第24話《真実》
―――過去を少し思い出し、思慮にふけていると‥‥‥カシャカシャと鉄がぶつかるような音がし、周囲を警戒する。
「―――誰だ」
途端、鉄の音が止んで一人の騎士らしき人物が現れる。
「―――貴様こそ何者だ」
‥‥‥これ面倒なやつだ。この後俺が「人に名前を聞くならまずは自分から名乗れ」とか言ったとしよう。
―――多分通用しない顔してるぞアイツ。
「‥‥‥悪いが答えることはできない。だが―――お前の目的はなんだ?」
「貴様みたいな悪党に答える道理はないわ。―――死ね」
―――まあこっちのほうが楽だな。
魔力を励起させ、背後に魔法陣を展開する。
剣製で作成していた刀身を魔法陣の中に入れ―――魔法を発動する。
「(非殺傷塗装)、(グロームエッジ)」
刀身に魔力による塗装が展開され、雷が剣を延長させた。
そのまま一歩を踏み込み―――一閃。
それに反応した騎士が即座に剣を抜き、防御の構えを取るが―――俺の刃‥‥‥雷の刃が剣を貫通し、その肉体に攻撃を加える。
「ッ!?‥‥‥ッなにが‥‥‥?」
身体が痺れ動きが封じられたその男を見つめ―――もう一度言葉を紡ぐ。
「もう一度聞くが―――お前の目的はなんだ?答えなかったら‥‥‥最悪、死ぬかもな」
適当に脅しをかけ、情報を吐かせようとするが―――
「‥‥‥断る。私は騎士として、敵に情報を渡すわけにはいかないのだよ‥‥‥!」
「そうか。なら無理矢理見させて貰うぞ」
最初から鑑定で情報を調べられたら良かったんだが‥‥‥。流石に情報の出どころもないし信頼されない。それにコレ、国家機密でも余裕で拔けるヤバい性能してるからそれも問題なんだよなぁ‥‥‥。
これを軍事利用されたらどうなることか‥‥‥。だから基本人相手には使いたくないんだよ。
だが―――今回は例外だ。《真理の魔眼・鑑定》
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立場:フレアシス家直属騎士団長
目的:フェルナ・サディフォートの奪還
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‥‥‥ヤバい思ってたのよりマトモなところから来てた。しかも奪還ってあるからな‥‥‥。誘拐とかではなくフェルナに何かしらの関係があるところなんだろうか?
まあどっちにせよマズいことには変わりないが。
‥‥‥ヤベえどうしよ!?これ国を盾に脅迫してこの件を不問にしてもらうくらいしか思いつかないんだが!?
‥‥‥いや、一度冷静に会話してここから友好を示せばワンチャンあるな。
「―――先程は攻撃を仕掛けてしまいすまなかった。こちらも勘違いを起こしていたようだ」
「‥‥‥なに?」
「無理矢理ではあるが貴方の立場、そして目的を調べさせてもらった。そのため―――敵対する意味が無くなった」
彼は半信半疑、といった表情で質問してくる。
「つまり―――貴様は私の味方だと?」
「一概にそうとは言えないが―――少なくとも敵ではない。お互いフェルナを助けに来たんだろう?」
「‥‥‥そうだが―――どうやって知ったのだ?」
「残念だが秘密。それで、これからフェルナを護衛するわけだが―――学園よりフレアシス家の方が距離は近いよな?ならそこに運ぼうと思うんだが‥‥‥」
「‥‥‥うむ、感謝する。出来れば私についてきて貰いたいのだが‥‥‥私がこの有様ではな」
「それについて問題はないが―――移動が遅くなるのが一番の問題だな。なら‥‥‥《剣製》―――アルディライン」
幅広い刀身を持つ大剣を錬製し、ストレージに内包しているロープを取り出す。
「時短の為にこの剣の上に乗ってくれ」
「―――待て待て待て。なぜ私はロープで剣に括り付けられているのだ!?」
「だから時短だよ。まあ荒っぽい手法を取らせて貰うが。―――(ウェポンブラスト)」
魔力を調整し、俺がギリギリ追えるラインの速度で射出する。
「そして‥‥‥よっと。やっぱ軽いな‥‥‥。(瞬雷)、(統魔)」
―――フェルナを背負って‥‥‥さて、さっさと剣と騎士を追いかけにいきますかね。
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―――あれから三十分程で領地に到着し、俺は魔法を解除する。
「―――ふう。とりあえず到着したが‥‥‥大丈夫か?」
地面に寝そべってピクピクと痙攣している騎士に向かって話しかけ、様子を確認する。
「‥‥‥これで大丈夫だと思えるならお前は精神異常者だ‥‥‥」
「そうだな。なら―――(キュア)」
状態異常を回復させる魔法を発動し、少しでも調子をよくできるようにするが‥‥‥気休め程度しか効果はないだろう。
「―――感謝する。多少はマシになった。それでは‥‥‥領主様の屋敷に行こうか」
立ち上がった騎士について行き、しばらくして俺は大きな屋敷の前に立つ。
「少し待っていてくれ。流石に関係のない人を勝手に入れるわけにはいかないのでな」
‥‥‥やはりここら辺は厄介だな。しかし‥‥‥なんでフェルナはフレアシス家に回収されようとしていたんだ?
