第23話《救われた少女とヒーロー》
後書き長め。
《side・フェルナ》
―――何も無く、幼いころの思い出は消えた。
―――私は本当の両親と過ごした記憶はない。
自我が芽生える間もなく私は捨てられていたらしい。その後は孤児院に引き取られ、命が脅かされたりはしないが、決して満足のいく生活は出来て無かったと言えるだろう。
ある日は蹴られ、またある日は罵詈雑言をかけられ、院長はただ静観するばかり。子供同士のじゃれ合いだと一切取り合ってくれなかった。
なぜこんなことをされるのだろう?と思い、考えながら日々を過ごす。
一度なんで?と聞いたこともある。その時言われたのは―――「だってお前、イラナイ子、ってやつなんだろ?だったらオレたちがユウイギに使ってやらないとな!」
‥‥‥だ。子供とはなんと恐ろしいのか。幼心ながらにそう恐怖を覚えたのだ。
―――そんな生活も少ししたら崩れ始める。
選定の儀で天回師の職業を貰い、他の子供も剣士や魔法使いなどの職を貰ったが―――悲劇は起きる。
私以外に上級職を貰った人はいなかったのだ。
―――それにより私の生活に危機が訪れた。
子供たちの行為はエスカレートし、大怪我を負うこともしばしば。このとき、自分で回復ができて良かったと思う場面はないだろう。
―――少なくとも、そこまで酷い状況だったのだ。
子供たちからいじめられながらも私は日々を過ごし―――ある日、転機が訪れる。
それは、基礎教育学校についての張り紙。
特待生というものになれば学費もかからず、生活が保証されると知ったのだ。
それを目にした瞬間―――それだ。と、思った。
それからは孤児院の書物を読み漁り、冒険者ギルドに出向き回復魔法で金を稼ぎ、生活のための資金を貯めていた。
―――最初は金を稼いだ事がバレ、子供たちに奪われた。だが一度隠し場所に金を隠すと、それ以来見つかることはなかった。
そうして数年が経ち、私自身がこの孤児院から離れる時が訪れる。
王都へと向かう最中、私は様々な人と交流した。歴戦の剣士や優秀な魔導師など、職は問わなかった。
そんな中―――私と同年代の銀髪の魔法剣士との交流があったのだ。
彼は覚えていなかったが、私は鮮明に憶えている。私に様々な娯楽を教え、優しく接してくれたあの人。他にも交流を持った人達のおかげもあり、私の荒んだ心は浄化されていった。
―――そして、特待生として入学することに成功した私は、銀髪の彼とまた出会えたのだ。
嬉しいことに彼から話しかけてくれて、仲を深める事ができたのだ。
私は
そして―――私は彼のことを―――。
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《side・フィーレン》
―――追いついた。
「―――(ウィンドブラスト)」
風を放出し、馬車の車体を大きく揺らす。馬が馬車を制御しきれなくなり、地面に倒れる。
「―――襲撃か!?」
中から何人もの男が現れ、周囲を警戒している。
「急に馬車が倒れたからな‥‥‥うお!?馬車の装甲が若干へこんでやがる。お前ら!敵襲だ!」
ッチ、バレてるな。焦ったか‥‥‥?
「‥‥‥フェルナが生きてるかだけでも確認しないとな。《真理の魔眼・千里眼》」
千里眼を発動し、視界を自分から飛ばし、馬車の中を確認する。
‥‥‥いた。息は‥‥‥大丈夫そうだな。他には‥‥‥気絶してて縄で縛られてるくらいか。
なら―――正面切ってぶっ飛ばす。
「さて―――(偽・無限の可能性)、起動」
脳内で詠唱を完結させ、簡略化してイフを起動する。
―――空間を飲み込み、世界を改変する。
「な―――!?何が起きている!?敵の空間魔法か!?警戒しろ!」
「残念だが‥‥‥警戒する余裕なんて与えねえよ。イフ、《剣製》の高速展開を頼む」
『了解しました。《剣製》、発動補助を開始します』
世界に魔法陣が無数に展開され、その中から剣群が現れる。
そして、その中の一本を手に取り、腰に下げた。
その全ては同一のものというわけではないが、束縛の性質を持つ。
「《百重詠唱》―――(ウェポンバースト)」
剣群を掃射し、不意の一撃を決める。
「なん―――ガァッ!?」
何人か剣に当たり、動きを封じ込まれる。
―――だが動きが鋭いのがいて、ソイツは剣群を回避した。
「‥‥‥全滅は厳しいか。だが‥‥‥残ってるのはアイツだけか?」
「クソ‥‥‥何が起きてやがる‥‥‥」
「‥‥‥イフ、転移を実行。座標はアレの2メートル背後」
『―――転移を実行します』
俺の存在が一瞬にして掻き消え、背後に移動する。
剣を首に突きつけ―――言葉を吐く。
「―――動くな」
そう言った瞬間、男は振り向き―――顔を歪ませる。
「テメェか‥‥‥!?クソッタレ!(影法師)!」
瞬間、男の姿が消え数メートル離れたところに現れる。
「‥‥‥短距離をノーモーション、なおかつ一瞬で移動するスキルもあるのか‥‥‥。便利だな」
「どの口で‥‥‥ほざきやがる‥‥‥!」
「知るか。フェルナを誘拐した罪―――悔いて反省しやがれ。(居合二連・双半月)」
二刀を半円状に振るい、相手の出方を伺うが‥‥‥。
自然体で踏まれたバックステップによって回避される。
「転移したときはビビったが‥‥‥そこまで速くないようだな。ならば―――(蜃気楼)」
途端、目の前の空間が揺らぎ、男の姿が二重に見える。
そのまま持っていた短剣を逆手に構え―――突進する。
―――嫌な予感がする。脳内で警報を鳴らしている。カウンターを狙った生半可な回避じゃダメだと、そう言っている。
「イフ、10メートル距離を離して転移」
『了解』
攻撃が当たる数瞬前に転移し、距離を離す。
‥‥‥考える余裕が生まれている今、蜃気楼の謎を解け。
―――蜃気楼とはどんな効果だ?
