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海の民と南海の風  作者: うにまる


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第三十三話

 リーグとリーナの小型帆船はブラナン島のリフールに向かっていた。夜間航行を行い早朝にプラナン島の北側に接近したところで大型外洋船に出くわした。


「あれは……海難事故だよ。あの場所は南下してきた分流が流れてるとこ。たぶん王国に戻ろうとして基本航路に入って分流にぶつかったんだと思う」


 リーグは説明しながらリーナに場所を譲った。そして進路を少し西に回すように頼んだ。リーグはメインブームを固定しているレジンロープを外した。


「えー分流も速いけど抜けられるよね?」


 ティラーを軽く押して面舵を当てジャイブの準備としてメインシートをクリートから外して船尾に掛けて来たリーグに渡した。


「あれを見る限り錨を落としてしがみついてるとこ。船首が分流に入って南に下ろうとしたから舵を切ったんだと思う。それで船足が足りずにって感じかな」


 軽く説明しながらリーグは船尾でメインシートを引きメインブームを左舷側から右舷側に移動した。足を踏ん張りメインシートを引いて制動を掛けた。


 メインシートがクリートに掛かったのを確認してリーナはティラーを引いて取舵に変えた。船首は左に回頭し始め北北東に進路を取った。


 リーグは左舷側のジブシートを引いて左舷側に切り替えた。出せるだけ出して左舷船尾寄りから入る風を受け止めさせた。


「ガフは後で中央に戻すからこのまま。何とか加速させて。この先を分流が南西に向かうところに入る。そこはジブだけで渡り切るよ」


 リーグは足元に散らばったジブシートとメインシートを纏めた。ジブシートは滑車から外して船体中央で操作できるように整えた。


 リーナは加速優先の指示でティラーを操作した。可能な限りジブセイルに風を当てた。リーグは船体中央に入り左舷側のステップに座りシート類を整理した。


 リーナも左舷船尾に移動して座り直した。


「分流に入るよ! 船首が下流に振られないように操作して」


 リーグはメインシートを引いてメインブームを強引に呼び寄せた。中央に戻ったところでメインブームを抑えクリートにメインシートを掛けた。


 そしてマストに向かいピークハリヤードとジャックラインを引いてガフセイルのラフとリーチに張りを持たせた。その後はジブセイルに風を当てた。


 リーナは海流に流される点は無視して船首が下流に落ちないようにティラーを当てた。ジブセイルに風を当てる役目はリーグに移っているので専念した。


「分流を抜けるよ! 北西に進路を変えて北側からあの帆船に接触しよう。分流の外に固定して水壁で話を聞きに行く流れでいくよ」


 リーナに声をかけたリーグは右舷側のジブシートを引いてジブセイルの張り出しを絞った。回頭に合わせてメインシートを緩めガフセイルを左舷に出した。


 リーナは左舷船尾に座ったままリーグは右舷側のステップに座った。


「んー、面倒だけどあの落ちてきた分流に分流ができてる。大きな暗礁がある場所で分流してるみたい。もうひとつ北東に抜ける海流を抜けるよ」


 リーグは海流を確認してげんなりした。いつになくリフール近隣の海流が面倒くさい状況になっていた。


「あの帆船は海巫女の警告を受けなかったのかな? 南に落ちる海流だけでも厄介なのに分流本線は東に向かって流れてるのに北東に分流とか初めて見たよ?」


「たぶんあれだと思う」


 リーナが近づいた帆船を指さした。リーグも視線を向けて意味を理解した。船尾静索にフェルノート王国の国旗と冒険者ギルドの旗が靡いていた。


「あれは冒険者ギルドの連絡船か。そういえば二月前ぐらいに入港したの思い出した。確か横帆艤装にジブとかを増設した古い大型外洋船だった」


 リーグの記憶の片隅に入港してきた大型外洋船の姿が残っていた。


「ほんとだ! 下帆桁を付けたマストがない! 最近はミズンマストをガフ帆にしている大型外洋船の方が多いよね? 王国から下りて来るの大変そう」


 南方諸島からフェルノート王国に向かう場合は少しだけ西に寄せて北上すれば到着する。この航路はフェルノート王国が建国される前から使われていた。


 逆にフェルノート王国から南方諸島に向かう場合は常に南風のため一筋縄ではいかなかった。南方諸島で見られる風の切れ目が王国では未発見だった。


「王国船でも冒険者ギルド管轄の帆船だと協定の枠外だから出たんだと思う。俺たちが環礁に向かった後に生まれた海流だから先導もまだ無理って気がする」


「夏本番に向けて風巫女や海巫女は結構散ってるもんね。リフールにはオリアおばさんしか残ってないはずだから東方航路は閉鎖してると思うよ」


 二人は会話しながらも北に向かう海流も越えて停泊している帆船に北東側から接近していった。甲板から船員たちがリーグたちを指差し喧騒が届いた。


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