第二十六話
リーグたちの拠点には少し甘い香りが漂っていた。リーナは鼻歌を歌いながらコップにココナツ水を注いで冷却保管箱に仕舞っていた。
大鍋には並々とココナツ水が入っていた。
作業していたリーグはまだ作業していた。結局は大鍋四個分で展開した鍋水壁の蓋を取りココナツ水を掬って大鍋に移したが二個でも微妙に足りなかった。
そしてココナツの破裂した殻も回収対象であった。殻の内側に白い層がありこれも重要だった。白い層からはクリームやミルクとココナツ粉が取れた。
南方諸島のそれぞれの島が独自な料理を模索して作り出していた。ココナツのシーズンは露店も増えココナツ料理を競っていた。
伝わって二十年以上経つが今なおココナツは植林され古い木は入れ替えられていた。今となっては渡ってきた事を忘れている者も多かった。
「ふぅ……なかなか大変だった。ココナツ水は零さなかったからリーナの機嫌も良いしココナツミルクのスープを作ってくれそうだ」
ココナツミルクスープが好きなリーグはウキウキしていた。
リーナは水袋にもココナツ水を詰め込み始めた。残りの亀裂内ではココナツ水で喉を潤すことにしたようだった。
砂山の礁島に戻った二人は環礁ベリーを探す事にした。これは環礁ベリーの収穫作業がないとリーナが暇だからである。二人は上空に上がり相談した。
「あのリーフに囲まれた場所が怪しくない? 外は天気が穏やかだったけどちょっと怪しいよね? たぶん静かそうな場所に引き篭もってると思うの」
リーナが指さしたのは少し奥に向かった場所にあるリーフに囲まれた小さなラグーンだった。確かに引き篭もりの環礁ベリーが好みそうな場所だった。
二人は砂山の礁島に降りて収穫の準備に入った。
目の粗い袋を取り出し硬めのレジン棒を袋の口に差し込んでいく。六本のレジン棒を差すと口が開いたままになった。
「あれ?……このレジン棒って布を張るのに使える? こんな感じのレジン棒をメインセイルに何本か付けたらバタつきが減る?……今度試してみよう」
袋の口にレジン棒を差すことで円をベースとした少し歪んだ口として固定される。これを見たリーグは帆船の帆に使えそうな気がした。
空中を移動して小さなラグーンの上空に到着した。
「いるかどうか確認するね。環礁ベリーがいて外側と繋がってなかったら強制収穫になるから歩留まりが悪い。その時は前に考えた強襲空爆でやろう」
リーグは高度を落とすために水壁の階段を展開した。そっとラグーンを囲むリーフに降りてそーっと海面に指をつけて探知を発動した。
『いる……けど多くね? もしかして天候が荒れるのか? リーナは特に……あいつか! リフールを出た時の暴風の残滓……まずいかもしれない』
リーグは思考を進めながら水中探査を発動して確信した。しかし収穫はする必要があるのでリーナを見て小さく首を振り『やって』と口を動かした。
リーナは小さく頷き小さなラグーンの真上まで移動した。リーグは用意した袋を手に持ったままリーフの外周より外に移動した。
「いくよー!」
リーナが合図すると一気に落下していった。小さなラグーンの中心に飛び込み海面が吹き飛んだ。リーグは視界だけを確保するため水壁を展開した。
次の瞬間にラグーンから海水が噴き上がった。
「ドゴォォーーン!」
くぐもった破裂音が遅れてやってきた。海水に大量の泡が混ざり吹き出す量が嵩増しされ上空に吹き上がっていく。
リーグは吹き上がる海水と泡の中を物体が混ざり上空に打ち上げられたのを確認した。そして思い付いた底が小さなラグーンを囲むリーフを塞ぐ大きさで鍋水壁を展開した。
「これ面白いよー」
ラグーンだった穴から飛び出したリーナが楽しそうな笑顔をリーグに向けた。リーグはチラッと上空を見て「落ちてくる」とリーナに警告を飛ばした。
「あっ!」
リーナは慌ててラグーンから離れ頭の上に風壁を展開した。上空から海水が大量に落ちて来た。リーグが展開したラグーンに蓋した鍋水壁が見えなくなった。




