第十三話
はっきりとした場所も分からない浅瀬にアンカリングした。リーグとリーナは停泊の準備と食材調達に分かれ行動を開始した。
リーナは右舷側のステップを開き収納空間から組立テーブルと加熱魔道具を取り出した。ポールを組み立て天帆布を被せ四隅を固定し加熱魔道具を置いた。
リーグは同じ収納空間から筒状の容れ物を取り出し中身を海に捨て造水で容れ物を水で満たした。元の場所に戻して船首側に移動した。
バウの収納空間を開き中からポールを取り出した。ポールのあった場所の横には釣り竿が仕舞われていた。ポールを組み立て一本の棒にした。
ポールの繋ぎ目には小さなクリートが現れた。この棒は鍛冶師のゼク爺さんとリーグが相談して作ったスピアのシャフトだった。
「これってどういう構造なのか毎回気になるよな」
小さなクリートを右回りで回すとポールの結合にロックが掛かる仕掛けになっていた。ドワーフ族のゼク爺さんはこういった遊びを必ず入れる物好きだった。
リーグはヘッドを嵌め込み細いレジン糸を銛先のリングに結ぶ。レジン糸をバット付近にある小さな滑車のような物にクルクルと巻き付け末端は固定した。
リーグ的にはこの滑車部分も謎だった。ゼク爺さんの言い分は『ラインに余裕は必要じゃ』だった。言いたい事は分かったが滑車である必要制は不明だった。
スピアの準備が終わったのでリーグは「行ってきまーす」とリーナに声をかけ海に足から入った。周囲をリーグは確認し暗礁の位置を確認し海面に戻った。
「あー……水中メガネを頼み忘れた」
リーグはバツの悪い顔になったが岩場の上まで泳いで移動した。暗礁の上に着くと息を整え一気に水中に潜った。暗礁の魚影を確認し水深を下げていった。
『なんで暗礁に大きいやつしかいないんだ? また生魚の切り身がなくならないヤツじゃん。手頃で中型が食べたいの! 大は中を兼ねないんだよ?』
リーグは大物しかいない暗礁に突っ込みを入れた。
『小島でもあるなら半身は焼くって選択肢あるけど小島ないじゃん!』
スピアのバットから出ているレジン糸を手に絡ませシャフトを引いてテンションを掛けた。足元に水壁を展開し踏み台にして一気に水深を稼いだ。
「ピシュッ」
シャフトを離すとスピアが飛び出し根に入ろうと頭を回した大型の根魚に刺さった。手元のレジン糸を引いてスピアを手元に戻し海上に浮上した。
「あれは……二人の胃袋よりでかいやつ……。正面向いて大きさ隠しやがった。アラスープの美味しいやつなんだけど身が多すぎだ!」
リーグは目測を誤ったミスを魚に押し付けた。海中に軽く戻り獲物の確認をした。ヘッドは頭部の急所に刺さり既にぐったりしていた。
海面付近に浮かびながら滑車の側面に付いている出っ張りを摘みクルクルと回していく。滑車にレジン糸が巻き取られていった。
おもむろにレジン糸を掴み海面から顔を出して手繰っていく。
「ちまちま巻いてたらいくら俺でも息が続かねぇんだよーちくしょー」
リーグは何回使っても滑車の存在意義は理解できなかった。ヘッドにラインが必要なのは分かるが付属のラインが長すぎだし滑車に巻きたいから長いと思った。
リーグはガックリと大きな根魚を見て項垂れた。せめて焼くなりで味を変えたかったが船の上では無理だった。半身を海に捧げたいと思いながら船に戻った。
そして想像した通りに平皿は切り身が山になっていた。しかし朗報もあった。皿数は増やせなかったので乗らない分は冷却保管箱に仕舞われた。
「ふーん、暗礁にいたのが大型ばっかりだったのね。そして正面向いて大きさを隠していたと。まぁ……美味しいのは確かだけどアラも鍋から溢れてたよ?」
リーナは塩や粉末果物を小皿に入れリーグへの突き刺し攻撃を手仕舞い切り身を食べ始めた。女神様へのお祈りは『今日も完食します』なのをリーグは聞いた。
リーグはまずアラスープを一口飲み切り身の山に戦いを挑んだ。テーブルには冷やしていた『爽快の実』が汗をかきながらリーナの手元に置かれていた。
2026/08/19 少し推敲しました




