第二十八話
リーグがカニの脚を掲げながら拠点に戻るととても良い匂いがした。リーグは『ミルクスープだ!』と満面の笑顔になった。
まだ亀裂に荷物は残っていたがミルクスープの御利益でリーグは鼻歌を奏で笑顔で往復した。それを見た冒険者たちが引いていたがリーグは気が付かなかった。
荷物を全て運び終わり拠点のテーブルをリーナと囲んだ。中鍋にはいっぱいのミルクスープがコトコトと煮込まれていた。
「うぉーー美味しい! このスープめちゃ美味しいよ!」
夕食にはリーグが期待していたココナツミルクのスープを口にして歓声を上げた。まだまだあるミルクスープにリーグのテンションは弾けた。
「ふふ、今回はなんと! 乾燥エビと乾燥カニと乾燥カイが入ってます! そして乾燥させたトンガリの切身もほぐして入れたので具沢山です!」
リーナが胸を張った。リーグはパチパチと拍手で応えた。
「あっ、乾燥カニは乾燥してくれてたから皆のとこにお裾分けしてあるよ。なんかビクビクしてたけどどうしたんだろ。ココナツ水もお裾分けした」
リーナは在庫が多くなり過ぎている乾燥カニは乾燥してくれたお礼も込めてお裾分けしていた。それでももう一つのハサミは手付かずで脚もあった。
「ところで風はどんな感じ?」
「はっきりしないけど卵が来る可能性はあるかな。直撃でなければ卵だし被害は出ないけど……桟橋は片して接近したら亀裂で待機だね」
リーグの問いかけにリーナは断定できないけど気配は怪しいと告げた。少なくとも三日は余裕があるので冒険者たちは対応できそうだった。
「パールはニ百は超えてたから俺たちは明日には出よう。明日なら追い付かれてもリフールに入れる。安全策を取って孤独岩を経由して戻ろう」
リーグは方針を決めた。環礁ベリーは満足できる量ではないが冒険者たちの退去が間に合わないと冒険者たち十四名が全滅しかねない状況だった。
「分かった。夕食はゆっくり取って合間に手配を進めましょう。私たちが出港したら浮き桟橋も撤収しておいてもらいましょう」
リーナは冒険者たちに撤収準備の作業に入ってもらうと伝えた。
「そうだね。俺たちが四月ほど閉じ込められた時の情報は伝えてあるから数日は余裕で隠れられるはず。リリーナ号は環礁の外で停泊してもらおう」
浮き桟橋を外すのでリリーナ号はラグーンに入れない方向とした。緊急で離脱するとしてもラグーンにいるよりは逃げやすい利点もあった。
二人はそれぞれに冒険者たちに手配進めハサミや環礁ベリーの乾燥をした。合間合間にリーグはミルクスープを頬張ってニコニコしていた。
そして翌日になりリーナは暴風の接近を感知した。冒険者たちには出港したら桟橋を撤去するように指示を出した。そして礁島に設置した拠点の撤去も勧めた。
リーグはハサミや脚と爆裂ココナツを礁島の収納空間に仕舞った。冒険者たちは嫌がったが収納空間の所有者はリーグたちなので拒否は許されなかった。
端的に言って環礁の所有権はまだリーグたちだった。行政機関が逃げて冒険者ギルドに丸投げしたが所有権は冒険者ギルドには権限すらなかった。
リーグは撤収を終えて小型帆船の係留を解いた。
ラグーンには北風が流れ込んでいるのでこのままガフセイルを上げてしまう。ガフセイルは中央で固定しジブセイルを少しだけ引き出して船首を右に押した。
クリューを右舷側に出して左舷前方の風を受け入れゆっくりと進み始める。リーナは船尾左舷に座りティラーをクイッと引いて面舵を当てた。
リーグはジャックラインを引いてクリートに掛けた。ラフだけ張ったことでリーチ側が軽くシバリングを始めたがここでは無視した。
水路に向かうと風は船尾側に周りジブセイルをいじめ始めた。リーグは左舷側のジブシートを引きクリューを左舷に出した。
リーナは水路に入るとティラーを中央に戻した。リーグはジブシートを引きさらにジブセイルを引き出しジブシートを緩めた。
船尾からの風を受けたジブセイルは風を取り込み広がった。追い風を受けジブセイルに押される形で速度が上がっていく。ジブシートをクリートに掛けた。
リーグはメインシートを外してメインブームを右舷側に押し出した。船尾からの風を受けさらに出たがるがクリートに掛けてメインブームの自由を奪った。
「今日の風は通常運転みたいよ。まだ卵はちょっかいを掛けれそうにないから境目までは真っすぐに西へ向かいましょう。滑走に入れば楽になるわ」
リーナが進路の提案をした。本来は少し南に落としたいがほぼ真横のアビームの方が滑走しやすいと判断した。リーグは「了解ー」と軽く応えた。
水路出たところでリーナはティラーを押し取舵を入れた。小型帆船は船首を西に向けるため左に回頭し始めた。リーグは右舷側のジブシートを引いた。
ジブセイルとガフセイルが左舷からの風で張り小型帆船は帆走し始めた。




