第五十九話
リリーナ号が北北西に上がっていくと前方にうっすらと島影と言うには薄い違和感が海上に出てきた。北に鐘半分程度の距離で見つからない事が分かった。
「これは……あらかじめ多めに南下して境界からの時間なりで斜めに北上して探す方が良いかもしれん。いくつかの方法を行政機関に提出しときますね」
ドルナンは環礁を見つける方法を確立するための調査方法を伝えるとリーグに話した。方法自体は王国で使われているもので秘密ではなかった。
「調査して航路を設定するかはリフールの行政機関しだいです。このまま環礁の場所が最終的に不明となって問題なければそうなるでしょう」
ドルナンにしてみれば個人の能力で航路は維持できないと知っていた。押し付ける事でもないので情報提供だけに済ませるつもりだった。
「今のところ亀裂の奥に入れる冒険者はいないからなぁ。そういう点では辿り着けなくても問題はない……寂しいとは思うけど致し方ないかな」
リーグとしては賑やかな方が楽しいが状況的には厳しくなっていた。
「もう少し進むと暗礁が多くなり海流が乱れます。俺たちの船を降ろして先導しますね。帆を畳んで一度止めてください」
リーグは気分を入れ替え環礁にリリーナ号を誘導する手順に入る事にした。
リリーナ号は全部の帆を畳み船首を北にして止めた。止まったところでリーグが水壁でリリーナ号を固定した。リーナには拠点のある礁島の確認を頼んだ。
リーグは小型帆船からマストとブームとラダーを運び出した。小型帆船は再びロープで荷役桁で吊るされ海面まで降ろされリーグが水壁で固定した。
リーグは小型帆船にマストを取り付け静索を張り簡易ファーラーを被せた。ハリヤード類を通しブームとガフも元の状態に付け直した。
ジブセイルのラフを簡易ファーラーに付けジブハリヤードで上げきりヘッドとタックのフックを整えていったん全てのジブセイルを巻き取った。
ガフセイルはヘッドをガフに付けフットはブームに仮止めした。スロートハリヤードでガフセイルを上げながらラフとジャックラインを整えていった。
「凄いよー。礁島の木がほとんどなくなってた! 収納空間は無事だったけど地上は何もなかった! あの暴風が直撃したみたい。亀裂に避難してるよね?」
リーナは今回はほとんどの木を持っていかれたと報告した。風に対して強く育っている木が飛ばされるほどの暴風ということになる。
「ベルクさんが厳つい顔で全員を亀裂に押し込んでると思うよ。飛ばされるにしても全滅はないかな。危ないのはネガさんのとこだけだよ」
冒険者たちは亀裂に避難しているはずである。避難していない場合は助からないので諦めるしかなかった。そこは自己責任と割り切るしかない点だった。
「先導するから推進魔道具で付いてきて」
リーグは海中に手を入れて水中探査を展開し暗礁と海流の流れを確認した。リリーナ号の喫水下も確認し通るルートを確定した。
リーグはジブセイルだけ簡易ファーラーから引き出した。
水壁を船首の左舷側に展開し腕力で船首を右方向に押した。北西を向いたところで右舷側のジブシートを引いて左舷前方の風に帆を沿わせる。
船尾に抵抗のない水壁を展開し渦抵抗を外すことで小型帆船はスルスルと進み始めた。リリーナ号の速度がどこまで出るか分からないので距離を少し取った。
リーグは進路を変える位置で上空に水球を作り浮かべた。ティラーを押して取舵を当て進路を北北西に変えて少しずつ礁島の西側水路に近寄っていった。
リリーナ号を西側水路から少し離れた西側に出やすい位置で固定した。船員たちがサップを落とし二枚を繋げて三つの台船を作った。
台船に錨を乗せて投錨位置まで運び落とした。船首は巻上魔道具で引き船尾は釣り用の巻き上げ機でロープを引いて錨を固定した。
「繋げられるサップは初めて見た。たぶん王国の大型外洋船のサップはあの形が主流なのかも。あれなら海上菜園がすぐに作れるよ!」
リーグは投錨を確認していてサップの機能性に驚いた。三本マストの大型外洋船でも三枚を繋げれば錨を運べるだけの浮力が得られていた。
リリーナ号から搭載船も降ろされ櫂を漕いで礁島に船員を送り込んだ。リーグは小型帆船を動かして環礁のラグーン内に入り込んだ。
浮き桟橋は撤去しているので砂浜に乗り上げ波打ち際から引き込んだ。埋め込んで無事だった係留柱にロープを括り小型帆船を固定した。




