25.真相判明
ユウガくんの質問に、ドキッとした私だけど。
「使えないわ。精霊様が見えてお声はなんとなく聞こえるけど。それだけよ」
「ま、一応魔力の制御方法は習ったけどよ。たいした魔法は使えねーんだ」
顔色ひとつ変えずに、さらりと嘘をつくリーゼお姉ちゃんとコン兄ちゃん。
なるほど。ポーカーフェイス、てこうやるんだ。
「そう、ですか」
ユウガくん、なんだかがっかりしてる。なんでだろ?
「俺らに魔法の使い方を教えてほしい、てか?」
「うん」
ユウガくん、小さくうなずきました。
「俺もう……魔力に振り回されるの、嫌だよ」
力があるのなら、ちゃんと使いこなしたい。
そうしないと、また誰かに迷惑をかけるから。
「基本だけでもいいんだ。暴走しないよう、どう制御すればいいか教えてほしい」
「そうね……できることなら教えてあげたいけれど。ユウガくんの魔力は強すぎる。私たちじゃ難しいわね」
本当は、元魔法使いの弟子だってことは秘密だから、なんだろうけど。
ユウガくん困ってるみたいだし、ちょっとだけでも教えてあげたらいいのに。あ、もしかしたらお師匠様に、ダメって言われてるのかな。
「そう、ですか」
ユウガくん、またがっかりした顔になりました。
「ごめんなさい、変なこと聞いて。また教堂の人に相談してみる」
前に暴走したとき、魔力の制御方法は教えてくれなかったけど、暴走しないよう魔力をある程度封印してくれたんだって。
でも、私を助けるために魔法を使ったから、その封印が解けちゃったらしいの。このままではいつまた暴走するかわからないから、再封印するか魔力の制御方法を習う必要があるんだって。
「封印が解けた……」
リーゼお姉ちゃんが小さい声でつぶやいた。ちょっとだけ、魔法使いの顔をしている。どうしたんだろう。
ざぁぁぁぁっ、て葉擦れの音が聞こえました。
風が吹いたのかな。ローワンの木が揺れています。あれ、でも周りの木とか草はあんまり揺れてないな、なんでだろ。
「おーおー、なんか怒ってるぜ」
「魔力暴走させてミラを巻き込んだら、ただじゃおかない、て顔ね」
風が吹いたんじゃなくて、精霊様が怒ってるんだ。ユウガくんも、なんだか怯えた顔をしてる。
――あれ?
ユウガくんのこういう顔、すっごく見覚えある。
そうだ、休憩時間になったとたん、逃げるように席を離れちゃう、あの時の顔だ。
んん?
んんんん?
もしか、して?
「ねえ、ユウガくん」
「え、あ……なに?」
「精霊様って、どんな感じ? 詳しく教えて」
「詳しく……?」
「どんな服着てて、どんな顔して、どんな雰囲気か。そういうのを全部、細かく、隅々まで、きっちりと」
「え? あの……ええと……なんていうか……」
ユウガくん、戸惑った顔で私とローワンの木を交互に見ています。
ふーん、そんなに言いにくいんだ。
「護法童子よ」
リーゼお姉ちゃんが、私の耳元に顔を近づけて、ものすごく小さな声で囁きました。
「おかっぱ頭で、ミラがあげたリボンを頭に巻いて、裾がすごーく長い白い服を着ているわ。とっても強そうな男の子よ。夜道で会ったら、回れ右して逃げたくなるわね」
護法童子、知ってる。お師匠様の研究室で絵を見たことある。小さい男の子で、どっちかっていうとかわいい感じだったけど。
ローワンの木の精霊様は、夜道で会ったら逃げたくなるような、とっても強そうな感じ、なんだ。
「ちなみに今は、手に持った剣を肩に置いて、両足を広げてしゃがんだ状態で、こっちを見てるわね」
「いやあれ、見てるんじゃなくて、睨んでるっつーか、ガン飛ばしてるっつーか……」
両足を広げてしゃがんだ状態で。
ガン飛ばしてる。
それって。
「はんこーきだった頃の、コン兄ちゃんがよくしてた感じ?」
「ミラは記憶力がいいのねー」
リーゼお姉ちゃん、にっこり笑って頭をなでてくれました。
つまり、正解ってこと。
あの頃のコン兄ちゃん、ちょっと怖かったもんね。島の男の人とよくケンカしてたし。まあ、その度にお師匠様がコテンパンにしてたけど。
そんなコン兄ちゃんのこと、お師匠様は何て言ってたっけ。
えーと確か――ヤンキー?
「……ねえユウガくん」
「え、なに?」
「ユウガくんが休憩時間になると、すぐにどこか行ってたのって……精霊様が、ガンつけて脅してたから?」
「……」
ユウガくん、黙っちゃいました。ローワンの木の方をチラチラ見ながら、どうしよう、て顔をしてます。
ふぅん、そうなんだ。
精霊様、そんなことしてたんだ。
ふぅぅぅぅん。
「何て言ってたの?」
「え?」
「精霊様、ユウガくんに何て言ってたの?」
「そ、それは、その……」
「教えて!」
思わず強い口調になっちゃったら、ユウガくんがびっくりした顔をしました。
「その……うちのお嬢に手ぇ出したら、タマ取んぞオラァ……とか……」
「どこのヤクザもんだよ」
コン兄ちゃんの、あきれた声。リーゼお姉ちゃんもため息。
それって――つまり。
精霊様が、ユウガくんを脅してた、てことだよね。
なんで?
なんでそんなことするの?
私、なにかしちゃったのかな、てずっと悩んでたのに。
仲良くなれますように、てお祈りしてたのに。
よりによって、精霊様が邪魔してたってこと?
むぅぅぅ!
「精霊様ぁっ!」
私は窓に駆け寄ると、ローワンの木に向かって――そこにいるはずの精霊様に叫びました。
「ちょっとお話があります! 今からお庭に行くので、そこで待っててください!」
ざわざわと揺れていたローワンの木が、ピタリと静かになりました。
「納得いく答えをもらえなかったら、お師匠様に言いつけるからね!」
「お、びびってる」
「あらまあ、お師……おばあ様には頭が上がらないのね」
「ミラ……お前、すげえな」
ユウガくんが目を丸くしているのを横目に。
私はぷんぷん怒りながら、お庭へと降りていきました。




