第十七話
南方諸島にある有名だが人がほとんど訪れない環礁がある。基本航路から外れた場所にあり辿り着くのが難しく環礁自体には目立った特徴がなかった。
南方諸島の入口であるブラナン島は環礁の情報を直接得た島で環礁がある事を疑う人はいない。しかし南方諸島の奥に向かうに従い環礁は伝承扱いであった。
環礁が発見され二十年程度にも関わらず噂だけが流れた事で言い伝えの伝承扱いになっていた。噂を運んだ商人たちも苦笑いで放置する事にした。
この環礁にあるのは南方諸島で唯一発見されている亀裂である。これはフェルノート王国から『ダンジョン』と名付けたと連絡が来ていた物である。
この辺りの情報伝達に多少問題があり情報が上手く南方諸島に広がらなかった。そのため色々な話が伝承扱いになり情報が伝承に姿を変えてしまった。
リフールの行政機関も諦めて冒険者ギルドに任せる形で手を引いていた。
任された冒険者ギルドも頭を抱えた。亀裂には魔物がいて討伐すれば魔石が手に入ると情報は得ていた。加えて落とし物として何かが落ちるとも聞いていた。
環礁があるとされる場所の情報も一緒に渡されたが冒険者ギルドに現地に向かう伝がなかった。そんなグダグダなまま時間だけは過ぎていった。
「えー、皆さんお久しぶりです。ちょっと試作船の試験に集中し過ぎて顔を出すのが遅くなってしまいました」
リーグは全く悪びれず再会の挨拶をした。
「で、結局は迎えの船はいつも通りと聞いてたから詳細不明で良いですね?」
そしてわざわざ集まった議題の結論を最初から持ち出した。
集まった三つの冒険者パーティのリーダーたちは苦虫を噛んだ顔で頷いた。リーグが議長と聞いて三人とも色々と諦めた感じの心境だった。
リーグが色々と優秀な事は三人とも知っていた。とにかく状況判断は的確で海難事故を何件も解決し多くの船乗りを救ってきた実績もあった。
「確かに誰が船を回してくれるのかは聞いてねぇ。そこは冒険者ギルドが手配する事になってるからな。問題はリーグの認識だと準備できてないって事だよな?」
ヘルムの所属するパーティのリーダーであるネガが話の流れが歪む前に発言した。このまま議事進行させると逃げ場のない結論に飛ばされるためである。
「そうですね。単独で来れるゼナさんとデンさんが不在ではここに来れません。ここの店仕舞いには最低でも中型のカッターかスループが必要です」
ネガの質問にリーグは辿り着ける船長がそもそもリフールにいないと話した。
「リーナの記憶では中型のカッターが二隻いたようですが……先導の話が来てないので望みは薄いと思います」
そして軽い口調で望みが薄いことをリーグは冒険者たちに告げた。他のチームのリーダーであるベルクとオガミは頭を抱えて唸っていた。
「仕方ないのでリフールの冒険者ギルドとの交渉は俺の方でします。重要な点は中型で十分かどうかですが……荷物的に中型でいけます?」
「えっ?……あっうちはいつも通り」「うちも」「うちもだ」
色々な前提が崩れるなか三人はリーグの問いにいつも通りと答えた。
「みんな働き者だよね。冒険者なのに荷物の増減が少ないって真面目だよね」
「リーグそれは言わない約束でしょ? というか少し思ったんだけど……戻った時にドルナンさんがいたらそっちに話を持っていかない?」
軽くリーグに突っ込みを入れたリーナは話の流れを船長選定に逸らした。
「ん?……ドルナンさんかぁ。リリーナ号の操船技術は見てないけど入港時の手際と船を見る限り腕は良いよね。王国からここまできちんと辿り着いてるし」
流れをそのまま受け入れたリーグはリーナの提案に興味を示した。
「でしょ? あの船なら拠点や桟橋も持って帰れる積載量あるよ?」
「確かに積めるね。桟橋まで持ち帰ったら後が面倒だから置いてくよ? ちゃんと仕舞う場所も作ったんだし再利用するからね?」
リーグはリーナが桟橋まで持ち帰ると言い出したので桟橋を擁護し始めた。
三人の冒険者パーティのリーダーたちは結局はこの流れかと同じ事を考えていた。この二人は基本的に自己完結するため諦めるしかなかった。
「それでは二日ほど俺たちはパールを集めます。集めるのは神殿で用意する分なので街中向けは皆さんで頑張って集めてくださいね」
リーグはリーダーたちは集まったがほぼ話してない事に気が付いていなかった。




