表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の子  作者: おかやす
PR
25/26

25.真相判明

 ユウガくんの質問に、ドキッとした私だけど。


「使えないわ。精霊様が見えてお声はなんとなく聞こえるけど。それだけよ」

「ま、一応魔力の制御方法は習ったけどよ。たいした魔法は使えねーんだ」


 顔色ひとつ変えずに、さらりと嘘をつくリーゼお姉ちゃんとコン兄ちゃん。

 なるほど。ポーカーフェイス、てこうやるんだ。


「そう、ですか」


 ユウガくん、なんだかがっかりしてる。なんでだろ?


「俺らに魔法の使い方を教えてほしい、てか?」

「うん」


 ユウガくん、小さくうなずきました。


「俺もう……魔力に振り回されるの、嫌だよ」


 力があるのなら、ちゃんと使いこなしたい。

 そうしないと、また誰かに迷惑をかけるから。


「基本だけでもいいんだ。暴走しないよう、どう制御すればいいか教えてほしい」

「そうね……できることなら教えてあげたいけれど。ユウガくんの魔力は強すぎる。私たちじゃ難しいわね」


 本当は、元魔法使いの弟子だってことは秘密だから、なんだろうけど。

 ユウガくん困ってるみたいだし、ちょっとだけでも教えてあげたらいいのに。あ、もしかしたらお師匠様に、ダメって言われてるのかな。


「そう、ですか」


 ユウガくん、またがっかりした顔になりました。


「ごめんなさい、変なこと聞いて。また教堂の人に相談してみる」


 前に暴走したとき、魔力の制御方法は教えてくれなかったけど、暴走しないよう魔力をある程度封印してくれたんだって。

 でも、私を助けるために魔法を使ったから、その封印が解けちゃったらしいの。このままではいつまた暴走するかわからないから、再封印するか魔力の制御方法を習う必要があるんだって。


「封印が解けた……」


 リーゼお姉ちゃんが小さい声でつぶやいた。ちょっとだけ、魔法使いの顔をしている。どうしたんだろう。


 ざぁぁぁぁっ、て葉擦れの音が聞こえました。


 風が吹いたのかな。ローワンの木が揺れています。あれ、でも周りの木とか草はあんまり揺れてないな、なんでだろ。


「おーおー、なんか怒ってるぜ」

「魔力暴走させてミラを巻き込んだら、ただじゃおかない、て顔ね」


 風が吹いたんじゃなくて、精霊様が怒ってるんだ。ユウガくんも、なんだか(おび)えた顔をしてる。


 ――あれ?


 ユウガくんのこういう顔、すっごく見覚えある。

 そうだ、休憩時間になったとたん、逃げるように席を離れちゃう、あの時の顔だ。


 んん?

 んんんん?

 もしか、して?


「ねえ、ユウガくん」

「え、あ……なに?」

「精霊様って、どんな感じ? 詳しく教えて」

「詳しく……?」

「どんな服着てて、どんな顔して、どんな雰囲気か。そういうのを全部、細かく、隅々まで、きっちりと」

「え? あの……ええと……なんていうか……」


 ユウガくん、戸惑った顔で私とローワンの木を交互に見ています。

 ふーん、そんなに言いにくいんだ。


「護法童子よ」


 リーゼお姉ちゃんが、私の耳元に顔を近づけて、ものすごく小さな声で囁きました。


「おかっぱ頭で、ミラがあげたリボンを頭に巻いて、裾がすごーく長い白い服を着ているわ。()()()()強そうな男の子よ。夜道で会ったら、回れ右して逃げたくなるわね」


 護法童子、知ってる。お師匠様の研究室で絵を見たことある。小さい男の子で、どっちかっていうとかわいい感じだったけど。

 ローワンの木の精霊様は、夜道で会ったら逃げたくなるような、()()()()強そうな感じ、なんだ。


「ちなみに今は、手に持った剣を肩に置いて、両足を広げてしゃがんだ状態で、こっちを見てるわね」

「いやあれ、見てるんじゃなくて、(にら)んでるっつーか、ガン飛ばしてるっつーか……」


 両足を広げてしゃがんだ状態で。

 ガン飛ばしてる。

 それって。


はんこーき(反抗期)だった頃の、コン兄ちゃんがよくしてた感じ?」

「ミラは記憶力がいいのねー」


 リーゼお姉ちゃん、にっこり笑って頭をなでてくれました。

 つまり、正解ってこと。

 あの頃のコン兄ちゃん、ちょっと怖かったもんね。島の男の人とよくケンカしてたし。まあ、その度にお師匠様がコテンパンにしてたけど。

 そんなコン兄ちゃんのこと、お師匠様は何て言ってたっけ。

 えーと確か――ヤンキー?


「……ねえユウガくん」

「え、なに?」

「ユウガくんが休憩時間になると、すぐにどこか行ってたのって……精霊様が、ガンつけて(おど)してたから?」

「……」


 ユウガくん、黙っちゃいました。ローワンの木の方をチラチラ見ながら、どうしよう、て顔をしてます。

 ふぅん、そうなんだ。

 精霊様、そんなことしてたんだ。

 ふぅぅぅぅん。


「何て言ってたの?」

「え?」

「精霊様、ユウガくんに何て言ってたの?」

「そ、それは、その……」

「教えて!」


 思わず強い口調になっちゃったら、ユウガくんがびっくりした顔をしました。


「その……うちのお嬢に手ぇ出したら、タマ取んぞオラァ……とか……」

「どこのヤクザもんだよ」


 コン兄ちゃんの、あきれた声。リーゼお姉ちゃんもため息。


 それって――つまり。

 精霊様が、ユウガくんを脅してた、てことだよね。

 なんで?

 なんでそんなことするの?

 私、なにかしちゃったのかな、てずっと悩んでたのに。

 仲良くなれますように、てお祈りしてたのに。

 よりによって、精霊様が邪魔してたってこと?

 むぅぅぅ!


「精霊様ぁっ!」


 私は窓に駆け寄ると、ローワンの木に向かって――そこにいるはずの精霊様に叫びました。


「ちょっとお話があります! 今からお庭に行くので、そこで待っててください!」


 ざわざわと揺れていたローワンの木が、ピタリと静かになりました。


「納得いく答えをもらえなかったら、お師匠様に言いつけるからね!」

「お、びびってる」

「あらまあ、お師……おばあ様には頭が上がらないのね」

「ミラ……お前、すげえな」


 ユウガくんが目を丸くしているのを横目に。

 私はぷんぷん怒りながら、お庭へと降りていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なるほど、護法童子でしたか( ˘ω˘ )
精霊様が、はんこーきの少年!ヤンキー! これは新機軸!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