第16話《合宿・2》
11/28:前話との矛盾を改訂。
「さて‥‥‥まずは俺から質問をしたい」
警戒を忘れず、しっかり動きを見ながら対話に入る。
「ええ。ワタシはそれに嘘偽り無く答えることを誓いましょう」
‥‥‥一応嘘の可能性も考えておこう。あれは敵なんだ。その言葉全てを鵜呑みにしてはならない。《鑑定》の応用で‥‥‥嘘を判別は出来るな。鑑定の対象を人物の台詞にすればいい。
「了解した。で、質問だが‥‥‥お前は何者だ?」
「ふむ‥‥‥そうですね。ワタシの立場を明確にするならば‥‥‥魔王軍幹部、吸血姫のフェリアス・ブラッドエンドと申します」
‥‥‥これはマズイ‥‥‥のか?鑑定も真実だと判断してるし‥‥‥。
いや、俺が相手取るには最悪の相手ではあるが‥‥‥それにしても頭おかしい。なんでたかが剣聖一人にこんな大物を寄越すんだよ‥‥‥。
「‥‥‥おう、ありがとう。じゃ、次だ」
あくまで冷静にいこう。動揺は最小限にしておけよ、俺。
「まあ目的は分かってるから別に聞かなくてもいいが‥‥‥なんでお前が俺達に襲いかかってきたんだ?」
空気が一瞬で変化した。
‥‥‥地雷かこれ!ああヤバい、やっちまったやっちまった!
臨戦態勢を整え、動きを観察する。が‥‥‥
「‥‥‥ふう、すみません、あまりその話はしないで頂けると‥‥‥。まあ一応軽く説明しましょうか」
せ、セーフ‥‥‥なのか?
「ウチの魔王が『剣聖殺してこい。お前なら余裕だろ』みたいなことを言い出して‥‥‥。ああ、今でもムカつきますねあれ。仮にもアレは上司なので‥‥‥従わざるをえないんですよ」
‥‥‥マジで?鑑定も反応なし、つまり真実。魔王軍ってブラック過ぎない?正直俺でも引くレベルでヤバそうなんだけど‥‥‥。
目の前のやつは敵だぞ?それなのに、その敵の前で愚痴るほどのヤバいやつが魔王してるとか‥‥‥内政とか大丈夫なのか?
だが‥‥‥これでやりたいことが出来た。
「じゃ、これで最後の質問。お前は‥‥‥魔王軍を止めたいって思ってる?」
「それは‥‥‥止められるなら止めたいですね。しかし‥‥‥ワタシは止めることが出来ません。仮に出来たとしても‥‥‥追っ手に襲われる日々が続くでしょうね」
「‥‥‥そうか。なら━━━ここで終わらせてやるよ!」
そう言い放ち、俺は腰のホルダーからある一つの短剣を取り出し‥‥‥それを肩に差す。
「な、なにを━━」
「さあ、目を覚ませよ━━━《血晶魔剣》、解放!」
その瞬間、辺りに魔力が振り撒かれる。これは魔力の余波。その魔力のうちほとんどは俺の魔力へと変化した。
これによって魔力が全回復。そして━━━
「七剣魔法━━━起動。第弐刃、(レーヴァテイン)」
俺の手に焔を纏った一本の剣が現れる。
‥‥‥これを発動するだけで俺の魔力の半分が持ってかれた。
燃費も悪い魔法だが━━━それ相応の能力がある。
「さあ、行かせて貰うぞ━━━ッ!」
一瞬にして距離を詰め、その刃を振るう。
それを二本の短剣で受けようとしているが━━━それは無意味だ。
「喰らえ━━━レーヴァテイン!」
短剣に当てた瞬間、焔がそれを包み込む。
「なっ━━━」
彼女が武器を手放すのを確認し、俺はそこに追撃を仕掛ける。
「七剣魔法━━━起動。第参刃、(デュランダル)!」
「セァッ!」
俺は剣を振るう‥‥‥が、すんでのところで回避された。
「‥‥‥そう簡単にはいかないか。だが‥‥‥」
俺はホルダーから二本目の血晶魔剣を取り出し、突き刺す。
「第弐刃、(レーヴァテイン)」
左手にレーヴァテインを展開し、構える。
「‥‥‥どうした?来ないのか?」
「そうやってワタシを煽るつもりなのでしょうが‥‥‥流石にアレを見たらそう安易に攻撃出来ませんよ」
「そうか。ならどうする?降参でもするか?」
まあ、答えは分かりきってるけど。
「ご冗談を。それに━━━ワタシにもまだ手はあります」
‥‥‥やっぱりか。
「(呪炎・槍撃)、(呪風・纏嵐)」
呪炎‥‥‥だと?
見た目は(フレイムランス)に似ているが‥‥‥魔力量と禍々しさが段違いだ。それにそこそこ速い。撃てて一発で回避しないと間に合わなそうだな‥‥‥ならどう対処すればいいか‥‥‥。
「とりあえず‥‥‥多重詠唱・五連、(ライトニングブラスト)」
軽めの魔法をぶつけてみるが‥‥‥ダメか。弾かれる。
回避は‥‥‥間に合う。
「(瞬間加速)」
速度にブーストをかけ、ギリギリかわす。
‥‥‥ッぶね。
「(呪炎・矢射)、(呪風・纏嵐)十連」
今度は十本の矢か!
