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心の氷が溶けるまで  作者: 海月まったり


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第三章 鑑定の国王イコワ・ホムン

挿絵(By みてみん)

 私は、この国の王だ。


 この国に生きる者の命を預かり、国を守ることが私の役目。


 だからこそ――


「……あの娘だけは、危険だ」


 王座に座りながら、私は一枚の書類を見つめていた。


 そこに記されているのは、一人の少女の名前。


 ファジー・オード。


 十七歳。


 オード家の令嬢。


 そして――この国の常識を覆しかねない力を持つ者。


「陛下。やはり……」


「ああ」


 目の前に立つ臣下へ、私は短く答える。


 国王、イコワ・ホムン。


 私の固有魔力は――鑑定。


 対象を見れば、その者が持つ力を知ることができる。


 幼き頃から、この力によって多くの人間を見てきた。


 騎士。


 魔法使い。


 貴族。


 商人。


 平民。


 それぞれが持つ固有魔力を知ることができる。


 そして――ファジー・オードの力も。


「……想像」


 その言葉を口にした瞬間、部屋の空気が重くなる。


「はい」


 臣下も表情を曇らせる。


 想像したことを、現実に変える力。


 ただの空想とは違う。


 彼女の想像は、現実そのものを変えかねない。


 常識も。


 理も。


 この世界の法則さえも。


 彼女の想像によって覆される可能性がある。


「そんな力を持つ者が、自由に成長すれば……」


「この国そのものが、どうなるか分かりません」


「ああ」


 私は窓の外を見る。


 王都の街並み。


 多くの人々が暮らしている。


 商人が店を開き、子供たちが走り回り、騎士たちが街を守る。


 私は、この国を守らなければならない。


 王として。


 たとえ――誰か一人を犠牲にしてでも。


「……ファジー・オードを、暗殺する」


 その言葉に、臣下が息を呑む。


「本当に……よろしいのですか?」


「良くはない」


 私は即答した。


「だが、必要だ」


 それが正しいとは思っていない。


 ただ、王として選ばなければならない。


 未来に起こるかもしれない災厄を防ぐために。


 今ここで、一つの命を消す。


 それが国王としての責任だと――私は、自分に言い聞かせていた。


 数日後。


 王都では祭りの準備が進んでいた。


 街は活気に満ちている。


 人々は祭りを楽しみにしている。


 誰も知らない。


 この街のどこかで、一人の少女の命が狙われていることを。


 そして――


 その少女を殺すため、一人の暗殺者が動き始めていることを。


「……これでいいんだ」


 私は一人、王座に座っていた。


 誰もいない広間。


 静まり返った空間。


 私は決断を変えない。


 王として、この国を守るために。


「……ファジー」


 少女の名を呟く。


 彼女はまだ、本当の自分の力の意味を知らない。


 自分がどれほど危険な存在なのかも。


 そして――


 自分が、これからどんな運命に巻き込まれるのかも。


 だが、私は知らなかった。


 彼女を殺すために送り出した男が――


 この国の未来そのものを、大きく変えることになるとは。

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