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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第七十七話

 小型帆船は海流に邪魔されないルートを維持しながら順調に北上していてた。


 リーグとリーナは相変わらずのピッチングに苦心していた。追波に抜かれる度に船尾が持ち上がり船体中央を抜け船首を持ち上げていく。


 周期が短いと身体がフワッと浮きお尻にダメージを与えていく。これが繰り返される事で乗り心地は最悪と言って良いほどな状況が続いていた。


 さらに船尾に当たった追波は船尾を持ち上げるついでに海水を船内に投げ込んでいた。コクピットに海水が流れ込み居住性もかなり悪化していた。


 定期的にリーグが海水を操作して船外に出してはいるが切りがなかった。


「水壁を手すりより少し上まで展開してみたら?」


 リーナが案を出した。追波だけでなく海上の風も一緒に受ける事で少しはピッチングが弱くならないか聞いてきた。海水の流入も減らせる案だった。


 リーグは考えたが首を振った。


「動きが想像できない。試してみるから揺れに注意して」


 リーグは結論が出なかったので試すことにして大きめの水壁を展開した。


 小型帆船は風に押されギシギシと軋みをあげながらもグイッと増速した。それほど大きな水壁でないが船体にはそれなりに負荷が掛かったようだった。


 ただ追波に押されるよりは安定した増速となり加速が終わると船体の軋みも減った。ピッチングの周期が間延びした感じとなり不快感は減った。


「追波の速度に近くなったから揺れの間隔が長くなったね。これって結局は今の帆だと追風で十分に速度が得られていないのが原因って事だよね……」


 リーグは結局のところ帆の大きさが十分でないため速度が出てない点に集約すると判断した。速度が上がり追波に乗る時間が増えれば不快感も減ると考えた。


「その水壁は大きくできないの?」


「大きくはできるんだけど……抜けた風の乱流が酷いよ? 船尾付近はかなりの乱流で違う意味で快適性がない状況だから大きくすると影響が広がる」


 純粋に大きくすると受ける風が増え追い抜くため水壁の端に流れる。端まで来ると空気の渦が生まれ船尾付近は空気の渦が暴れていた。


「これ……抵抗を強くしただけでかなり船尾は酷くなりそう」


 リーグは酷くなると言葉にしながらも少しずつ抵抗を増していった。水壁にぶつかった風が横に抜け難くなり剥離抵抗が増し船尾の乱流は酷くなった。


「うわー、船尾にぶつかってる風たちがプンプンしてるよ。めっちゃ乱流になってるから戻した方が良いよ? かなり息苦しくない?」


 リーナは船尾の状況がかなり悪化した事を感知した。あまりの乱流に息をするのも難しい状況だと悟った。


「難しいねぇ。方向性としては間違ってないというか追風をもっと掴まないとダメなのは確実だね。船尾側で何とかするのはたぶん……間違ってるかな」


 リーグは抵抗を戻した。リーグとしては帆で何とかすべきと考えたが今直ぐに何とかなる物ではないので保留とした。


「進路を東寄りにできる? 西側にあの南下する分流が近寄ってきてる。前より東に張り出してるから蛇行してるのかもしれない」


 前に冒険者ギルド管轄の大型外洋船が流された分流が思ったよりも東側に寄ってきていた。ほぼ真北に進んでいるのに接近した事で蛇行を疑われた。


「もう少し我慢すれば北北東に向けられるよ。今だと揺れた時に引っ掛けられる可能性が残っちゃう。あと鐘半分より少し短いぐらい我慢して」


 しばらくはリーナの風上の揺れに対する指示を受けながらリーグは操船した。分流は蛇行のピークを越えたのか少しずつ離れていった。


 リーナの許可が出たので進路を北北東にした。ガフセイルはジャイブしたく嫌がったがロープで固定されているため左舷側に出したままとした。


 ジブセイルは角度がついたことで受ける風が増え頑張り始めた。それでも滑走に比べればかなりゆっくりと北上していた。


「南下する分流から北東に分流してるところが確認できた。分流が蛇行した影響で北東に流れ出てる量が増えてる。これ……北東に行ってるやつも監視いるね」


 北に上がって来たことでリフールに入る場所まで水中探査の精度が上がった。


 リーグは頭が痛くなってきた。東方航路は二つの海流で航行がかなり難しくなっていた。この後にも暴風が控えているだけにお手上げ感が漂った。


「もう少しだけ北上したら進路を西南西にして滑走に入ろう。この状況だと通常の航行は無理だから次の暴風が抜けるまで全面閉鎖しか選択肢がない」


 リーグはリフール周辺の確認は完了したと判断した。後はリフールにいる海巫女のゼリナと情報を共有し暴風通過後に監視船を出すしかなかった。


 リーグたちは北に上がり西南西に進路を変え滑走状態でリフールを目指した。


 滑走状態に入れば海流はほぼ無視できる。海流が乱れていても小型帆船が突き抜けられる理由である。しかし問題がないわけではなかった。


「波が高いよ? 滑走で飛ぶ未来しか見えないし飛べばお尻も痛いよ?」


 リーグが懸念していたように波が立っている状況の滑走は飛ぶ頻度が上がり着水時にお尻が痛い。リーグのレジンシートはリーナに没収された。


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