第二十話
いくつかのリーフを経由してラグーンの奥に二人は移動していた。当然のように二人に気が付いたトンガリが何回か襲撃してきた。
トンガリは魔石と切身と稀に刺突骨を落とす。しかし二人には不要なので小さい水壁を展開する。水壁に刺さりジタバタしている間に二人は先に進んだ。
リーフに降りたタイミングで襲撃してきた場合は諦めて水壁で足を止めさせリーナの風刃で殲滅する。三十に満たない小集団では水壁を越えられなかった。
「あっ……パールが集まってるけど獲る? 三十ぐらいいるよ」
リーグが水中探査と探知をするとパールを落とす魔物を探知した。比較的集まる傾向のある魔物だがが三十体が集まっていることは稀だった。
神殿用に二百個以上のパールを集める予定の二人にも三十は魅力的だった。
「パールを集めるのはリーグのお仕事だから任せるよ?」
身も蓋もなくリーナが告げた。確かにパール集めはリーグのお仕事なので「収穫してくる」と頷いた。リーグが向かうとリーナは腰を下ろしてリーグを眺めた。
リーグは反応のあった場所に着いた。すると海面から何本も水の槍が飛んできた。リーグは横に動き何本かの水槍を手で払った。
海中をみるとパールを落とすカイが集まっていた。平べったい形の二枚貝である。この『カイ』という呼び名はフェルノート王国から伝わり既に定着していた。
リーグは海面に沿って水壁を展開した。そして腰袋から尖った金属の両刃のナイフを取り出した。左手でカイを掴みナイフでこじ開けて中にあるパールを獲る。
パールは腰袋に入れカイは足元に捨てた。その作業をリーグは見えているカイがなくなるまで繰り返した。足元に落としたカイは黒い霞になり霧散していた。
「いつも思うけどリーグのパール集めって密猟者みたいだよね。腰を屈めてコソコソ動いてるから見てて飽きないよね」
リーグがリーフに戻るとリーナの酷い評価だった。リーグにしても自覚がある行動なので苦笑いを浮かべ頭を掻いて誤魔化した。
リーナは「貝柱って何個落ちた?」と確認に入った。
「大盤振る舞いで十個! パールは五個で珍しく小箱が出たけど開ける?」
腰袋から小箱を取り出してリーナに投げ渡した。
「んー、今回はリーグの番だよ? この間のは髪留めを出したから髪の毛がツヤツヤだよ。リーグも髪留めでツヤツヤにしなよ〜」
リーナはリーグに可愛い髪飾りを推して揶揄った。
「いや……それはヤダ。手袋でロープ操作も楽だし欲しい物が思いつかない。取り敢えず膝当を出せば? 前に欲しがってなかった?」
リーグは流れを押し返すため膝当を持ち出した。少し前にリーナが膝裏のケアで欲しいかもと悩んでいたのを覚えていた。
「膝当は欲しいけど……普段の格好って膝が出てるからお婆ちゃんみたいだから止めたの。あっ! リーグは脛当を出して使用感を教えてよ!」
しかしリーナは膝当はお年寄りとお揃いになると今回は拒否した。
「脛か……確かにたまにぶつけて動けない事はあるんだけど……まぁ……無難か」
リーグは諦めてリーナが投げ返した小箱を受け取り創世の女神に『脛当をお願いします』と祈りを捧げてから小箱を開けた。
小箱を覗き込んだリーグはヒラヒラした布を取り出した。
「手袋もそうだったけど小箱から出した直後って単なる布に見えるよね。まぁ……着けても布なんだけど効果は凄いからホントに不思議だよね」
リーナは遠目では単なる布にしか見えない事に笑った。
リーグは肩を竦めブーツを脱いで脛当を着けた。両足とも着けるとブーツを履き直した。軽く足をトントンすると先に進もうとリーナを促した。
この小箱から出る手袋や脛当は手袋シリーズと呼ばれる小箱の人気商品と王国の商人から聞いていた。女性へのプレゼントの定番という話だった。
理由は付いている効果が『美肌効果』と『耐熱耐寒』と商人が教えてくれた。王国には『小箱人気ランキング』という小冊子があると実物を貰った。
ランキング上位は全て女性向け商品だった。




