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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第四十一話

 祭壇に置いた『爽快の実』がキラキラと煌めいた。ドルナンの傍にいた子どもたちも静かに手を合わせていた。手を合わせようとして「はぁ?」と漏れた。


 キラキラと煌めいた『爽快の実』が消えて小さな小箱が現れていた。手を合わせようとして前を見たドルナンは驚愕の顔になった。周囲もざわついた。


「あれ? 小箱が出たよ? 女神様はダンジョンの落とし物の真似かな?」


 リーナが目を丸くしてリーグの脇を突いた。そして中身を確認しろと目で催促してきた。リーグは『おれ?』と目で反論したが封殺された。


 リーグは諦めて小箱を手に取りパカッと開けた。


「んー? これって王国で流行ってると前に船乗りに見せてもらったイヤーカフ? 二個入ってるけど色違い? 取り敢えず手紙が入ってるよ」


 小箱から手紙を取り出したリーグが黙読した。そしてクスッと笑いリーナに手紙を渡した。手紙を読み始めたリーナを横目にイヤーカフを取り出した。


 イヤーカフは金属で出来ていて細かい文様が描かれていた。そして色の付いた石が埋め込まれていた。その色は『淡い藍色』と『濃い青色』だった。


「やっぱり女神様もリーナには淡い藍色が似合うって思ったのかー。ふふ、女神様と意見が合うのは嬉しいなぁ。やっぱりリーナには淡い藍色だよねー」


 リーグは石の色を見てうんうんと頷いた。


 リーナも手紙をくすくすしながら読み進めた。その表情はとても楽しく幸せそうな表情だった。リーナに視線を向けたリーグは完全に動きが止まった。


「リーグとリーナに届いた手紙は秘密の内容かな? この神殿で祭壇を設置した時以来の二通目の手紙だから読み聞かせてくれると嬉しいんじゃが」


 この祭壇の設置に立ち会った神殿長がリーナに声をかけた。


 リーナは神殿長に頷き礼拝堂に身体を向けた。リーグも惚けていたがリーナの動きに合わせて礼拝堂に身体を向けた。


「お供えありがとう。この実は久しぶりのお供えで食べたレガリア産の爽快の実ですね。とっても美味しくて爽快で大好きな果物なの」


 リーナは澄んだ音色の声を出して手紙を読み始めた。礼拝堂にいる人たちは口を閉ざし頭を垂れて手を合わせて静かに聞いていた。


「それ以来、ルクレイとヴィオナはよくお供えしてくれるのよ。そうそう、やっと再現できたからプレゼントに入れておいたので使ってね」


 手紙に出てきた人の名とプレゼントという言葉に礼拝堂にざわめきが起きた。


「使い方は面倒なのでルクレイにでも聞けば教えてくれるわ。また美味しいものをよろしくね」


 読み終えたリーナはやはりくすくすと笑いを零した。色々と丸投げした上に美味しい物を催促する内容に小さな時に読んだ手紙を思い出していた。


「ふふ、リーナありがとう。女神様もお変わりがないようで。それでは打ち合わせをするからリーグとリーナとドルナンさんは裏に入ってくれ」


 神殿長もくすくす笑いながら礼拝堂の奥に入っていった。リーグとリーナも続きドルナンも慌てて追いかけた。顔には驚きが残っていた。


「それでは環礁に残されている冒険者たちをどうするのか責任のある冒険者ギルドに説明してもらいます。事は人命に関わるので女神様も見てると思います」


 リーグは最初から冒険者ギルドの逃げ道を塞いだ状況として話し出した。


「あの……実は手配は終わっていると聞いてましたので何もしていない状況です。……この件はギルド長が采配すると我々の関与を認めていませんでした」


 この場に出てきた冒険者ギルド副長が青い顔で内部の状況を説明した。ギルド副長も相当にまずい状況と認識した事で完全に萎縮していた。


「そのギルド長は?」


 神殿長がギロリとギルド副長に圧を掛けた。行政機関の役人たちも頭を抱えていた。現在、環礁に残留している冒険者たちはブラナン島出身者ばかりだった。


「実は……連絡船でフェルノート王国に行ってしまいました。船の手配をする実務を任せていたと思われる職員もリフールを出ているようです」


 既に蒼白なギルド副長は経緯を話し始めた。話はかなり酷く新しく赴任したギルド長がフィリーエル環礁の所有権を差し出させようとしたとの事だった。


 所有者のリーグとリーナを脅してでも奪い取ろうと画策した事で冒険者ギルド内で揉めに揉めた。下手にリーナに手を出せば海に沈められる事が確定する。


 ギルド副長が強行手段としてギルド長を拘束し更迭の手続きを進めていた。しかし先に出た職員が逃亡を幇助してギルド連絡船で脱出したとの事だった。


「あー……あの海難事故に遭ってた大型外洋船にギルド長が乗ってたのか。まぁ……助けない選択肢はないから仕方ないよね」


 リーグは肩を竦めため息を吐いた。


「そうですね。リフールに戻ろうとしたらまた海流で遭難してたと思いますよ。あれは仕方ないと割り切りましょう。それより冒険者の引き上げですね」


 リーナも肩を竦めため息を吐いてリーグの言葉を肯定した。


「冒険者たちを引き上げる算段に入りましょう」


 気を取り直したリーグが話のステージを先に進めた。算段も何もドルナンまで巻き込んでこの場に連れて来ていた。それでもリーグは話し合いと思っていた。


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