あの名前と男の姿を完全に捉えられなかったことも加味し―――考察をしろ。
蜃気楼は恐らく錯覚を起こす能力だろう。原理は不明だが‥‥‥回避の仕方を間違えた瞬間にズバン!と俺の身体は斬り裂かれるだろう。
だからといって大振りな回避だとスタミナが切れるし隙が生まれやすい。
「普通の方法だと対処出来ず―――なおかつ、俺の眼で暴けるなら‥‥‥《真理の魔眼・心眼》」
心眼の効果は心の目で正しい景色を映し出す眼だ。これを使えば―――ビンゴ。
ちゃんと一人に見えるし‥‥‥ブレたりすることもない。
「そうだったな‥‥‥お前さんには転移があるんだったな。だが―――いつまで魔力が保つかな?」
「そうだな―――いちいち転移してりゃ魔力は足りないかもな。だが‥‥‥もう完全に見切ったよ」
お互いの視線が交錯する。俺は魔力を高め―――足に力を込める。
「(瞬雷)、(ヴァーミリオン・アップ)、(統魔)。そして―――(瞬間加速)」
魔法を発動し、一瞬にして距離をゼロにする。
男はまた短剣を振るい、笑みを浮かべているが―――それに対して俺も笑い返す。
「悪いな―――聞こえてなかったか?もう見切ってんだよッ!(雷切)!」
体を一歩下げ、剣製で生み出していた剣を抜刀し―――紫電と共に一筋の線が流れた。
「‥‥‥これで終わりだ。お前はこれから目覚めることは‥‥‥まあしばらく無い。次に起きたときは牢獄の中だろうよ」
倒れた男の前に立ち、そう言葉を述べる。
世界が崩壊し、元の平原が目に映る。
―――フェルナは無事だろうか?
ふと心配になり、俺は馬車に目を向け―――そこに、眠っている少女を見つけた。
俺は安堵と共に息をつき‥‥‥
「なんだよ‥‥‥案外無事じゃねえか。まあ、それはそれとして―――助けに来たぜ、俺の‥‥‥ヒロイン様」
その言葉と共に、ふと過去を思い出す―――。
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「‥‥‥フィーレンくんは私にとってのヒーローなんだよ。だから‥‥‥私に何かあったとき、助けてくれるかな?」
―――フェルナの誕生日の日、俺は不意にそう言われた。
「何言ってんだか。俺がヒーロー?んなことねえよ。だが―――助ける、か。‥‥‥当然だ」
そう、元より俺は大切な人、物を守るためにこの力を鍛え続けた。
だから、守ることが出来るというのは本望である。が―――
「―――ううん、君が否定しても私にとってはどんな英雄よりも君こそがヒーローなんだよ。それに―――ありがとね。即答してくれて嬉しかったよ」
「そうか。‥‥‥そうだな、俺がフェルナにとってのヒーローなら―――フェルナは俺にとってのヒロインだな」
半分ふざけたようにそう言うと、フェルナの顔が赤く染まる。
「えへへ‥‥‥そう言われちゃうと照れちゃうよ‥‥‥」
そうしてはにかんだ表情を見て―――俺もつられて笑う。
「あー!人の照れ顔を面白がらないでよ〜」
「悪い悪い。でも、照れてんのは俺も同じだって」
―――この時から俺は彼女のことが気になっていた。前世含め恋愛経験ゼロの俺からすればこれが恋なのかは分からない。だが―――少なくとも惹かれていた。これだけは真実だと、当時の俺は言えるだろう。
だから―――俺は、彼女のことを―――。
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『―――好いているのかもしれない』
‥‥‥総合評価三桁達成しました。滅茶苦茶嬉しいです。
正直友人の書いてる作品を見てるとそこまで評価が高くなく(失礼だけど)私自身ここまで伸びるとは思ってませんでした。
あと、現在この物語の第一章の文章があまり良いものではなく‥‥‥というより初心者みたいで変な書き方になってるので(今のほうが比較的マシ)一度ストーリーを変えず表現や文を大幅に修正することに決めました。
以上です。この作品を見ていただいた皆様、本当にありがとうございました!




