変化
「ここはね、道路になってるけど、昔はお城を守る為のお堀だったんだよ」
「ほら見て。こことここ、石垣の積み方が違うでしょ?それぞれ、積み上げた時代が違うんだよ。火事とか地震で何度も崩れて、その度に修築されてるから、その場所によって色んな時代の石垣を見ることが出来るの」
「天守閣がないのは、火事で崩れ落ちた後、もう江戸時代で平和になってたからそこにお金をかけるのをやめたんだって」
門をくぐり、二の丸、三の丸、櫓なんかも見て回る私たち。
ここに来る前にちょっとお城のホームページで調べておいて良かった。
(会話が途切れなくて済むし)
「でね、ここは……」
「……すげー……」
目の前にドーンとそびえ立つ巨大な長屋を見上げながら、それまで私の話をじっと聞いてくれていたレンくんが声を上げた。
それでちょっと嬉しくなって、テンションが上がった私もレンくんを見上げる。
「そ、すげーでしょ!?あの白壁も綺麗だよねー!」
すると、そんな私に向き直って苦笑のレンくん。
「壁も綺麗だけど、マナさん!何でそんなに城に詳しいの!?」
ーーーそっか、そっちにビックリしたのね笑。
私、戦国マニアもちょっと入ってるしな。
ちょっとババくさいかな……?
ーーーとその時。
「もうっ、好きーーーっ!!!!」
その時、信じられないことが起こった。
なんと気が付いたら私は、レンくんの胸の中に抱きしめられていたのだ。
しかもギューーーッと力強く。
何が起こったか分からなくて、頭が真っ白になったのは一瞬の間か、それとも数秒の間か……
ボーッと(ポーっと?)して、その後に
(抱きしめられてるんだ私!今!レンくんに!)
やっと理解し、顔は真っ赤に、頭は爆発。
心臓はこんなに早くなるんだ?ってぐらい高速で打ち出す。
「れ、レンくん……?」
何秒か分からないけどのちに、やっと声が出た。
「あっ、ごめん!つい我慢出来なくなっちゃって……ごめんなさい!!」
パッと離れるレンくん。そして丁寧にお辞儀。
「本当、ごめんなさい!マナさんのこと、『大好き!』って思ったら気持ちが抑えきれなくて……でも困るよねマナさん。ごめん」
何か、意外だな……
グイグイ来るし、恥じらいもせず「好き」とかよく言うし、女の子慣れしてるんだろうなって思ってたけど……
真面目なところもあるんだな。
正直言うとちょっと警戒していたところもあったんだけど、何だか少し見直しちゃったような……。
「じゃあさ、今のお詫びに、今だけ!」
手を差し出す私。
(抱きしめたお詫びに、今だけ私と手を繋いで。恋人同士みたいに隣を歩いて。今だけ……)
口には出さない。
けど、心の中で呟いた。
そしてそんな気持ちを読み取ったのか何なのか、彼はそっと私の手を取った。
それからお城の周りの、現存するお堀を見て歩いたけど、暫くは二人とも黙ったままだった。
ただ、繋いだ手の温もりから、お互いの気持ちは伝わっていたように思う。
それまでとは違う、何かの感情が湧いたのを感じていた。
気持ちも、そして実際の二人の距離も、急速に縮まっていた。




