第二十三話
ココナツという樹木の上に実がなる果物がある。元は南方諸島にも自生していなかった樹木だがフェルノート王国から苗が持ち込まれ定着していた。
ココナツはとても美味しい飲み物が手に入り爆発的に南方諸島で植林された。このココナツの木は王国内では育ち難く王国への輸出品になっていた。
ココナツが街に溢れるのは夏本番になるこの時期であった。輸出用のココナツは既に収穫されフェルノート王国に向かっている時期だった。
「うわー、すごいすごい。爆裂ココナツが一本に四個は付いてるよ!……見た限り木は二十本はあるから八十個! 爆裂ココナツだらけだよ〜」
リーナのテンションがかなりおかしかった。
『八十個の爆裂ココナツは危険すぎるしそもそも積めない。しかし数を減らす提案は後を引く……。それだったらリーナに運んでもらってパールを揃えるか?』
リーグは頭の中でパールと環礁ベリーの収穫予定と想定外の爆裂ココナツの収穫搬送を並べて二日に収まるか計算をしていた。
リーナは既に爆裂ココナツを収穫し下の砂地に並べ始めていた。リーナが高い場所を駆ければ亀裂の入口まで鐘一つは掛からない。
「リーナはひとまず爆裂ココナツを入口の傍まで運んじゃって。拠点の礁島までは冒険者に頼むかうちの帆船を出すか考えといて」
リーグは諦めてリーナの行動を追認した。どちらにせよ迎えの船に乗せればリフールまでは運べる。報酬をどうするかはリーナの得意分野だった。
「分かったー。リーグはパールを集めちゃってね。環礁ベリーの群生地もお願い。拠点まではうちの帆船を使いましょうね」
リーナがサクサクと方針を決めた。既に背負袋に爆裂ココナツを詰め始めていた。簡単に爆裂はしないがリーグとしては少し不安はあった。
『あれは止まらない。という事でこの砂山は放置するか? 正直なところ調べるには……デカすぎる。拠点の礁島を歩いて一周するのに鐘四つは掛かったよな』
リーグは爆裂ココナツはリーナに任せると決めパールの収穫を進めるために砂山を駆け上がった。外周から外れ砂地を駆けていると目の前に砂の壁ができた。
「うおっ……」
慌てて横に飛び水壁を防御用で展開した。手を付いてさらに距離を開け体勢を立て直した。砂柱が落ち切ると目の前に巨大なカニがいた。
「へっ?……デカすぎるだろ! こいつカニだよな? ハサミあるし後ろの脚はヒラヒラしてるし。……カニか? いやたぶんカニだよな」
カニがハサミを振り上げて叩きつけてきた。
「挟まずに殴るのかよ!」
リーグは横に移動しながら水壁で高度を取った。
標準で発動した防御用水壁は邪魔なので解除した。自分に紐付いているためハサミに当たると反動が身体に来るため吹き飛ばされる可能性があった。
リーグが空中からチラリとリーナを見ると嬉しそうに爆裂ココナツを背負袋に仕舞っていた。リーグは『まぁそうだよね』とカニに注意を向けた。
カニは上空に上がったリーグを見上げ口をモグモグと動かした。
リーグは小さな水壁を展開しながら横に移動した。それまでいた場所を水槍が貫き「ガシャーン」と展開した小さな水壁たちが粉砕されて消えていった。
「マジか?……見た目はカイの水槍よりちょっと大きいぐらいなのに威力の上がり方がおかしいだろ。口をモグモグさせるとかぎょうぎ――うぉっ……」
水槍を避けたところにカニのハサミが殴りにきた。
「とりあえず……そのハサミは置いていけ〜」
リーグは工作魔法のカットソーを発動して木材を切るようにハサミの根本に射し入れて左側のハサミを切り飛ばした。
「ドスーン」
中身が一杯詰まっている音を立ててハサミが砂地に落ちた。突然ハサミを失ったカニはよろけた。そこに別のカットソーを発動して残りのハサミも落とした。
「これで殴る事は出来ないだろ! カニだったらこれで討伐!」
リーグは水壁を蹴ってカニに正面から向かい目の間にドリルビットを発動して頭を貫いた。リーグはドリルビットを解除して少し後方に着地した。
「ドスーン」
カニはひっくり返って倒れ黒い霞になり霧散し落とし物を落とした。
「あっ! また小箱だ。今日は大放出だな。それと……脚? これハサミの後ろにあった脚って感じだな。ていうかハサミも落ちたまま?……気前良いな」
リーグでも一抱えありそうな脚が一本落ちてきた。そしてまたもや小箱が落ちた。少し悩んだリーグがリーナを見ると既にいなかった。
「まぁ……リーナはカニよりエビだし……エビより爆裂ココナツだよな」
リーグは諦めてハサミ二個と脚を木の下に運んで周囲の確認をした。水中探査と探知でカイの集団を見つけると収穫という名の略奪を始めた。




