別れ
そんなこんなであっという間に夜も7時をまわり、喧騒の中、駅の新幹線の改札口で私たちは別れを惜しんでいた。
「じゃあね、レンくん。こっち来ることがあったらまたお茶でもしようね」
「うん、ありがと。マナさんはいつでも俺んち来ていいから!」
「分かった、分かった」
「あーっ、本気にしてないでしょ!?俺はいつだってマジだからね!マナさんが俺に『会いた〜い♡』ってなったら俺はいつだってウェルカムだから!」
「ハイハイ、電車来ちゃうよ、ほら早く!これ終電なんでしょ?帰れなくなっちゃうよ!」
しっしっと手のひらをヒラヒラさせる私。
私だって帰ってほしくはないけど……終電は逃せられないよね。
(明日バイトあるって言ってたし)
「……泊まっちゃおっかなー……帰りたくないし……マナさんと……」
チラリと視線を投げてくるレンくん。
もうっ!ドキドキさせないでよ!
(しかもそのセリフ何!?彼氏にお泊まりをせがむ女の子!?)
「ダメダメっ!早く行きなさーい!」
「はぁーーーい」
(うぅ……しょんぼりと子犬のような顔で見るのはやめなさい!)
「……じゃあ……本当に行くけどさ……」
彼は急に真面目な顔で改まって、私の正面に向き直る。
「さっき言ったこと、本当だから。マナさんが俺に『来て欲しい』って思ったらすぐ飛んで来るし、俺んとこにもいつでも来てよ」
「あ……うん。分かった……」
「俺さ、何か心配なんだよね。マナさんのこと。こんな歳下の奴が、何が出来るって訳でもないかもしれないけど……」
「……うん」
「いて欲しい時に、側にいることぐらいはさせてよ。ね?」
「うん、分かった……」
すると、レンくんの細くて長い指が、するりと私の髪に絡みついてきた。
緩く巻いた髪をかきあげるように。
最後にポンポン、と子供にするみたいに軽く叩く。
いつもなら
「子供扱いしない!」
って怒るところかもしれないけど、私も少し感傷的になっているのか、何も言えずに自分の足元に視線を落とすしか出来なかった。
あれ……やばい、泣きそうになっちゃう。
「じゃあね、マナさん!今日はどうもありがとうございました!またLINEするー!」
そんな雰囲気を打ち破るかのように、いつも通り元気な声で手を振りながら改札を通っていく彼。
私も笑顔で手を振りながら見送る。
お互いが見えなくなるまで、ずっと手を振りながら。精一杯の笑顔で……




