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第17話《合宿・3》

 詠唱を開始し、接近する。

 ━━━俺がやるのは詠唱を終えるまでの時間稼ぎ。詠唱さえ終われば━━━恐らく勝てる。


「無限にして有限、夢幻にして幽玄━━━」


「なにをブツブツと━━━ハッ!」


 短剣による攻撃を紙一重で避け━━━反撃。

 左手の剣を薙ぎ、回避を強要させるが━━━


 キィン!


 と、金属音が響き、もう一本の短剣で俺の斬撃が弾かれる。


「グッ‥‥‥」


 筋力では押し負けている‥‥‥どころじゃないな。やはり防御もままならないか‥‥‥。


「(呪風・鎌鼬)五連!」


 クソ、魔法はヤバいッ!

 詠唱で魔法は使えないし、だからって初見の技を斬ることは至難の技だ。

 ‥‥‥なら、見切るしかない、が‥‥‥。


 見えない技は許せねぇよなぁ!

 鎌鼬って言ったからなんとなく予想してたが、全然見えねぇ!


「━━━空に大地に底は無く‥‥‥ッガァ!」


 回避も間に合わず、脇腹が抉られた。

 ‥‥‥脇腹だけで済んだのなら十分。まだやれる。


「天命、輪廻。全てに反逆し━━━未来をこの手に、運命をこの胸に」



 ヤマトイチイバルを取り出し、左の剣をつがえて放つ。


「フッ‥‥‥!嫌な予感がしますね‥‥‥なら、早急に勝負を仕掛けましょうか」


 剣を回避され、今度は逆に俺は接近をされる。

 短剣が俺に振られ━━━イチイバルで咄嗟に防ぐ。


「グッ‥‥‥ガァァッ!」


 そのまま振り抜かれ、俺は吹き飛ばされた。


「綴りて‥‥‥織り成す。始まりと‥‥‥終わりの‥‥‥物語!」


 それでも、俺は詠唱を止めない。

 残った右の剣をまたつがえ、今度は俺から接近する。


「故に━━━果てへと紡がれる零として━━━」


 彼女は目を見開く。俺の詠唱が聞こえたのか━━━それとも、俺が接近したのに驚いたのか。


「それだけは━━━させません!」


 ‥‥‥前者のようだ。

 俺は剣を発射し、ヤマトイチイバルを叩きつける。


「その全てを今、ここに‥‥‥ッ!」


「クッ、(呪風・鎌鼬)、セァッ!」


 鎌鼬が俺の腕を奪い━━━短剣が俺に突き付けられる。そのタイミングで━━━


「《偽・無限の可能性(アンリミテッド・イフ)》!」


 俺は一つの魔法を発動した。


 瞬間、世界が変わる。


「驚いただろ?これが俺の《偽・無限の可能性(アンリミテッド・イフ)》。俺の全てが詰まった魔法さ」


「成る程‥‥‥それがアナタの切り札という訳ですか」


「そういうことさ。悪いが━━━この世界にでそう簡単に俺に勝てると思うなよ」


「‥‥‥そうですか。ならばワタシも本気で相手をしましょう!」


 来る━━━ッ。

 脚に体重を乗せるのを見て確信した。

 そして、俺はそれに対抗するために言葉を紡ぐ。


「━━━可能性(イフ)、起動。LV135の俺にステータスを再構築(インストール)


 瞬間、機械音声が流れる。


再構築(インストール)準備完了。起動に多量の魔力が必要だと判断します』


「なら残りの血晶魔剣二本を使う。それで十分だろ!」


『血晶魔剣の魔力を追加‥‥‥計算完了。戦闘可能時間は三十分です』


「それは重畳!そんだけありゃ━━━十分だ!やれ、可能性(イフ)ッ!」


『了解しました。起動します』


 時間にして一瞬。だけど、その一瞬の間に俺の感覚は引き伸ばされ、再構築される感覚を味わう。


「《剣製》━━━【村雨】二連!」


 刀を二本創り出し、それを構える。


「ハァッ!」


 振るわれた短剣を━━━弾き返す!


 カキィン!


