表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の子  作者: おかやす
PR
22/26

22.ただいま

 少したって、警ら隊の人が駆け付けました。

 無人のはずのお屋敷から爆発音が聞こえる、て通報があったんだって。通報したの、若い女の人だったらしいんだけど――ひょっとして、リーゼお姉ちゃんかな。


「なるほど、種子派ですか」


 気絶したまま縛り上げられたグレゴールさんの服、その裾にある刺繍を見て、警ら隊の人もうんざりした顔をしていました。


「とにかく、妹さんがご無事で何よりでした。この二人はこちらで連行します」

「ええい、離せ、離さんか!」


 ちなみにブルーノさんも縛り上げられています。グレゴールさんがやっつけられたのを見て逃げ出そうとしたんだけど、コン兄ちゃんが捕まえて、ブルーノさんが持っていたロープで縛り上げたの。

 ちなみにそのロープは、私を縛るつもりで用意してたみたい。コン兄ちゃんが助けに来てくれて、ホントよかった。


「おのれ、私を誰だと思っている! こんなことをして、ただで済むと思うなよ!」

「うるせーなあ。殴って気絶させときゃよかったぜ」


 ギャーギャーわめくブルーノさんに、コン兄ちゃんもうんざりした顔をしていました。

 ほんと、うるさいよね。おーじょーぎわが悪い、てやつだね。


「おい、警ら隊! その小僧も共犯だ! 私を縛るなら、その小僧も縛り上げろ!」


 ブルーノさんが、ユウガくんを見てわめきました。警ら隊の隊長さんが、眉をひそめます。


「どういうことです?」

「さて。まだ詳しいこと聞いてねーんすわ」


 ユウガくんは、警ら隊の人が来る直前に気を失ってしまいました。めちゃくちゃな魔法の使い方をしたから力尽きたんだろう、てコン兄ちゃんが言ってました。


「でも俺が駆け付けた時には、妹を守ろうと、その二人相手に必死で戦ってたっすよ」

「ほう、勇敢な少年ですな」


 目が覚めたら警ら隊に連絡して、事情聴取を受けさせる。

 コン兄ちゃんはそう約束して、ユウガくんを(ニルヴァーナ)に連れて帰ることにしました。

 ユウガくんの家じゃなくていいのかな、て思ったけど――家の場所、知らないから仕方ないか。


「お嬢ちゃん、怖かっただろう。今日はゆっくり休むんだよ」

「はい」


 私も事情聴取を受けなきゃいけないけど、今日は帰っていい、て言われました。


「ではコンラートさん、よろしくお願いします」

「うっす。んじゃ、帰るぞミラ」


 コン兄ちゃんはユウガくんをおんぶすると、私の手を引いて歩き出しました。


 あ、そういえば。

 ベアテさんはどうしたんだろう。屋敷の中には――もういないよね。誘拐犯の仲間のはずなのに、私のことを守ろうとしてくれてたみたいで。お礼を言いたかったな。

 こんなこと思っちゃいけないんだろうけど――ベアテさん、無事に逃げてね。でももう二度と、こういうことはしないでね。


   ◇   ◇   ◇


「お帰り、ミラ」


 雑貨屋ニルヴァーナ――私の家に帰ってきたら、リーゼお姉ちゃんが優しい笑顔で出迎えてくれました。


「ただいま、リーゼお姉ちゃん」

「無事でよかったわ」

「……うん」


 リーゼお姉ちゃんが両手を広げて、抱きしめてくれました。

 ぎゅってされたら、涙がポロポロ出ました。ほっとするのと同時に、怖かった、て思いがこみ上げてきて――そのままリーゼお姉ちゃんに抱き着いて、しばらく泣いちゃいました。

 私が泣いている間に、コン兄ちゃんはユウガくんを自分の部屋に連れて行って、ベッドに寝かせていました。


「まるで起きる気配ねーな」

「限界以上に魔力を使ったせいね。回復には時間がかかるかも」


 魔力を限界以上に使うと、足りない魔力を補うために、体力を魔力に変換してしまうんだって。


「だから無理して使うと、命を落とすこともあるの。魔法の使いすぎは本当に危険なのよ」

「下手すりゃ二、三日起きねーかもな」


 ユウガくん、そんなに無茶していたの?

 どうしよう、私のせいだよね。私を助けるのに、無茶しちゃったんだよね。


「大丈夫よ、ミラ」


 オロオロしている私を見て、リーゼお姉ちゃんが優しく抱きしめてくれました。


「私たちがついているわ。ちょっと長く眠るだけ、心配しないで」


 リーゼお姉ちゃんがそう言うなら、大丈夫だよね。コン兄ちゃんもいるし、平気だよね。


「さ、ミラももう寝なさい。ユウガくんは、私たちがちゃんと看病しておくから」

「……うん」


   ◇   ◇   ◇


 夜が明けても、ユウガくんは目を覚ましませんでした。

 ぐっすりと眠ったままで、ちょっと熱も出ていました。すごく心配だけど、目を覚ますのを待つしかないんだって。


「ミラ、今日は学校を休みなさい」


 リーゼお姉ちゃんに言われて、私は学校を休みました。お店も臨時休業です。

 コン兄ちゃんは朝ごはんを食べ終えると、学校に休むことを伝えに行くついでに、警ら隊に顔を出してくる、と言って出かけていきました。

 学校を休んだし、ユウガくんの看病をしようかな、て思ってたんだけど、リーゼお姉ちゃんに止められました。


「ミラも、自分が思っている以上に疲れているはずよ。今日は一日寝てなさい」


 朝ごはんを食べたら、またベッドに逆戻りです。あんまり眠くないんだけどなあ。


「ユウガくん、大丈夫かな……」


 授業中はとっても親切にいろいろ教えてくれるのに、休み時間になると逃げるようにいなくなっちゃう。

 誘拐犯を手伝って私を誘拐させたくせに、危険を(かえり)みず助けに来てくれた。

 ユウガくんのことがよくわからない。ユウガくんに何があったんだろう。目を覚ましたら、色々とお話してくれるかな。


「ふわっ……」


 寝ころんでいろいろ考えていたら、急に眠くなってきました。あくびが出て、まぶたがどんどん重くなっていきます。

 なんだろ、さっきまですごく目が冴えていたのに。リーゼお姉ちゃんが言うとおり、私、疲れてるのかな。

 我慢できなくてベッドに寝ころびました。風が吹いているのか、ローワンの木がざわざわ鳴っているのが聞こえます。


「ローワンの木の、精霊様」


 ベッドでうとうととしながら、私はローワンの木の精霊にお祈りしました。


「ユウガくんが、早く目を覚まし……ます、ように……」


 そして、仲良くなれますように。

 そのお祈りは言葉にできないまま、私は眠ってしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