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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第四十六話

 リリーナ号はリフールの出港航路から出て西方航路に入った。西方も航路とするには難所が多く難所を避けるように航路が設定されていた。


「しばらくは南西に向かいます。ブラナン島の南端が見えたところで南東に進路を変えます。近い場所は暗礁が多いので距離は取ってください」


 船尾甲板でリーグが船長に話し掛けていた。南端を抜けたところで少し南に落とす量を減らし東南東に進路を変えて進み孤独岩を目指すと話した。


 リーグは話が終わると船尾甲板から降りて船尾室に入った。船尾室ではドルナンが南方諸島の海図を見ていた。リーナは編み物をして時間を潰していた。


「孤独岩は南方諸島でも有名な難所と聞いてるんだが近付いて大丈夫なのかい?」


「孤独岩の周辺は海流がかなり乱れてます。船の位置というより正確な方角を失いやすい。近くに航路も設定されていないから通る意味も薄いです」


 リーグは孤独岩が孤独岩である所以をドルナンに話した。孤独岩の周囲には巨大な暗礁などがあり海流を複雑に分流させ合流させていた。


「どれぐらい近寄るんだね?」


「それほど近寄りません。環礁はとにかく高さがないので少し外れると見つけ難くなります。東方航路から南下する時はあまりズレないんですけどね」


 リーグは孤独岩の周囲を少し回り東に進路を変える位置に入ると伝えた。その後にも何箇所かで海流を跨ぐ事でズレが出るのを調整すると話した。


「まぁ……海流が詠める海巫女がいれば行き来しやすいんですけど」


 あちこちにある島や暗礁が海流を複雑化していた。島や岩礁や安定した海流が海図には記されていた。リーグはドルナンの海図を見ながら解説した。


「リーグくんは海流を良く知ってるね。西方航路や東方航路の先に行ったことがあるのかい? 海図に描かれていない海流も知ってるよね?」


「西方航路は端まで行きましたよ。あの時は……一月ぐらいだったよね?」


 ドルナンの質問にリーグは答えリーナに掛かった期間を確認した。


「それぐらいかな。まさにお魚天国だったよね。島を見つける度に野菜を求めて上陸したよね。あの時に食べた小ボアは美味しかったわー」


 リーナは西方航路を旅した時のことを思い出した。とにかく主食は魚で野菜が欠乏していた記憶が大半を占めていた。


「えぇー小ボアがいたの?」


「ドルナンさんの考えてる小ボアと同じかは分かりませんよ? 俺たちも王国で有名な小ボアは聞いてますが姿は小さなボアとしか知りませんので」


 リーグは苦笑しながらドルナンに答えた。


 フェルノート王国で小ボアといえば知らない船乗りはいなかった。セトリアナ大河という大河の船溜まり町にある亀裂でのみ見つかっている魔物だった。


 リーグとリーナは小さい頃から船乗りたちと交流していた。そして食の話題に食い付くのがリーナだった。リーナの夢は王国で実食する事だった。


「その話は興味深いね。今では小ボアたちは普通に動物として生息域を広げている。大人しいし食害も少ないから人気もずっと続いてる」


 ドルナンは王国に小ボアが初めて紹介されたのが『小ボア物語』という飼育日記だったと教えてくれた。船乗りたちの話にはなかった情報だった。


 東方航路は南方諸島で最大の島であるグラリム島まで航海したとリーグは話した。この島は大きく一回りするのに一月掛かり三月ほど出掛けていたと話した。


「あちこちで錨を落として遊んでたから時間は多めだよ。海流に乗ったりして航路からも外れたりしたからね。誰も住んでない小島とか面白かったよ」


 ドルナンは色々と呆れた。行き先の分からない海流に乗るという選択肢はドルナンになかった。どう考えても海洋探索者のそれだった。


「このリリーナ号だとリフールで積荷は売れちゃいますね。噂の小ボア解体肉とかも売れますよ? 小ホルンの解体肉もガンガン売れます。期待してますよ!」


 リーナが肉推しになった。南方諸島はやはり肉類はどちらかと言えば貴重品である。ただダンジョン産の解体肉は腐らなくとも単価的には微妙だった。


「解体肉は非常食で積んでも交易品にはならないよ。それだったら前に聞いたビワとかプラムが良くない? あれはリーナもかなり惹かれてたよね?」


 リーナの解体肉推しは理解できたが交易品として旨味が薄いのでリーグは果物に話を逸らした。


「話では収穫量が輸出できるほどではないと言ってましたよ。女神様の果樹園とも言ってましたから無理はできないでしょう。そこは保留です」


 リーグが提示した果物は船乗りから聞いた不思議な果樹園として得た情報だった。数年前の情報だが女神様関連でリーナが食い付いた話だった。


 レストール領出身の船乗りが「毎年お供えしている」と話題になりリーナはお供えが続いている事に満足げだった。もちろん食べたいとは言っていた。


『いつの間にか食べ物の話になってる。この二人は食べ物への拘りが強いなぁ。ビワとかは少ないけど市場に出てるけど……傷みやすいから運べないなぁ』


 ドルナンは二人のために次は解体肉を運んで来ようと思った。実は小ボア解体肉は船内で振る舞い食べ切っていた。残しておけばと少し後悔していた。


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