「なっ━━━なんで━━━」


 俺はニヤリと笑い、攻撃を仕掛ける。

 魔力節約のためにバフを切っているためさっきと比べて遅いが‥‥‥それでもそこそこ速い。

 更に、レベル不足で足りなかった力も上がり‥‥‥今なら正面切って戦える。


「貰ったァッ!」


 弾かれてがら空きになった胴体に交差斬り。


「クッ」


 ‥‥‥が、流石と言うべきか、ギリギリのところで回避される。


「‥‥‥ふぅー」


 いったん深呼吸をして、頭をクリアにする。

 焦るな。焦ればそれだけ俺が不利になる。


「‥‥‥確かに、先程と比べると遥かに強くなっていますね。‥‥‥今のワタシではきっと、アナタに勝てないでしょう。ワタシの勘がそう言っています」


「‥‥‥だろうな。流石にあんた相手だったとしても、この世界で俺が遅れを取るわけにはいかないんだよ」


 これは事実であり、同時に覚悟である。

 この世界で勝てない俺は、何をしても勝てない。どう足掻いても勝算は限りなく低くなる。


「ですが‥‥‥ワタシにも矜持というものがあります。故に━━━ワタシの全霊‥‥‥いえ、ワタシの命を賭けて、ここから戦わせて頂きます━━━(呪極・絶化)」


 ━━━空気に呑まれそうになる。

 ゾワッとした魔力を感じ━━━途端、視界から彼女の姿が消える。


 微かな風切り音が聞こえ‥‥‥無理矢理身体を反転させ、その勢いのまま剣を振るうが━━━。


「グッ!?クソッ、重いッ!」


 身体能力の向上‥‥‥だろうか。

 こりゃキツイな‥‥‥よし、ならこっちもッ!


