第七話
リーグが丁寧にエビの殻を外し二匹だけ冷却保管箱に戻し残りの四匹を乾燥魔道具に乗せて乾燥させた。この乾燥魔道具も船乗りから貰った物だった。
リーグは五歳の頃から造船工房でリーナと遊んでいた。海で遊ぶか工房で遊ぶかのほぼ二択だった。海で遊んだ時はエビやタコをお土産に工房に顔を出した。
自然とリーグは使われなくなった小船を貰って見様見真似で修理し始めた。そういった子どもが造船工房には沢山いた。リーグもその一人になった。
リーナは造船技師より訪れる船乗りたちと仲良しだった。天気の話や風の話を船乗りや船主とよく話していた。天気をよく当てるという評判もあった
拙い出来のリーグが補修した小船は解体され木材に戻った。それを見たリーグは小船の解体も始めた。木材に緩みを作りコンコンと叩いて外せるようにした。
二人が八歳になる頃にはリーグが作った小船で釣りや漁を遊びで行うようになっていた。小さな薄い帆布で帆のような物も付けて海上を移動していた。
「ただいまー」
夕暮れが迫る前にリーナが帰ってきた。台所のテーブルに荷物を置いていく。野菜や肉に交じってあって当然とした顔の袋が置かれた。
「おかえりー、またリサおばちゃんのところに寄ったの?」
テーブルを見たリーグは苦笑いを浮かべた。
「入荷したら毎日行かないとダメなんだよ? 寄ってから神殿に行くから実は減っちゃうけど子どもたち喜ぶから女神様もニコニコだよ!」
リーナは返事をしながら肉を冷却保管箱に仕舞い野菜は使う分を残して木箱に仕舞っていった。爽快の実は木皿に積み上げた。
リーナとリーグの食材費は神殿が出している。本当は『風巫女』のリーナだけだが周囲は二人をほとんど夫婦と見なしているため区別はしていなかった。
成人を迎えていない二人が一緒に一軒家に住んでいるのも黙認されていた。なぜか港町リフール
の住人たちの二人に対する認識はそうなっていた。
「そういえばドルナンさんは粉末ミルクを神殿に全量卸したみたい。女神様へ『フレッシュチーズ』まで差し入れしてたの! 凄くない?」
リーナは鍋に下拵えした野菜を投入し煮込み始めた。ここで使っている加熱魔道具も船乗りに貰った物だった。
リーグは作った小型帆船の試験などでよく一人でも海に出ていた。一人の時は潮目がおかしい場所や難所と言われる場所を意図的に回っている。
リーグは『良い試験場』と呑気に船を入れているが難所なのは事実だった。よく王国に戻る帆船が風に押し出され難所に入り込んでいるのを救助していた。
リーグはとにかく潮の流れを熟知していた。難所で身動き取れない帆船を見つけると外に出れる潮に誘導していた。
そして別れ際に帆船からお礼にと魔道具を貰うことが多かった。大全シリーズもかなり貰っていて自分たちの分以外は神殿に奉納していた。
「フレッシュチーズってバフロミルクから作るやつだよね? 粉末ミルクでなくミルクで持ってるとか凄いね。それはかなり女神様の嬉しいポイントを突いてる」
リーグは神殿でのドルナンの行動はかなりの正解だと思った。
「あと教えた硝子工房と製布工房は回ってるみたいだよ。あの交易品だとリフールだけで船倉は空になるよね。まぁ……初交易だし成功かな」
リーナは持ち込む交易品の選択が間違っていないので旅は終わりと締めた。空のまま諸島に入っても意味がないだけに正論だった。
「デルアさんの工房も紹介してたよね? 織物はあそこがリフールで一番だよね。量は難しいけど奥まった場所に構えてる工房を教えたのは勘?」
リーグはリーナがお気に入りのデルア製布工房を教えたのが少し意外だった。リーナの服は小さい頃から全てデルアさんが作っていた。
リーグの問いかけにリーナは小さく微笑んで頷いた。
デルア製布工房は製布といいながら内部に製糸工房もありレジン糸を内製していた。そして服を仕立てる服飾工房も兼ねていた。
リーナの遊ぶ拠点がリーグが行きだした造船工房になるまではデルア製布工房で遊んでいた。その頃はリーグも帆モドキを作って遊んでいた。
「取り敢えず船底の改修はしたよ。後は撥水シートを積層して乾燥。乾燥してる間で環礁に顔出しで行こうかなって思ったけど良いかな?」
リーグは思い付いた環礁訪問をリーナに提案した。
「そういえば半月ぐらいご無沙汰ですね。みんなは元気にしてるとは思うけど『爽快の実』を届けないとですね。明日中に色々と手配しておくね」
リーナはリーグの提案で忘れてた頼まれ事を思い出した。絶対の約束ではないが果たせそうなら約束を果たそうとリーグに同意を伝えた。




