第二十四話
「ふぅ……パールの収穫って腰にくるよな」
リーグは背筋を伸ばして腰をトントンと叩いた。カイからパールを収穫する作業はどうしても無言になるため時間感覚がおかしくなった。
「そろそろお昼時だと思うし昼食にするか」
リーグが水壁の上を駆けて礁島に戻るとリーナが爆裂ココナツを背負袋に詰めていた。先に集めたようで大量の爆裂ココナツが転がっていた。
「そろそろお昼にしない?」
リーグがリーナに声をかけると「えっ?」とリーナは振り向いて周囲をキョロキョロした。「もうそんな時間かー」と積めた背負袋を木陰に置いた。
リーグは腰袋から鍋の中にパールをザラザラと流し込み手で掻き混ぜ始めた。ある程度混ぜたら海水を操作して捨て造水で水を注ぎ掻き混ぜ始めた。
「とりあえずこのハサミを食べてみようよ。カニのハサミは美味しいからきっと美味しいよ! あと爆裂ココナツいっちゃう?」
リーナが爆裂ココナツを一つ手に持ってペチペチ叩いた。
「ハサミはバラして湯通しかな。乾燥魔道具は置いてきちゃったから生か湯通しぐらいしか選択肢がないよ。あと爆裂ココナツの果汁を入れる鍋がない」
「残念すぎるー。それ……脚だけ落とし物でハサミは違うよね?」
リーグの却下に別れがたい風を装って爆裂ココナツを元の場所に戻した。
「その通り。ハサミは切り落としたら残っただけで落とし物ではないよ。だから痛むと思うから今日中には乾燥させた方が良いと思うかな」
落とし物は不思議なコーティングがされていて腐る事がない。それもあり冒険者たちは切身を持ち帰り拠点に作った収納空間に溜め込んでいた。
「そっかー。爆裂ココナツはあと六往復ぐらいかな。これさ、拠点から網を持ってきて全部入れて引っ張っていった方が早いと思った」
リーナは考えた回収方法をリーグに披露した。
「それはアリだねぇ。パールは三個ほど集団から収穫したから結構集まってる。一度戻って網を取りに行くか。ハサミも一個拠点に置いてきちゃおう」
リーグはリーナの提案を受け入れてハサミを一つ持ち帰る算段にした。
昼食は鍋にお湯を沸かしハサミの身をナイフで切り取りながら湯通しで食べた。
「んんー、これ美味しい。身がぷりぷりしてる〜」
リーナは一口食べて目をキラキラさせて大量にナイフで切り取り始めた。少し生身も食べて「これはこれで」と両方の食べ比べを始めた。
リーグも食べて「これは美味しい」と目を細めた。
二人は黙々とカニを食べて食後の休憩に入った。リーグは水に浸けたパールを取り出しながら数えて収穫袋に仕舞った。
「最初の三十五個を含めて百三個だね。予定の半数は獲れた。一度拠点に戻っても十分にこの辺りで目標の二百個は集まりそうで良かった」
「やったー。冒険者さんたちが三十個は持ち帰ってくれるしたっくさん女神様に奉納できそう。きっと女神様はニッコニコだよ〜」
目標達成が見えた事でリーナは満面の笑みで女神様に祈りで伝えていた。
リーグはニコニコのリーナに見惚れていた。少し女神様に焼ける気持ちはあるが女神様はリーグも好きなのでニコニコしながらカニを頬張る姿を眺めていた。
昼食後は二人とも慌ただしく動いた。パールを詰めた腰袋と一回分の爆裂ココナツを背負袋に入れたリーグは「ふぉぉ」と食べかけのハサミを持ち上げた。
リーグの手袋が淡い光を出してキラキラと小さな煌めきを零していた。
これはリーグが手袋に魔力を流し活性化状態にしている証だった。小箱から出る品物はすべて魔力を流すことで活性化し拡張機能が解放される。
この魔力を流すという情報は南方諸島では一般的ではなかった。リーグが貰った『人気ランキング』の冊子にコラムとして書かれていたのが発端である。
コラムには魔力を流す事で活性化して得られる拡張機能の有用性だった。コラムの結論は戦闘職以外にはあまり活用できないとなっていた。
リーグは冊子をリーナに見せて意見を募ったら「試してみれば?」と軽く返されたので魔力を流すという未知の世界で一年近く模索した。
ある日の夕食後にリーグが思い出したように手袋に魔力を流す振りをした。
結局流し方は分からずリーナに「女神様に祈るのよ」と言われ祈りと一緒にうんうん唸りながらグダグダしている時に光が爆発した。
近くで編み物をしていたリーナも光を浴びて二人で目を押さえて転げ回った。その後はリーナにがっつり怒られてリーグはショボーンとしていた。
リーグが手袋の検証した範囲だと『筋力強化』の効果があるように感じた。重い物も持てるようになっていた。
調子に乗ったリーグが建造中の帆船を持ち上げようとして腰を痛めた。
大きなハサミを持ち運ぶリーグはどうみても不審者だった。リーグの後ろから駆けていたリーナはそのシュールな光景にくすくすと笑っていた。