この家に関係性があるのは明白。だとしたらどんな関係だ?
考えつくのは‥‥‥困ったな。一つしか思いつかん。
家名が本来はフェルナ・サディフォート・フレアシスとかなら分かるんだが―――俺の鑑定眼には映らなかった。ならそれも違う―――いや、もしや本来の家名がそうなのか?
例えば―――実家から勘当されたとか。又は―――望まれた命ではないから捨てられた、とか。
‥‥‥前者はともかくとして―――後者なら許せんな。この世界ではこれが普通だとしても、俺は許せない。
「―――すまない、時間をかけた。入ってきても構わないぞ」
‥‥‥考え事をしている間に時間が経ったのか、さっきの騎士が戻ってきた。
「わかった。‥‥‥それで、俺は何で来たんだ?」
「お前にはこれから―――領主様に会ってもらう事になっている」
‥‥‥唐突だな。
「‥‥‥展開についていけないがとりあえずわかった。しかし、何故領主に会うことになるんだ?」
「それを含めて説明されるであろうよ」
その言葉を最後に、会話が途切れる。
それから少し歩き、一つのドアの前で止まった。
「入れ」
俺はドアを開き、部屋の中に入る。
目の前には50代程に見える男性がいて、その気配からこの人物が領主だというのを直感的に理解させられる。
「―――失礼します」
「‥‥‥ああ、よく来たね。ひとまずは‥‥‥ふむ、そこに椅子でも座ってくれ」
俺はおそるおそる椅子に座り、相手の言葉を待つ。
「それでは‥‥‥何を話そうかね。何か聞きたいことはあるか?」
「‥‥‥いくつか。まず―――フェルナは何者なんですか?」
「‥‥‥フェルナ・サディフォートの正式な名前はフェルナ・サディフォート・フレアシスだ。」
―――俺の予想はそこまで間違ってなさそうだな。
「彼女はれっきとした私の娘であるが―――ややこしい事情により、この家から追放された」
‥‥‥この人の表情をみると、後悔、自責の念が渦巻いているのが分かる。
「―――そのややこしい事情というのは?」
「―――簡潔に言えば彼女の母親は私の第二夫人だったのだ。そして、それ自体は問題ではなかったのだがな‥‥‥私の第一夫人が第二夫人の存在をよく思ってなくてな」
‥‥‥え、いやおかしいだろ。貴族の一夫多妻制のことをなんだと思ってるんだソイツ。
そもそも一夫多妻制というのは貴族が確実に子供を生むためのものだ。‥‥‥前の世界だとどうなのかは知らんが。それなのに自分以外の子供を許さなかったのかその女。
「―――正直に言ってよろしいでしょうか?」
彼は首肯し、話を促す。
「その女―――頭は大丈夫なんでしょうか?」
俺がそう言うと嘆息し、
「―――政略結婚といえばわかるだろう。全ての貴族がああとは言わんが一部はそうだ」
‥‥‥うげぇ。これだから貴族社会は面倒なんだよ。
「‥‥‥話の腰を折ってすみません。続きを」
「そうだな。‥‥‥それで、第一夫人の動機は自分以外にこの家での権力は持たせたくない、と言っていたよ。流石に私も驚いた‥‥‥。結果を述べると、第二夫人とメイドが目を離した瞬間に連れ去られ、
捨てられた‥‥‥という訳だ。その後このことを知った私は第一夫人の実家と王家に掛け合い‥‥‥無事とは言わんが勘当となった」
「‥‥‥ありがとうございます。それでは‥‥‥何故このタイミングでフェルナを連れ戻そうとしたのですか?」
「君にこう言っては悪いが、簡単に言えばスペア‥‥‥彼女の姉に何かあった時の保険みたいなものだ。そして―――彼女を見つけたのは最近でな。彼女の住んでいた孤児院に話を通し、許可を貰った上で私直属の騎士を向かわせたんだが‥‥‥運悪く、王都からフェルナが連れ去られたとの連絡があってね。移動を開始した騎士に連絡し、救助に向かわせたという訳だ」
‥‥‥嘘は読み取れんな。俺の眼も反応しないし―――偶然、か。
「‥‥‥それで、また運の悪いことにフェルナを連れ去った連中を討伐した私と鉢合わせ、その騎士は勘違いして襲いかかってきたと」
「その話も聞いている。まさか彼が負けるとはね‥‥‥。驚いたよ」
‥‥‥この感じだと戦闘行為自体は不問にしてくれそうだな。感謝感謝。
