表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の子  作者: おかやす
PR
21/26

21.圧倒

 だんっ!

 声がした門の方を見たとき、地面を蹴る音が聞こえました。


「なっ……」


 あれ、誰もいない――と思ったら、グレゴールさんのおどろく声。えっ、と思ってグレゴールさんの方を見たら。


「おらあっ!」


 コン兄ちゃんが、地面すれすれからものすごい勢いでアッパーパンチをするのが見えました。


「ぐぉっ!」


 グレゴールさん、避ける暇もありません。お腹にコン兄ちゃんのパンチをまともに食らって、そのまま吹き飛んでしまいました。


「ったく。子供相手になにしてんだ、てめーは」

「コン兄ちゃん!」


 やった、やったあ! コン兄ちゃんが来てくれた!


「ミラ、ケガはしてねえな?」

「うん……」


 あ、だめだ。涙が出てきちゃう。最後まで気を抜いちゃだめ、てお師匠様に言われてるのに。うう――コン兄ちゃん、怖かったよお。


「大丈夫、だよ。ユウガくんが、守ってくれたの」

「そうか」


 コン兄ちゃん、私の言葉にうなずくと、うずくまっているユウガくんを見ました。


「お前、無茶苦茶してんな。そんな戦い方してたら、死ぬぞ」

「俺の……」


 ユウガくんが、すごく苦しそうな声で言いました。


「俺のせい、だから……ミラを、絶対助けなくちゃ、て……だから、俺……」

「そーか、お前のせいか。なら後でお説教だな」


 そっけなく言うコン兄ちゃん。なんだか怖い感じだけど、これ怒ってないよ。


「でもま……ミラを守ってくれてありがとよ。あとは任せとけ」


 コン兄ちゃん、グレゴールさんとブルーノさんの方に向き直りました。

 お腹を押さえながら立ち上がるグレゴールさん。ブルーノさんも、ケガしている手を反対の手で握りながら、コン兄ちゃんをにらみます。


「若造……貴様は確か、雑貨屋の……」

「あぁん? 誰かと思ったら、王都に入るときに会ったエロオヤジじゃねーか」


 ペッ、て唾を吐いて、ブルーノさんをにらみつけるコン兄ちゃん。

 わー、ガラ悪い。助けに来てくれたヒーローには見えないよ。


「てめー種子派だったのかよ。えらそーに商売のコツとか語っといて、やってることは誘拐かよ」

「誘拐ではない。尊きお方の保護だ!」


 ブルーノさんが、さっと手を上げました。

 また門の上で何かが光って、稲妻みたいな光がコン兄ちゃんめがけて飛んできます。同時に、グレゴールさんがコン兄ちゃんに殴りかかってきます。


「あぶない!」


 私は思わず叫んじゃったけど。


「へっ」


 コン兄ちゃんは、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)って感じで笑いました。

 腰にぶら下げていた金槌を、ものすごい早業で手に取ります。そして――。


「食らうかよ」


 手に持った金槌で、飛んできた稲妻を叩き落してしまいました。


「な、なんだと!?」

「ぬうんっ!」


 グレゴールさんが全身を回転させながら突進してきました。

 ユウガくんが作った魔法のバリアを叩き壊しちゃった、すごいパンチ。あれが当たったら、さすがのコン兄ちゃんもケガしちゃうんじゃないか、て思ったけど。


「おらぁっ!」


 コン兄ちゃんは右足をはね上げて、足の裏でグレゴールさんの拳を受け止めてしまいました。


「ぬ……ぐぐぐっ!」


 グレゴールさんが真っ赤な顔をしています。きっと全力を出しているんだろうけど、コン兄ちゃんは片足一本で立ったまま、びくともしません。


「おいおい、どうした。それが全力かぁ?」

「おの……れえっ!」


 グレゴールさんが一歩引いて、また全身を回転させました。

 でも、コン兄ちゃんの方が速い!

 グレゴールさんが回転し終わる前に、コン兄ちゃんが鋭く回転して、グレゴールさんの後頭部に蹴りを叩き込みました。


「ぐおっ……」


 グレゴールさんが、顔から地面に叩きつけられました。

 うわー、まともにいった。あれは痛そう。でもユウガくんにひどいことした罰だよ。

 ふんだ、ざまーみろ!


