後宮での生活29
久方ぶりの更新で少し短めですが、読んでいただけたら嬉しいです。
「お、お、お待ちください、リーリオ様」
転がりそうな勢いで飛び出して来たフロルの姿に、誰もが驚きそして納得した。
あの子ならやるだろうと……
そんな事を思われてるとは全く思ってもいないフロルは、頬を染めながらリーリオを見つめいていた。
「あの、その……お会いできて光栄ですわ、リーリオ様」
嬉しそうな表情で話すフロルの視線には蛍は全く入っていない、完全に二人の世界(フロルの脳内では)だった。
「あ、あの、私が摘んだお花を殿下にプレゼントしたくて、その、あの、貰っていただけないでしょうか?」
もっていた|≪握りしめていた≫花束をリーリオに差し出した。
この間、リーリオは何も言わず、ただ静がに笑みを浮かべていた。
他の令嬢達が面白くないと内心思いながらも、場の空気を読まないフロルにある意味、最強なのではと思っていた。
(あれ、もしかして固まってる? ちょっと、早く受け取らないと可哀そうだって)
リアクションを起こさないリーリオに蛍は見えないように肘鉄を食らわせ、リーリオは肘鉄の痛みに涙目になりそうになりながら、フロルから花束を受け取った。
「ありがとう、レディーフロル、わざわざ済まないな……本当はゆっくり話でもしたいが、母上に呼ばれて居てな」
「いいえ、お気になさらないでください。こうして花束を貰って頂けただけで、フロルは、フロルは幸せでございます」
|空気≪蛍≫な状態の蛍にフロルのメイドが歩みよってきた。
「どうかしたのかしら?」
「……いきなり申し訳ありません、お嬢様から次期正妃様にも花束をと……」
リーリオの花とは少し違う種類の花束がメイドから差し出された。
「まあ、私も? 嬉しいわ、ありがとう、レディーフロル」
嬉しそうな表情を浮かべながら、花束を受け取り、未だリーリオ以外に眼中にないフロルに声をかけた。
話しかけられた、フロルは驚いた表情を浮かべながら、花束を持っていたメイドに視線を向けたが
メイドはただ笑みを浮かべるだけだった。
「リーリオ様、私も頂きましたの」
蛍の言葉に、リーリオは笑みを深めながら頷いた。
「それは良かったな、ありがとう、レディーフロル」
「い、いえ、そんな」
リーリオの言葉に頬を染めるフロルの様子に、周りの令嬢達の表情はどんどん険しくなっていった。
リーリオには見えないようにしては居るが、正直怖い。
(これ以上いたらまずいかな、他の令嬢達の顔も怖いし)
「リーリオ様、もう戻りませんと、王妃様がお待ちになっています」
「そうだな、申し訳ないが失礼するよ」
リーリオの言葉にまた何か声をかけようとするフロルを制するように、慌てた様子でその場を後にした。
その場に残ったフロルは幸せな表情を浮かべ、そんなフロルとは反対に話しかけるチャンスを得られなかった
令嬢達は憎らしい視線を向けていた。
フロルはそんな視線に気づくこともなく、その場を後にした。
一方、リーリオ達は王妃様を待たせては不味いと小走りで廊下を進んでいた。
「……ふう……急がないと、王妃様が待ってるわ」
「そうだな、さすがにレディーフロルに声をかけられた時は焦ったが、何とか切り抜けられたな、大丈夫か?」
「…大丈夫、疲れただけだよ、それにしても、私まで花束を貰えるとは思わなかったわ」
そんな事を話しながら、部屋に戻ると王妃様が楽しげな表情を浮かべながら、お茶を楽しんでいた。
「「遅くなって申し訳ありません」」
「良いのよ。リーリオの事だから、令嬢達に囲まれていたのでしょう? あら、その花束は? 」
「……はい、レディーフロルから……私とリーリオ……にって」
「大丈夫?顔色が悪いわ」
「い、いえ……大丈……夫……ッ!! ドサッ 「蛍!! 」
いきなり倒れ込んだ蛍を、リーリオが間一髪の事頃で受け止めたが、呼びかけに答える様子もなく
すぐさま、自室のベットに運ばれた。
王妃は蛍が持っていた、花束を見た瞬間、勢いよく花束を外に投げ飛ばした。
「女官長、すぐに宰相と魔術師サフィロを呼び出しなさい」
緊迫した面持ちの王妃に女官長は慌ててその場を後にした。