第二十七話
上空から落ちてくる海水は終わりを見せた。リーフの外側のラグーンも波立ち木の枝のようなものが転がっていた。そして木の枝は黒い霞になり霧散した。
リーグはびしょ濡れになっているリーナを水球で丸洗いして水分を飛ばした。リーグはそのままラグーンの穴に近づき鍋水壁を覗き込んだ。
「強制収穫は収穫方法を変えないと歩留まりが悪いよね……。これだと背負袋ひとつで十分だよ。でも今回は環礁大ベリーが結構でた。ていうか多過ぎか……」
リーグはため息をつき鍋水壁内の海水を操作して排出した。
「あれ?……ココナツ水もこうすれば楽だったんじゃね?……まあいいか」
リーグは過ぎた事と諦めた。次の機会に試そうと消えやすい頭の中にメモをした。大鍋二つのココナツ水はリーナが頑張っても飲み切るのは無理だった。
海水を出し切ると造水で水を注いだ。パールや環礁ベリーは真水で洗うと劣化が止まる謎な仕様だった。ただ生物なので時間で傷む点は回避できなかった。
リーナは髪を乾かすと鍋水壁の前に移動して「造空」と呟き水の中に空気を生み出した。続けて「空泡」と呟くと水中に泡が溢れた。
リーナは水に出を入れると「気持ち突風」と呟いた。鍋水壁内の泡水が回転し始めた。グルグルと回転するのをリーナは楽しそうに見ていた。
リーグはリーフの周囲に浮いている環礁ベリーを網目の粗い袋で回収し始めた。本来は一網打尽にする秘密兵器の予定が環礁ベリー掬いになっていた。
「色が落ち着いたよー綺麗な藍色になったー。これ絶対に美味しいよ? ていうか美味しかったよ? 環礁大ベリーなんて絶品だったよ?」
リーグが掬い集めた環礁ベリーを鍋水壁に流し込むとリーナが感想を教えてくれた。リーグは頷き鍋水壁内で色が落ち着いた物を摘み口に入れた。
「あー久しぶりの味で美味しい。ここでしか食べれないのが残念すぎる。このままリフールに持ち帰れたら戦争が始まるよね」
リーグとリーナは話しながらも手は環礁ベリーを摘んで口に運んでいた。
「始まるねー間違いない。絶対に漁師ギルドと調理ギルドが戦う……間違いない! 冒険者ギルドは絶対に逃げるよね。あそこ武闘派じゃないから」
リーナがヒョイッと環礁大ベリーを確保した。ニヤリとしたリーナが美味しそうに口にした。リーグはくすくす笑いながら環礁大ベリーをリーナの傍に弾いた。
リーグとリーナは鍋水壁内の環礁ベリーを背負袋に詰め始めた。
「そうそう、このラグーンは閉鎖空間だった。たぶん天候が荒れる可能性が見えてきたけどどうする? 外に出てリーナが分からなかったら三日は間がある」
「やっぱり? ラグーンの底で空爆をした時に反応から密閉空間ってのは分かったからねー。そしたらパールのカイ集めをするから指示して」
リーナも引き篭もる場所が最大警戒に近い事に気が付いていた。
「了解……カイの群生地でリーナがカイを集めてる間に環礁ベリーの群生地を探してみる。リリーナ号がいてくれないと詰みかねない感じだね」
リーグは暴風の卵を警戒していた。時期より早く巣から飛び出した暴風はそれほど大きくは育たない。その代わりに動きがふらつき進路を読み難かった。
リーグは残りの回収を頼み水中探査と探知でカイを探しポイントに鍋水壁を設置して回った。そしてリーナがカイをポイポイと鍋水壁に投げ込んだ。
もう一つ見つけた環礁ベリーの通常規模の群生地は普通に収穫できた。
環礁ベリーにそっと近寄りリーナが造空と空泡で混乱と空気による実の分離をさせた。それをリーグが網目の粗い袋で攫っていく単純な収穫作業だった。
「ちょっと頑張り過ぎたね。リーナは先に戻って観測と夕食をお願い。俺の方でパールを回収したら撤収するね。灯光魔道具はひとつ置いといて」
リーグは分担して夜に向けた作業を進める事にした。パールのカイは少なくとも百個はリーナが拾い集めていた。パールを奪う作業がまだ残っていた。




