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勇者の子  作者: おかやす
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24/26

24.守護の力

「あのブルーノ、てやつに、父ちゃんと母ちゃんが人質に取られてたんだ」


 私を誘拐するのに協力しなければ、お父さんとお母さんの命は保証しない――ユウガくんはそう脅されて、仕方なくあの二人に協力した、て言いました。


「あの導師、おめーの叔父さんなんだって?」

「違う! あんなやつが俺の叔父さんだなんて、あるもんか!」


 ユウガくんが、すごく怒った口調で言いました。

 あの導師――グレゴールさんは、先週の星籠日(ほしこもりのひ)に、ブルーノさんが連れて来たんだそうです。

 先週の星籠日(ほしこもりのひ)って――朝早く、うちの庭に来てた日だ。ニルヴァーナから立ち去った後、ブルーノさんと一緒にユウガくんの家に行ってたんだ。


「父ちゃんに弟がいたのは本当みたいだけど、俺が生まれるずっと前に行方不明になってて……ずいぶん探したけど見つからなかった、て言ってた」

「そう。ブルーノ、ていう人は、知り合いだったの?」

「父ちゃんが働いてるお店のオーナーだ、て言ってた」

「へえ。あのエロオヤジ、王都に店持ってたのか」

「でも、父ちゃんはいつも露天みたいなところで働いてて。あれが店だ、ていうのはちょっと変だな、て思う」


 ユウガくんのお父さんは、元々はミラルダのお父さんが経営している商会で働いていた。

 でもユウガくんが五歳くらいの時にブルーノさんと知り合って、倍の給料を出すからうちで働かないか、て引き抜かれたんだって。


「だけど、俺の父ちゃん、すげー仕事ができるってわけじゃなくて、どっちかっていうと失敗ばっかりしてて。そんな父ちゃんを引き抜くなんて、よく考えたらおかしいんだよ」


 でも、今なら理由がわかる、てユウガくんが言いました。


「てゆーと?」

「父ちゃんがあいつのところで働くようになる少し前に……俺、魔力が暴走して事故起こしたんだ」


 幸い人死には出なかったけど、何件か家が壊れて、ケガ人も出たんだって。


「たぶん、それを聞いて接近してきたんだと思う……俺を、何かに利用できると思って」


 壊した家の弁償やケガをさせた人の治療費で、ユウガくんの家は大変なことになった。そんなときにブルーノさんから引き抜きの話が来て、倍の給料っていう条件に、ユウガくんのお父さんは飛びついてしまった。


「なるほど、弱みを的確に突かれた、てことね」


 ユウガくん、悔しそうな顔をしてうなずきました。


「俺があんな事故を起こさなかったら、父ちゃんがあいつのところで働くことなんてなくて……ミラが誘拐されそうになるなんてこともなくて……」


 ユウガくん、また泣いてしまいました。

 ユウガくん、もう泣かないでよ。まだ小さかった頃のことでしょ? ユウガくんは悪くないよ。


「ひとついいかしら? 魔力が強いのなら、ましてや暴走して事故を起こしたのなら、教堂があなたを預かる、て言うと思うんだけど」

「うん、来てた」


 リーゼお姉ちゃんの質問に、ユウガくんは涙をぬぐって、うなずきました。


「でも……俺のじいちゃんのこと知ったら……預かれない、て言われた」

「お祖父さん?」

「その、俺のじいちゃん……教堂の……大地派の、祭主(さいしゅ)だったんだ」

「まあ」

「祭主!?」


 リーゼお姉ちゃんとコン兄ちゃん、びっくりしていました。そんなにすごいの?


「すげーなんてもんじゃねえ。大地派の、事実上のトップだ」


 大地派で一番偉いのは、神様の力を持つ「神の乙女」。

 でも特別な力を持つ人じゃないとなれないから、条件を満たす巫女がいないときは空位なんだって。


「だから『神の乙女』がいないときは、祭主が大地派の人をまとめてんだよ」


 ちなみに天輪派だと、祭主じゃなくて教父(きょうふ)、て呼ぶんだって。

 あれ?

 じゃあもしかして、ダイギョウ、て――。


代行(だいぎょう)は、種子派のトップよ。どこにいるのかはわからないけど、たぶんピエドラの街にいるだろう、て言われてるわ」


 ピエドラの街。

 そこって「魔王」が現れた、ずっと西の街だよね。私、そんな遠いところに連れて行かれそうになってたの? そんなの、一人で帰れないよ。ユウガくんが助けに来てくれて、本当によかった。


「なるほど。大体つながったわ」


 リーゼお姉ちゃんが、ふう、と息をつきました。


「ユウガくん、あなたはミラを守っている力に気付いた。それで、それをご両親に話した」

「うん。だって……あんな強力な守護、見たことなかったから」

「んで、その話を聞いたおめーのとーちゃんが、あのエロオヤジに話しちまった、てことか」


 強力な守護がついている女の子なら、強い魔力を持っているはず。

 ブルーノさんはそう考えて、私の誘拐を考えたんだろう、てコン兄ちゃんは言いました。

 え、でも――。


「私に、そんなものがついていたの?」


 でもリーゼお姉ちゃんが確かめてくれた時、何もついていない、て言ってなかった? コン兄ちゃんも確かめてくれたよね?

 うう、なんでなのか聞いてみたいけど、ユウガくんの前じゃ無理か。二人が元魔法使いの弟子、てことは秘密にする約束だし。


「なあ、聞いていいか」


 ユウガくんが、私を見て尋ねました。


「お前……ホントに見えてないの、あれ」


 ユウガくんが指差したのは、窓から見えるローワンの木。

 もしかして、精霊様そこにいるの?


「全然……見えない」

「マジで?」

「……うん」

「なんで?」


 なんで、て言われても。私、魔力全然ないから。


「嘘だろ? 魔力ないのに、あんな強力な守護がついてるのかよ」

「もしかしたら、前の店主……私のおばあ様が何かしたのかもね」


 リーゼお姉ちゃんが口をはさみました。


「実はおばあ様、魔法が使えたの。そのおばあ様に、王都に着いたらまずローワンの木に挨拶して、渡したリボンを枝に巻きなさい、て言われたわ。そうしたら精霊様が守ってくれるから、て」


 以上、公式設定です――て、お師匠様なら付け加えるんだろうな。


「ミラは、そのおこぼれにあずかってる、てとこじゃねーかな。んで、ミラが学校へ行くときは、どーにかしてついて行ってんじゃねーの?」


 何か心当たりがあるか、ていうコン兄ちゃんの視線。

 うん――ある。

 お守りのつもりで持ってた、ローワンの木の葉っぱ。あれしかないと思う。いつもエプロンのポケットに入れていたし。


「あー、あれか」

「昨日洗濯したエプロンにも入ってたわね」


 そういえば昨日は、朝ごはんの時にスープこぼしちゃって着替えたんだっけ。慌ててたから、お守りの葉っぱ、洗濯したエプロンに入れたままだったんだ。

 そっか、だからユウガくん「連れてきてない」って言ってたんだ。


「ひょっとして……学校に行ってるときは葉っぱで、家にいるときは本体で守る、て感じか」

「家を出るときに葉っぱに力を与えて、帰ってきたら回収、てところでしょうね」


 あ、二人が調べても気づかなかったのって、そういうこと?


「あの……」


 ユウガくんが、恐る恐るという感じで口をはさみました。


「お姉さんとお兄さんは、魔法が使えるんですか? 精霊様も見えているみたいだし、色々と詳しいみたいだけど」

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