「恐縮です。それと‥‥‥この事はフェルナには?」
「いや、まだだ。それも―――」
ドアがトントン、と叩かれて会話が中断される。
「‥‥‥入れ」
「―――失礼します」
‥‥‥入ってきたのはフェルナだった。
「フェルナ、無事だったか?」
「フィーレンくん!?なんでここに‥‥‥」
俺を見つけるのと同時に驚きの表情を浮かべるフェルナ。
「ふむ‥‥‥フェルナ、彼の隣にでも座りなさい」
その言葉を聞いたフェルナは、おずおずとしながらも席に座る。
「フィーレン君‥‥‥だね。君には二度手間となるだろうが―――フェルナ・サディフォート。君についての話をしよう」
―――俺は既に聞いたがフェルナにとっては衝撃の真実が含められた話が始まった。
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「正直現実味がないけど‥‥‥貴方が私の父‥‥‥なんですよね」
「うむ。そうだな。‥‥‥それと、フィーレン君にフェルナ。口調を楽にして構わないぞ。流石に固いままだと言いたいことも言えんだろうしな」
「―――それなら。えっと‥‥‥」
俺はここまで話していて、一度も自己紹介をしていないことに気付く。
「―――ああ、すまない。自己紹介を忘れていたね。私はガリウス・ゴルヴァラード・フレアシスだ」
「俺はフィーレン・エイプレイ。‥‥‥ああ、フェルナはいいぞ。多分二人共理解しているだろうしな」
「‥‥‥それで、ガリウスさん。貴方に一つ質問がある」
「‥‥‥なにかね?」
「―――さっきの話、フェルナを正式にこの家の人物とするってことだろう。つまりフェルナは貴族になるってことだ。だが―――それはフェルナがなりたくないと言っても変わらないのか?」
「‥‥‥そうきたか。ならば、この事についての解答をする前に―――フェルナ。君はどうしたいのか聞こうじゃないか」
そこで俺たちはフェルナを見つめる。
「―――私は‥‥‥この家に居たいって、そう思います」
「―――それで?」
俺はフェルナの台詞にまだ続きがあるように感じたため、フェルナに話を促す。
「でも―――フィーレンくんがいる。それだけで私は貴族になりたくないって、そう言えます!昔の私や、フィーレンくんに出会わなかった私なら、もしかしたらここで断れなかったかもしれません」
「けど‥‥‥今の私はフィーレンくんと一緒に学園生活を送りたい。だから―――私は貴族になんかなりたくありません」
覚悟を持った瞳で、毅然とフェルナは応える。
「‥‥‥いい覚悟だ。ならば、私もフェルナの家族として、その望みを叶えなければな。‥‥‥して、フィーレン君。断るための方法を教えよう」
‥‥‥フェルナも覚悟を決めたんだ。だったら、俺もそれ相応の覚悟を決めないとな。
「―――方法は単純、だが非常に難しいものだ。‥‥‥私が納得の行く戦闘能力を見せたまえ」
その言葉を聞いた俺は―――口角を上げ、笑みを浮かべる。
「―――簡単じゃねえか。いいぜ、俺がアンタを納得させてやるよ!」
ガリウスさんもまた、笑みを作り返答する。
「‥‥‥君には二つの試練を受けてもらう。一つ目は‥‥‥我が騎士団総員との決闘だ」
―――さあ、フェルナのためにも勝ちに行こうじゃないか!
解説:何故戦闘能力を示さなければならないのか。
結論から言うとフレアシス家はフェルナが生存してれば問題はなく、フェルナを護衛し守れるように主人公の戦闘能力を試す、という訳です。
あまり深く考えないのであれば貴族故の面倒な事情とでも思っていただければ充分です。
‥‥‥自分でも書いてて何言ってんだコイツ状態になったのでここは賛否両論あるかと思われます。
それと、この小説のリメイクを行うと前話で供述したかと思います。それについてリメイク版(第一章まで)を今作とは別に投稿することになりました。最終的にはこの作品に統合する形となりますが、それでも見ていただければ。時間は同日同時刻。リメイク前と後、どちらが良かったかなどの感想もいただけると幸いです!
今回も見ていただきありがとうございました!




