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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第四十五話

 リリーナ号はリーグの小型帆船を乗せるため船員たちが集まり荷役桁を準備していた。リーグは小型帆船のガフとメインブームを外しリリーナ号に運び入れた。


 フォアステイに付けた簡易ファーラーを逆順で外した。


 マストは先端付近に四枚の水壁を展開し仮固定した。バックステイを二本外しサイドステイを両舷で四本外しフォアステイも外した。


 ステイ用のロープを纏めバウの収納空間に投げ入れた。忘れていたアンカーを先にリリーナ号に置いてマストを抜き取りリリーナ号に持ち込んだ。


「下帆桁からしてかなり重いのにマストまで持ち運べるのかい?」


 ドルナンは水壁で空中を動き回るリーグには慣れてきたがマストまで運ぶ姿に引いていた。短いとはいえ大人でも明らかに一人では厳しい大きさだった。


「俺の手袋は筋力強化みたいなので運べますよ」


 リーグは簡単に種明かしをした。驚いたのはドルナンで付与機能を持つのは小箱から出たもので魔力を流さなければならず難易度は破格に高かった。


『リーグくんもリーナちゃんも驚きしかないんだけど……。リーナちゃんも手袋をしてたから小箱……髪飾りも着けてた……凄すぎて言葉にならないぞ』


 ドルナンはリーナの着けている手袋と髪飾りも小箱だと悟った。この二つは王国で女性に大人気な装備品で小箱屋は常に人集りがあった。


 ドルナンも妻のリリーナに贈りたいが小箱の入手に難航していた。その小箱をリーグたちは三個持ち魔力を流して活性化させている事に驚いていた。


「ドボーン」


 海に落ちる音がして慌ててドルナンが側舷から顔を出した。海面ではリーグがロープを受け取り潜って吊り上げる準備に入っていた。


 吊り上げる準備が整いロープがウィンチで巻き上げられ始めた。少し上げてロープの最終確認を行いガリガリと巻き上げ小型帆船を吊り上げた。


 上がったところで荷役桁を旋回させゆっくりと降ろしていった。サイドキールに木片を差し込み安定させた。転がらないようにロープで固定された。


 マストとメインブームは小型帆船に乗せ固定した。外していたラダーもコクピットに置いた。最後にリーグが水球を展開し小型帆船を丸洗いした。


 これにはドルナンだけでなく船員も目を丸くしてリーグの行動を凝視した。丸洗いしが終わると水球が解けリリーナ号の外に捨てられた。


 船長や操舵手なども集まりリーグの小型帆船を検分し始めた。質問にリーグは軽く答えていたが帰宅すると断ってリリーナ号を降りた。


 リーグは駆け足でリサ青果店に向かいココナツなどリーナの好きな物を買い込んだ。リリーナ号にも積んであるとは思ったが好物の手持ちは必需品だった。


 翌日の早朝にリーグとリーナはリリーナ号の桟橋に現れた。環礁での滞在を切り上げ夜間航行までしたので日数的に余裕はあるが急ぎでもあった。


 二人が乗り込むと待機していた誘導船がリリーナ号を引き始めた。ドルナンは船長と操舵手のやり取りを聞いていた。船舶風壁魔道具は停止したままである。


 船尾から引き抜かれたリリーナ号は誘導船に引かれながら回頭を始めた。南東を向いていた船首が東を回り北東を過ぎて北を向いた。


 船尾からの風に変わったところでメインマストのブームを左舷側に押し出した。出せるところまで出すと追い風を受け帆が風を受け前進する推力を得始めた。


「船尾風壁を抵抗なしで起動します」


 操舵手から船舶風壁魔道具の起動が伝えられた。魔道具を起動すると明らかに加速を始めた。速度が乗り始めたところで面舵を当て西に船首を向けた。


 北西に船首が向くと右舷後方が風上となったのでフォアマストのブームが左舷側に出せるだけ押し出された。ジブセイルも左舷側にクリューを出した。


 帆が出される間も船首は右に回頭し西に向けた。


 リフールを抱える湾の出港航路は西側の水路である。北側の水路は入港航路となっていて厳密に分離してあった。リリーナ号は湾を出るため西進した。


「ブラナン島の西側を南に下るとは聞いたが環礁はそっちにあるのかい?」


 ドルナンは船尾甲板で寛ぐリーグに尋ねた。


「南側なのは確かですが東方航路は閉鎖中なので西回りでブラナン島の南側に出ます。少しだけ西方航路で南西に進んで南東にコースを変えて向かいます」


 リーグはドルナンに答えた。東方航路が閉鎖しているので南に下り孤独岩を目指すことにしていた。孤独岩には寄らないがコース取りに使うことにした。


 慌ただしく出た環礁に戻るための船旅が始まった。


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