恐らくさっきの槍よりかは威力は低い。だが‥‥‥数が厄介だ。
なら‥‥‥。
「喰らい尽くせ━━━レーヴァテイン!」
レーヴァテインの焔で魔法を消す。
瞬間━━━視界が塞がれた俺の目の前に彼女が現れた。
デュランダルはまだ使うことは出来ない。なら━━━間に合わせろ。
血晶魔剣を瞬時に左手で取り出し、肌を軽く傷付ける。
「七剣魔法━━━起動。第伍刃、(クラウ・ソラス)!」
「展開せよ、クラウ・ソラス」
クラウ・ソラスは分裂する剣。十二の姿を持ち、その一つ一つを操れる。
「(呪炎・槍撃)、(呪風・纏嵐)十連」
今度は槍かよ!?
てっきり矢だけかと思ってたんだが‥‥‥。
「クラウ・ソラス、連続射撃!」
俺はクラウ・ソラスを射出し、相殺させる。
黒と煙によって視界が塞がれる。
‥‥‥チャンスだ。
「‥‥‥《模倣》━━━【ヤマトイチイバル】、クラウ・ソラス。変形せよ」
クラウ・ソラスを矢とし、ヤマトイチイバルにつがえる。
俺に必要なのは集中ただ一つ。狙い、放つだけ。
会を保ち━━━《真理の魔眼・千里眼》を起動。
正確な位置を把握し━━━放つ!
風切り音を微かに響かせ、黒煙を切り裂いた。
それを見届け、弓を捨ててデュランダルを握り直し、駆け出す。
「いくぞ━━━デュランダル」
黒煙の中から僅かに見える姿を追い、接近。
━━━見えた!
これが恐らくラストチャンス。これを逃したら俺は倒す以外の選択肢が無くなるだろう。
故に━━━俺は最速の一撃を以て斬る。
「(雷切・風絶)ッ!斬れ、デュランダルッ!」
暴風と魔力が吹き荒れるなか、俺は抜刀する。
目では捉えきれない速度によって放たれた一閃は、俺に確かな手応えと感触を残して彼女に付与された全ての魔法を切り裂いた。
━━━デュランダル。それは本来は不壊の名剣とされている。まあ、それが事実かは不明だが。
しかし、これを魔法にするに至って、俺はインパクトのなさに気づいた。これは当然だろう。ただ壊れないだけの剣なんていくらでもある。だから、俺は不壊という概念を逆手にとった改造をした。
━━━デュランダルに与えられた効果は、絶対切断。絶対に壊れないなら、絶対に斬ることが可能であるという暴論から生まれた魔法だ。
そして、デュランダルは当初の目的通りの役目を果たしてくれた。これで第一の賭けを突破。それに―――予想よりも魔力にあまりが生まれた。これなら―――足りる。予定変更、使わない予定だったが―――使うか。
「なっ‥‥‥なんでワタシは‥‥‥」
「ずいぶんと驚いているな。まあ、無理もないか」
俺は苦笑し、言葉を返す。
「‥‥‥貴方、一体何が目的なんですか?」
「さあ?俺の目的なんて敵に教えるわけないだろう?」
「‥‥‥それもそうですね」
「で、だ。そうだな‥‥‥なあ、俺とゲームをしないか?」
‥‥‥これに乗るかどうか。俺のやりたいことを達成するための、二つ目の賭けだ。
「ゲーム‥‥‥ですか?」
「そう、ゲーム。俺とお前で一つの勝負をするんだ。内容は‥‥‥一対一の決闘。どうだ?単純だろ?」
「ええ。ですが‥‥‥さっきまでも戦っていましたよね?それなのに何故‥‥‥」
「理由は仕切り直しが目的。更に言えばこのまま戦ってればどっちかが死ぬまで終わんないだろうからな‥‥‥それは俺としては避けたい訳だ」
「なるほど‥‥‥とは言えませんね。アナタの目的が更に不明瞭になりました」
「それは仕方ないさ。それじゃ、この決闘の勝利条件を説明しよう」
「勝利条件はただ一つ。各々持ってる武器で相手を詰ませたら勝ち。ようするに首とか心臓に武器を突き付けりゃ勝ちだ」
「分かりました‥‥‥ですが、これは勝ったらなにがあるのですか?」
「ああ、それを忘れてた。勝者には絶対の命令権を与える。これだけだ」
「了解です。それでは始めましょうか」
「おう。合図は‥‥‥この石が落ちたタイミングで‥‥‥投げるぞ」
石を投げ、距離をとる。
‥‥‥覚悟を決めろ。魔力も余ってる。血晶魔剣もある。なら、やってやろうじゃないか!
両手に長剣を一本ずつ構える。
‥‥‥石の落ちる速度がスローに見える。
3‥‥‥2‥‥‥1‥‥‥。
カツン━━━
音がなった瞬間、バフをかけ直す。
そして、全力で駆け出し━━━詠唱を開始した。
「零から零へ━━━果てに至る」
ヤマトイチイバル:北欧神話のオーディンが使ったとされる弓‥‥‥がイチイバル。(間違っているかも)
それを和弓としたのがヤマトイチイバルである。(和弓と洋弓は色々違うため)
弓なので《剣製》では創れない。
主人公の詠唱が変わっている訳:この作品の魔法は主人公曰くイメージによって成立しているとありましたが、これはほぼ間違ってません。
イメージが魔法に直結するから詠唱がある(イメージが掴めやすい)訳です。
大体こんな理由で、自分がやりやすい詠唱の仕方に変えたりなどをしています。そのため、一度詠唱が出た魔法も思いっきり詠唱を変えたりします。
ついでに言えば、スキル系統も同じで、イメージがある程度関係しています。
ここまで見てくださり、ありがとうございました。
次の更新は4月25日になるよう、最善を尽くします。