「(瞬雷)、(統魔)、(ヴァーミリオン・アップ)ッ!」


 ‥‥‥よし、これなら━━━


 今度はしっかりと彼女の姿を捉え、動きを合わせる。

 俺の首に短剣が振られ━━━防ぐ。


 ‥‥‥かろうじて防げたが‥‥‥ギリギリだ。

 筋力では俺が劣り━━━速度では恐らく勝っている。


「‥‥‥危ないな‥‥‥」


「‥‥‥また強くなっていますね‥‥‥その強さは一体どこから来ているのでしょうか?」


「さァッ‥‥‥なァッ!」


 無理矢理押しきり、一歩踏み込む。


「《模倣》━━━壱刃曜斬」


 七つの斬撃が展開され━━━二発命中し、右腕と右肩に傷をつける。


「クッ‥‥‥アァッ!」


 後隙をつかれ、攻撃が迫る。

 俺は身体を捻って躱し、回転の勢いを利用して蹴りを入れる。


 ‥‥‥なかなかにキツイ。

 こうやって冷静に状況を振り返ってみるが、やはり体力が削られてきた。

 《偽・無限の可能性(アンリミテッド・イフ)》の制限時間も、俺の魔法の制限時間も迫り、焦りそうになるが抑える。


「‥‥‥そろそろ終幕だろうな」


「‥‥‥はぁ‥‥‥ふぅ‥‥‥ええ。そうですね‥‥‥」


 どうやら息が上がってるようだ。恐らく呪極とか言われた魔法‥‥‥呪法?のせいだろう。


 雰囲気が一変し、緊張が張り詰める。

 お互いに構え直し‥‥‥


 同時に動き出した。


「ラァッ!!」


 近距離まで接近し、お互いの剣を打ち合わせる。

 二撃、四撃、八撃━━━回数と速度を増やし、俺は押し負けないように死力を尽くす。


 ‥‥‥防ぎ切れなかった斬撃を貰い、お互いに傷が増え続ける。


「まだッ‥‥‥だァッ!」


 ステップを刻み、攻撃を当て、逆に当たらないように全方位から攻撃を繰り出す。


 ━━━そして、ついに最大の隙が訪れる。


 単純な袈裟斬りが振られ━━━俺は逆袈裟で打ち返す。

 弾かれて体勢を崩した彼女とは対称的に━━━俺は斬撃の勢いのまま刀を捨て、慣性を捨てた手を‥‥‥剣を握るように構える。


「七剣魔法━━━(デュランダル)ッ!」


 ‥‥‥デュランダルを発動し、その首筋に刃を当てた。


「俺の‥‥‥勝ちだ」


 俺はそう確信を持って告げる。


「ええ━━━ワタシの負けのようですね」


 そして負けを認めた瞬間、俺の世界が崩壊していく。

 その光景は、決着をつけた後に相応しい、そんな景色だった。


「それで━━━アナタはワタシに何を求めるのですか?」


 戦いが終わり、余韻に浸っていた俺はその言葉で現実に引き戻される。

 ‥‥‥何を求める‥‥‥か。そんなの、もう決まってる。

 

「俺の要求は━━━契約だ」


「契約‥‥‥?」


「そう。俺とお前で主従の契約を結びたい。別に悪いようにはしないさ‥‥‥どうだ?この話」


「‥‥‥なるほど。その提案自体はワタシからすれば魅力的な物ですね。‥‥‥ですが、ワタシには魔王との契約‥‥‥いえ、魔法がかけられていまして‥‥‥ワタシが魔王軍から離反したらすぐに連絡が行くでしょう。そのため‥‥‥断らせて頂きます」


 ‥‥‥やっぱりそうだったか。まあ、そのためにデュランダルを当てに行ったんだからな。


「それに関しては問題ない。その魔法は俺が斬ったからな。信用出来ないんならそれでいいが」


「‥‥‥証拠は?証拠はあるのですか?」


「ない‥‥‥とは言わないが、俺の魔眼で調べた結果なにも魔法の痕跡は見つかっていないと出ただけだ。俺の眼を信じるか‥‥‥それが問題だ」


「‥‥‥分かりました。アナタを信用します。では、契約を始めましょうか」


「おう‥‥‥それじゃ、この魔法にサインを」


 内容は━━━


 1.フェリアス・ブラッドエンドはフィーレン・エイプレイに忠誠を誓う。

 2.主の命令は守るべきものであり、主の納得の行く理由を除き遵守する。

 3.フィーレン・エイプレイはフェリアス・ブラッドエンドに対して生活の保障を約束する。

 4.この契約の穴を突くことを許可する。

 5.以上のことを持ち、フィーレン・エイプレイの死までの契約を完遂する。


 この五点‥‥‥いや、四点か。

 期限は俺の死。


「‥‥‥とくに不都合はないですね。むしろ‥‥‥ワタシに許される行為が多いかと思われますが‥‥‥」


「俺がここまでしてでも欲しいってことだ。さあ、これを踏まえた上でどうする?」


「はぁ‥‥‥それ、分かってて言っていますよね?当然受けましょう」


 契約の魔法にサインをされ━━━成立した。


「これより━━━ワタシ、フェリアス・ブラッドエンドはフィーレン・エイプレイを主とし‥‥‥忠誠を誓います」


「俺‥‥‥フィーレン・エイプレイはフェリアス・ブラッドエンドを従者として認め━━━忠誠を受け取ろう」


 ここに契約は成り、一つの未来が変わった。変えようのない未来が、これからの未来を変える第一歩が踏み出されたのだった。


 ‥‥‥とりあえず、国と両親にはどう説明しよう?


 不安を抱えて。


これにて第二章の前編は区切りがつきました。

この後はエピローグ的なやつを書き、後編に突入する予定です。


ここまで読んで下さった読者様に感謝を。


ここからは解説です。


ヤマトイチイバル:前回の説明の補足として、特殊能力があり、矢を十に分裂させるというもの。

偽・無限の可能性:詠唱を変更。これからも変わるかも。内部には詠唱の変更やイメージの強化により、出来ることが増えた。戦闘中にこれを使うのは難しいため、補助として『イフ』が存在する。

呪法:呪いの力を持った魔法。呪風、呪炎などで性質を決め、槍撃や鎌鼬などで形状を指定する。

なんで主人公はこんなことをしたのか:ノリ。あと、こっちに引き込めそうだったから。

強引過ぎない?:許して。個人的には強引な進め方だと思っちゃってるけど、これ以外で終わらせられてフェリアスを引き入れるルートは思い付かないです。あと純粋に時間が足りない。


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