第二十九話
明日から公開を12:40と18:00とします
大海原を軽快に疾走する小型の帆船がいた。左舷のほぼ真横からアビームの風を受け右舷側に大きく開いた帆が風の力を揚力に変え推進力としていた。
加えて大きなジブセイルがガフセイルの前面風下側との隙間の風を加速させガフセイルの揚力を増していた。既に船体は少し浮き海面を滑走していた。
リーグは左舷中央に座りメインシートをクリートに掛け固定しジブシートは両舷の二本を左手に持っていた。リーナは軽く面舵を当てて固定していた。
「少し波が立つかもしれないからレジンシートを敷いた方が良いかも。おかしな海流はないから舵は取られないと思う。しばらくはこのままだね」
リーグは海面に手を当てて水中探査を飛ばしていた。これは手袋の保護機能を利用していて素手だとかなり痛い行為であった。
「この子ぐらいにあの試作の子も滑走時に安定すると良いよね。あの子も両舷竜骨を入れるんでしょ? 最初から入れなかったのはなぜ?」
手すきになったリーナはステップの座面を開きレジンシートを取り出してお尻に敷いた。ついでに環礁ベリーを取り出し果物入れに補充した。
「あれって元は側舷を立ち上げたくて入れた構造材なんだよね。それを深くして竜骨のようにしてみたら挙動がかなり変わったの覚えてる?」
リーグは聞かれたので答え覚えているか尋ねた。
「覚えてるよー。ガラッと性格が変わったよね。もう前しか見ません!って宣言するぐらい曲がらなかった。当て舵なんて要りませんって言われたよー」
リーナは面白そうに性格判断をしていた。サイドキールを最初に付けた小型帆船は引退しているがクルクル回る特性が曲がらない特性になった。
「最初から曲がらない船だと両舷竜骨が原因だろうと分かってもない時との比較が出来ないから付けなかったの。強度は撥水シートで確保できてたしね」
側舷を立ち上げるとどうしても船底との接合部が弱く最悪はバラバラになる。というかリーグたちはバラバラになった小型帆船から落水した事があった。
「リーグってカクカクしたの好きだよねー。船首もカクカクして引き波が酷い頃もあったし。カクカクさせた最初の頃は船首から海に飛び込んでたよねー」
リーナはケラケラ笑ったがバウダイブはかなり危険な海難事故である。二人とも既に水壁や風壁が使え船がバラバラでも駆けて戻るから感覚がおかしかった。
「あれねー……半日は走らせてごめんね。まさか揺れと波の合わせ技で船首が突っ込んで船尾が宙を舞うとは思わなかったよ。いやあれはビックリした」
リーグも船尾が吹っ飛んだ事故は忘れられなかった。
「でもあれだよねリーグは削りと磨きがホント好きだよね。工作魔法を覚えてからとにかくサンダーで表面を削って磨くのが好き過ぎだと思うよ?」
リーナはニヤリと試作船の船底磨き過ぎて滑りまくった事を揶揄った。
曲がらない小型帆船もリーグがサイドキールの形を削り磨く事で曲がるようになった。船首側から生まれたサイドキールは船尾では姿を消していた。
いつの頃からかリーグが作る小型帆船は船尾側の船底はキールを残して平らになっていた。試行錯誤する中で平らにする事で海面を滑走するようになっていた。
この平らな船底もそういう木材を組んでいるわけではなかった。単にリーグが平らになるまでサンダーで削り磨いた。楽しくてやり過ぎた結果だった。
「削って平面にして磨くと綺麗になるでしょ? 綺麗になると船の速度が気持ち速くなるからついつい磨いちゃうんだよねーマジ楽しいんだよ?」
リーグはニコニコしていたが主にティラーを握るリーナとしては当て舵の調整が忙しい帆船という意識しかなかった。
リーナが忙しいと苦情を入れてリーグはサイドキールの形状やセンターのキールを増設して一部だけ深さを増すといった改修と試験を行った。
キールの嵩増しなどは棒を金属のダボと樹脂で固定するなど改修方法も雑だった。しかし最後の削りと磨きだけは徹底していて見た目だけは綺麗だった。
リーグの凄いところはキールの嵩増しぐらいだと半日も掛からない点である。手近な廃船から木材を取り加工して張り付けるやっつけだが改修は済んでいた。
こんな事を海に突き出したリーフに住んで毎日のように繰り返していた。




