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第四話【食堂のコロッケパン】

 それから相模と色々話してたら理事長のお話が始まって、後ろから駿河に首根っこ掴まれて引きずられるはめに。

 まぁ俺のためってわかってるから何にも言えないんだけどな。

 それから色々授業を選んだ。駿河のオススメやらなんとなく面白そうな授業やらテキトーに選んだら意外と早く終わったぜ。どうだこの優越感。

 それで入学式は終わりらしく解散ということになった。まだ騒いでいるやつもいて、そいつらと話してはいたんだが、宴もたけなわと言ったところで俺と駿河は寮に帰ることにした。

 とりあえず明日からすぐに授業が始まるらしいのである程度支度をしなくちゃな。

「明日から授業だけどよ、迷うなよ?」

 迷う? 何をだ?

「いや、ガッコの敷地広いし校舎たくさんあるから一応な」

「それは多分大丈夫なはずだ。俺、方向感覚だけは自信あるから!」

「明日が楽しみだ。せいぜい、今日のうちにガッコの地図確認しておくことだな」

 わざわざいらない忠告をどうもありがとうございます、と俺は皮肉混じりに返す。

 二日ほど話してわかったことは、駿河というやつは人をからかうのが好きなようだ。すこしはからかわれる身にもなってみろ。

「じゃあ俺はもう寝るわ。おやすみ」

 言いたいだけ言って寝るのかよ。勝手な奴だ。

 俺はとりあえず明日の準備してから寝るつもりだ。何せ明日は初めての授業だからな。浮かれていてはいけない。気持ちを引き締めないと。

 でも何持ってけば良いんだ? 教科書とかはもらってねぇし。一応、ノートとルーズリーフと筆記用具だけ入れておくか。

 ふぅ。一段落ついたし、寝るか。初っぱなから寝坊とかマジありえねぇしな。

 俺は電気を消してベッドに潜り込んだ。



 朝。六時半ごろに目が覚めた。二段ベッドの下からはまだ寝息が聞こえる。

 ついに今日から授業なんだな。緊張というまでもないが、ドキドキするぜ。

 俺は駿河を起こさないよう静かに着替えを済ませる。制服のポケットに配られた生徒手帳と携帯端末を入れる。

 あとは昨日準備したから問題ないはずだ。とりあえず、もう一度学校内の地図を見ておくか。昨日見ておいたから一応は頭に入っているが、念のため。

 何があるかわからないのが人生というものだ。

 地図を矯めつ眇めつ眺めているとガサゴソと気配がした。

「おぅ、駿河。起こしちまったか?」

 駿河は目を擦りながら俺のほうを見た。

「おはよ。気持ち的にはもっと寝てたかったけど初日からドタバタするのもアレだろ。というわけで起きます!」

 高らかに宣言した駿河はかかっていた布団をばっと剥いでベッドから這い出る。それから目にも止まらぬ速さで洗面所へ向かい顔に水を掛け(顔を洗っていたようだが水を掛けていたようにしか見えなかった)、一気に着替えた。

 速すぎるだろ。その素晴らしき運動能力とか切り換えの速さとか集中力とかくれ。ギブミー。

「さ、準備完了っと。ん? どうしたの固まっちゃって」

 いや初めてこんなの見せられたら固まらずにはいられないわ。

「ほら、はよ食堂行こうぜ。混みだしたらC棟まで走らなきゃいけなくなるし」

 そうだった。今は朝。どれだけ駿河が人間離れした行動をしても、そんなことはぶっちゃけ二の次だ。朝飯食わないとな。

「あぁスマン。行くか」

 そして俺らは部屋を出る。それから階段で食堂へと向かった。俺の部屋は四階で食堂は一階。階段を使ってもたいして苦ではない。

「なあ遠江」

「なんだ?」

「いや、うん。やっぱいいや」

 なんなんだよ気になるじゃねぇか。

 食堂に着く。そこそこ人が多かった。俺と遠江はお盆を取って列に並ぶ。

「俺はおにぎりにしようと思ってるけど、お前はどうする?」

 突然聞かれてうろたえざるをえない。俺はパンがいいな。朝食はパン派なんだ。

「菓子パンならすぐに手に入るが、やっぱコロッケパンはうまいぞ」

「さんきゅ」

 駿河のありがたい忠告を受け流しながらもコロッケパンをおばちゃんに頼む。ちょっと怪訝な顔をされた気がするが誤差の範囲内。俺に間違いはないはずだ。

「はい、コロッケパン」

 手渡されたコロッケパンと、牛乳。朝食はこれじゃなくちゃ。

 駿河と並んで空いている席に座る。駿河はおにぎり三つに煎茶と、超絶日本人な朝食だ。

 バランス悪いな。

 とりあえず「いただきます」と言いコロッケパンにかぶりついた。


 !?


 なんだこれは。

 周りの人がジト目で俺を見ている。やめろ。そんな悪いことしてねぇよ俺。

 てか嘘ついたなてめぇ。

 怒りに震えつつ駿河を睨む。

「およ? 遠江どしたん?」

 白々しいわボケェ。

「コロッケパン、めちゃくちゃマズイじゃねーかよ!!」

「あ、ばれちゃった」

 男のテヘペロなんざ可愛くねーよ。むしろ視界から消えてくれ。

「さすがに遠江も味覚は普通だったかー。ざんねん」

「俺は駿河の玩具じゃねーかんな」

「わかってるって。ささ、早く食べちゃわないと遅れるよ?」

 この後に及んでこれを食えと。それは俺に対する拷問なのか? なぁ、答えてくれよ。

「あぁ~。お茶が美味しいねぇ」

 スルーかよ。しかも老人かよ。

 とりあえず俺は目の前のコロッケパン(モンスター)を睨みつける。

 どうする、俺。

「ほら、早く食べないと♪」

 何で駿河はそんなに楽しそうなんだよ!

 おそるおそる俺はソレを手に取り、目をつぶって一気にかぶりつき飲み込んだ。

 それから牛乳で流し込む。

 ……死ぬかと思った。

 実際死んだかもしれない。

「ごちそうさま」

「わーすごーい、パチパチパチ」

 バカにしてんのか。俺の現状涙目なのに。

「んじゃ、行こうぜ」

「誰のせいで俺がこんな目に遭ってんだと思ってるんだ」

「それは駿河慧斗くんでーす」

 名前呼びとかキモいぞ。吐くわ。

 とりあえず死んでこい。

「自分でわかってんならよろしい」

「うわー、遠江に上からなんか言われるのとかなんかムカつくわー」

「自業自得だろうが」

 まったく、この駿河ってやつの扱いにくさは半端ないな。

 時計を見ると七時五十分。急がねぇと。

「A棟二階の教室で合ってるんだよな?」

「んー? グッジョブだよ遠江くん」

「そうか」

 そんなら急がないとな、早めに行っておいて損はないだろう。

 俺は駿河のことを気にせず歩いていく。

「おいおい遠江! いきなりそんなに急ぐなって! 俺を置いてくつもりか?」

「まぁそんなところ」

「ひどくね? 俺の扱いひどくね?」

「駿河の俺に対する扱いよりはマシだと思うぞ」

「ひでー。お前ってひでーな」

 そんな軽口を叩いていたら教室についた。


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