「貴……様ぁ!」


 ブルーノさんがまた手を上げました。

 稲妻みたいな光が、今度は何個か飛んできます。でもコン兄ちゃんはめんどくさそうな顔をしただけ。「あらよっと!」て叫んで、全部金槌で叩き落しちゃいました。


「バカな! 魔法の矢だぞ! なぜそんな金槌で叩き落せる!」

「さーてな。おめーの魔法がヘタだからじゃねーの?」


 そういえばあの金槌、お師匠様が餞別(せんべつ)に、てくれたものだったような――魔法の力でも込められてるのかな?


「おっと」


 グレゴールさんが飛び起きながら、無言でコン兄ちゃんに殴りかかったけど。

 コン兄ちゃんはあっさりかわして、カウンターで回し蹴り。グレゴールさんはまた蹴り飛ばされて、地面に転がりました。


「なんだなんだ、二人がかりでこの程度かよ。クソ弱えぇな、おい!」

「強えぇ……」


 そんなコン兄ちゃんを見て、ユウガくんがつぶやきました。

 うん、コン兄ちゃんはとっても強いんだよ。だからもう安心だよ、ユウガくん。

 あ、でも。

 あのガラの悪さは見習っちゃだめだからね。


「若造……貴様、何者だ」


 ブルーノさんが怖い顔でにらんできました。コン兄ちゃん、また唾をペッて吐きます。


「誰がてめーみてえなクソ野郎(ロリコン)に教えるか」

「雑貨屋ニルヴァーナのお抱え職人、コンラート」


 コン兄ちゃんの代わりにそう言ったのは、蹴り飛ばされて倒れていたグレゴールさん。

 ゆっくりと起き上がって、服のほこりを払いました。


「その少女の兄、でしたな」

「へえ、まだ立つのかよ。頑丈なやつだぜ」

「なるほど、これほどの護衛がついているか。ブルーノよ、謝罪しよう。お前の言う通り、その少女こそが、あのお方の生まれ変わりかもしれぬ」

「あのお方の生まれ変わり? なんだそりゃ」


 コン兄ちゃん、ちょっと不思議そう。

 だよね、私も不思議。この人たち、私が勇者ラドミールの子だからじゃなくて、「あのお方」――たぶん「魔王」を封じ込めようとして、返り討ちにあった巫女――の生まれ変わりだから、誘拐したみたいなんだけど。

 なんでそう思ったんだろう。

 私、その巫女様に似ているの? でも二十年前に亡くなった人の顔なんて、ちゃんと覚えてるのかな?


「ブルーノの瞳は神授(しんじゅ)の瞳! その者の系譜をすべて見通す、奇跡の瞳なのだ!」


 グレゴールさんが大声で叫びました。


「魔力ゼロは何かの誤り。いや、それこそが悪しき者の目をくらますための、大地の精霊神の加護なのかも知れぬ! 代行(だいぎょう)様ならば、真実を見抜いてくださるであろう!」


 グレゴールさんがまた拳を構えました。


「若造、返してもらうぞ、そのお方を! そのお方こそ、我らが長年探し求めていたお方なのだ!」

「頭おかしーんじゃねーのか、お前」

「これは、精霊神が与えたもうた試練! お前を倒してあのお方を取り戻せとの、精霊神の御意志だ!」

「……」

「ぬおおおおおおっ!」


 あきれた顔で何も言わないコン兄ちゃんに向かって、グレゴールさんが雄たけびを上げて突進してきました。


「ご覧あれ、大地の精霊神よ! わが全力をもって、御子様をお救いしてみせますぞ!」

「つきあってらんねーぜ」


 グレゴールさんが、体を回転させてコン兄ちゃんに殴りかかりました。

 その拳を。

 コン兄ちゃんは、受け止めることも叩き落とすこともせず、ただそっと手を添えて、いなしてしまうと。


「もう寝ろ。クソ野郎」


 ドムッ、と強烈なパンチをグレゴールさんのみぞおちにめり込ませて、一撃で気絶させてしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