第三話【どちらにせよおかしいぜ】
やっぱり、外部生は固まってた。
俺はそっちへ向かったのだけれど、なんだか空気が澱んでいる。
なんかいやだなぁ、と思いつつも足は勝手に向かっていく。
いやぁ、なんか辛気臭い面だなぁと他人事に思う。俺が暢気なだけか? もしかしたら俺も同じ顔をしているかもしれない。自分の顔はわからないけどな。
「あの」
後ろから声を掛けられた。
俺は戸惑っている、多分。これは振り返るべきなのか? でもこれで別人への呼び掛け立った場合俺のぼっち確定。俺の虚しさも倍増。
それだけは嫌だ。
でも、俺だった場合は……。ひどいやつ確定だよな。
どうするべきなんだろうか。
「あの!」
また声を掛けられた。
これは絶対俺だ。そうに違いない。
そう思うことにして、意を決し振り返った。
そこには男がいた。
俺と目線が同じの、ちょっと冴えない男。まぁ俺も人のことは言えないけど。
「何か?」
「いや、あのぅ。宗良、いや宗良要ってやつ見てないか?」
宗良要? さっき聞いたような気がする。
あっ!!!!
あのサングラス美少女のことじゃね? たしか駿河がそんなことを言っていた気がする。
「たしか……あっちのほうに行ったぜ」
俺は彼女のいった方向を示しながら言う。あんなに目立つやつ他にいないと思うんだけどな。
「あっ、あれだ。あのサングラス頭にのっかってるやつ」
男はそこまで確認したのち「ありがとな」と言って消えてしまった。名前くらい聞いときゃ良かったなぁ。
さぁて。俺は友達候補を探さないと。ぼっちは死んでも嫌だぜ。
できれば落ち着いたやつがいいな、がり勉は拒否るぜ。そこそこ落ち着いてて、ノリよくて話してて楽しいやつ。いないかなぁ。
おっ。俺は見つけてしまったぜ。盛り上がってる談話グループのほうへ足を進めた。
「やっぱりあれだよな、美少女だよな!」
「キサマの美少女の定義とは何だね?」
「もちろんあれだろ脚のラインだろjk」
「いやツインテこそ正義だべ!」
……。
俺は無言でその場を立ち退いた。住む世界が違ったようだ。
もっと普通っぽいやついねーのか? このままじゃこの俺ですら一般人にランクイン、むしろ影薄い系男子になってしまうぞ!
俺の『方向性を間違えた神童』時代は終わりを迎えてしまったのか……。
で、俺はどうすりゃいいんだ? このままじゃぼっちだぞ。
とりあえず普通に話してそうなやつのところへ。変なプライドはこの際いらない。どっか行け。
「ねーねー君。ここ初めてかい?」
隣にいた女の子に声を掛けられた。いや女子と一対一で話すのとかチキンレースよりつらいだろ。
できるだけ平静を装え。
「そうだが……。何かあるのか?」
「いやぁ、特に何もないよ? ただこんな挙動不審で面白い人いないなって思っただけ」
初対面の女の子にdisられる俺ってなんなんだろう。悲しくなってきた。
「俺そんなに挙動不審なのか」
「うーん、もっと頭おかしい子ならたくさんいるみたいだけどね。君みたいなのはほとんどいないよ」
目の前の女子は目を細めて笑う。猫っぽい。その後ろで無造作にくくったひとつ結びも猫のしっぽみたいだ。
「あんまり嬉しくねぇなそれ」
「まぁ、人の勝手だしね。知らないよ」
それからまた二言三言ほど会話して女の子とは別れた。
名前を聞くのを忘れた。俺は馬鹿なのか。
せっかく可愛い女の子とお近づきになれたのになぁ。
残念だ。誠に残念だ。至極残念極まりない。
そんな風に後悔しつつ下を向いて歩いていたら誰かとぶつかった。
女子だったらラブコメいただきだぜ! と思っていたがその幻想は虚しくもぶち壊される。
目の前にいたのは先ほどの冴えない男だった。
「あ、お前は……」
「さっきはマジでありがとな! 俺は相模瑛太。お前は?」
「俺は遠江龍兵だ。ってなぜいきなり?」
「細かいことはどうでもいいんだよ。俺とお前、いや遠江はこれで晴れて友達だ。よろしくな!」
勝手に話を進めるな。
「いや待てよくわかんねぇよ。何で俺となんだよ他にもいるだろ生徒なんかは」
「だって俺、外部生だし友達いないし」
相模は悪びれもせずに言う。何なんだよお前は。
「俺じゃなくてもよくね」
「お前もぼっちっぽいなと思ったし、ちゃんと宗良のこと教えてくれたからでいいか? 理由とかいらねーよ」
そう言って相模は笑った。これは紛うことなきイケメンスマイルではないか!
「なんかもうどうでもいいや。相模の言う通りでいいよ」
これにて俺はやっと普通っぽい友達ができたんじゃないかと思う。一応駿河がいるんだけどな。
なんかトンデモねぇわ。この土地。




