると僕たちを出迎えてくれたミニスカメイドたちがざわつき始めた。


「あ、あの……もしかして……」


 あ、この流れは……


「えぇ、相模絵美菜ですよ!」


 それを聞いたメイドたちが一斉に黄色い声を上げた。おいおい、大騒動になるぞ……と思ったが店内は閑散として他に客は居ない様だ。席に案内されると桂は、近くにいたメイドに声を掛けた。


「ねぇ、店長呼んで来てくれない?」

「あっはい! ただ今……」


 桂こと相模絵美菜と会って興奮が押さえきれないメイドの一人が店の奥に向かうと、程なく中から……


「あら~お久しぶりぶり~びーなすちゅわ~ん」

「エンマちゅわ~ん! 久しぶりぶり~!」


 かなりクセの強い中年男性が出てきて桂とハグをした。どういう意味でクセが強いのかと言うと……ここは千代田区だが、どう見ても新宿区しかも二丁目に多く居そうな人にしか見えないのだ。


「紹介するね、この店の店長の滑川さん」

「いや~ん、本名で呼ばないでよぉ~」

「エンマちゃんって名前で昔、新宿でドラァグクイーンやってたの」


 ドラァグクイーン……納得いったよ。


「そして私の……恩人よ」


 ……えっ?



 ※※※※※※※



「もぉ~、来るんだったら前もって連絡してよね~」

「ごめんごめん! 急に来たくなったから……それと(カンリバ)再始動の挨拶もしてなかったし……」

「そうよね、活動再開おめでと~! ま、どうせ平日の昼間でイブの翌日なんて客いねーし……今日は貸し切りにするから、ゆっくり遊んでね~! あ、そちらのご主人様も!」

「ありがとーエンマちゃん」


 桂にそう声を掛けると、店長の滑川さん……もといエンマちゃんは仕事が残っていたらしく、そそくさと店の奥へ戻っていった。するとメイドの一人が店外に出て先程ビラ配りをしていたメイドを呼び寄せた。僕……いや桂のため急遽貸し切りになったからだ。メニューの説明を受けた後、僕は桂に聞いてみた。


「ところで……何であの人、エンマちゃんなの? エマちゃんじゃなくて」

「だって、似てるでしょ? 閻魔大王様に」


 桂の一言に僕は笑いをこらえるのが精一杯だった。なるほど、エンマ(閻魔)が店長をしているメイド(冥途)喫茶……だから店の名前がSun’s(三途)だったのか。ある意味コンセプトカフェなのかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