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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第四十七話

 リリーナ号はブラナン島の南端を横切り東南東に進路を変えた。リーグがブラナン島の岬とリリーナ号を見比べて進路を調整した。


 船長はリーグの横で位置取りと岬への角度の指針を聞いてメモしていた。岬付近の海流の動きもリーグは船長にしていた。


「孤独岩はかなり背が高いので遠くからでも目視できます。ただ海流が乱れ始めるのもかなり手前からです。海底に大きな山が連なってる感じになってます」


 リーグは手でうねうねした山の形を伝えた。このうねうねが海流の流れを邪魔していると説明した。場所によっては吹き上がる海流もあると船長に話した。


「少し気になる海流があるので確認してみますね」


 リーグは船長に断りリリーナ号の側舷に沿って水壁を展開して海面まで降りた。海水に手を差し入れて水中探査で海流を調べた。


「まだ先だけど南に落ちる海流がある。たぶんこれがあの分流だと思うんだけど……ここまで綺麗に残るものかな。まだ強いから結構押されそうだ」


 リーグはブラナン島北端に流れ込んでいた分流の行き先が気になっていた。想定よりブラナン島の近くで南東の流れが南に線路を変え流れていた。


 リーグは船尾甲板に戻り船長に南下する強い海流の事を話した。潮目が見えた時点で進路を東に向け渡り切るようにお願いした。


「船首が潮目を踏んだところから南に落とそうとしてくるので当て舵を当ててください。あまり戻そうとすると船足を削られるので適度にお願いします」


 リーグの話に船長は頷き船足の計測器を準備させた。初めて見る道具にリーグは興味津々で準備を見ていた、船長が苦笑いで説明してくれた。


 この道具は船の速度を計測する道具という事だった。先端に浮きが付いていて引き摺ると抵抗してその場に留まろうとする構造とリーグに見せた。


 繋がっているロープには何箇所か結び目が作られていた。決まった時間内で何個の結び目が通るかで速度の指標にしていると説明された。


「今回は速度というより流された角度を見るのに使います。何も指標がないよりは正確性が取れると思います。南方諸島では見てませんか?」


 船長の説明に「なるほど」と納得顔のリーグはリフールで見た事ないはないと話した。仕組み自体は簡易なのに使わないのは勿体ないと思った。


「南方諸島の航路はあちこちに海流が流れてます。かなり海流を横切るわけですがこの道具は使い慣れたら航路とのズレを少なくできそうです」


 リーグはニコニコしながら船長にリフールで確認して普及させると話した。前々から輸入している方位磁石と組み合わせれば効果的と考えていた。


「潮目が見えてきましたー」


 船首で監視していた船員が潮目の報告をした。船首は「進路を東に向けろー」と指示を飛ばした。操舵手が面舵を当てて船首を右に振り東に向かわせた。


 ガフセイルがシバリングを始めたのでフォアシートとメインシートを絞った。風に沿わすのではなく風を受け止める形に変更していた。


 リーグが首を傾げて船長を見た。


「ほぼ横風の場合は安全を取ってガフ帆は絞ります。王国の海岸航路だと船長の好みもありますが帆を送り出す方が多いですね。うちは基本的に絞ります」


 船長は苦笑いを浮かべリーグに帆の操作した意図を話した。推進力を取るなら送り出すが風上が船尾側に揺れた瞬間に帆の裏側に回り込まれ推進力を失う。


 あらかじめ帆の裏側を意図的に風上とする事で推進力は落ちるが船足を安定させていた。ピークハリヤードを操作してリーチの張りも減らしていた。


「計測器を入れまーす」


 船尾で計測器を準備していた船員が声を掛け計測器を海に投げ込んだ。計測器はその場に留まりロープがスルスルと送り出された。


 潮目に入り船首側がガクンと揺れた。左に回ろうとする船首に抵抗するような感覚が伝わる。リリーナ号が海流に入ると抵抗は減り少しずつ南に流された。


『船の全長が長いから随分と船首側が押されてたな。リーナなら風上が分かるんだけど……もう直ぐ海流から出るな』


 リーグは船の挙動で何となく船首が南に落ちた状態を把握した。操舵手の手元の方位磁石ではハッキリ分かっていると理解していた。


 潮目を抜けたところで計測器を流していた船員がロープを強く引き始めた。


「角度差は十度以内でーす」


 船員の報告に船長は「東南東に戻せー」と操舵手に指示を出した。進路が東南東に変えられ帆の裏側に回り込んでいた風が表側を沿うように流れ始めた。


「思っていたより強い海流でしたな。あれが最近発生したばかりの海流とは思えません。聞いていなければ何らかの本流だと思いそうです」


 船長がリーグに海流の感想を伝えた。あれだけ強い海流は直ぐにはなくならない。リーグも厄介な海流が生まれたとため息をついた。


 南に船首が落ちた状態で侵入したらあっというまに南西に向かされるぐらいの流れだった。そこで当て舵を一杯に利かせたら船足を失い漂流する流れである。


 リーグは『二日ぐらい流されてみるか』と海流の先を確認に向かう算段を練り始めた。リーナとの相談にもなるが要確認として記憶した。


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