20
二日酔いではあったが、命が賭かっているので、私は筋トレに勤しむ事にした。
太ったら死、太ったら豚の餌だ。
そう思うならすぐに逃げ出せば良いと思うのだけれど、筋肉痛で長距離の移動は無理だと判断した。
心の中では、あれだけ一緒に楽しく飲めた魔物たちが、自分に危害を加える可能性を否定したい気持ちもあった。
だが、そんな甘い考えに溺れてはいけないのだ。
太ったら死、太ったら豚の餌。
呪文のように繰り返し、筋トレを始める。
腕立て伏せは1回もできないが、腹筋は3回できた。
それだけで動けなくなり、大の字になって空を見上げる。
ここは、いったいどこなんだろう?
私は生きて帰る事ができるんだろうか?
涙がこぼれた。
先程から足音には気付いていたが、そんな私を心配そうに、昨日のイケ豚が覗いていた。
頬にそっと、ごつごつとした指が当たる。
涙を拭ってくれているのだ。
イケ豚の顔を見ると、イケ豚は優しく私の頭を撫でた。
上体を起こして、彼に語り掛けてみた。
「私はアンジェラ。 アンジーって呼んで。 わかる? アンジー。 ア・ン・ジー」
自分を指さして言ってみるが、彼はふごふごぶひぶひとしか言わない。
「あなたの名前は?」
彼を指さして聞いてもふごふごとしか言わないので、とりあえず勝手に『フーゴ』と呼ぶ事にした。
私はフーゴに、先程自分に掛けられていた上着を返した。
フーゴは私のために、恐らく昨日の残りであろう、冷めた肉を持ってきてくれたのだ。
絶賛二日酔い中の私はそれを断ったが、フーゴは鼻息荒く首を横に振り、口を開けて指をさす。
食え、という事なのだろう。
無理に食べようとしたが、腹ペコだった昨日は気にならなかったが、その肉は獣臭く、脂はべっとりと固まり、二日酔いの私の腹筋を刺激した。
道の端に這いずり吐き始めた私の背中をフーゴがさすってくれた。
吐き終えた後、水魔法で手のひらに水を集め、うがいをしてから更に水を集めて飲んでいる私を見て、フーゴは目を輝かせた。
フーゴが私の手を取り、まじまじと見つめた後で、優しく手のひらに口づけ・・・・・・では無く、少し湿った鼻を擦り付け、ふごふごと臭いを嗅いでくる。
私は再度水を集め、その手のひらをフーゴの前に差し出すと、彼は美味しそうにその水を飲んだ。
フーゴが満面の笑みを浮かべたので、私も嬉しくなった。
その後、フーゴは私が食べられなかった肉を、腰に下げている袋に戻すと、私の手を取って立ち上がった。
どこかに連れて行こうとしているようで、その方角を指さしている。
私は筋肉痛で動けなかったので首を横に振ると、フーゴはフゴォォッと鼻息を吐いた後、私をお姫様抱っこした。
前世、今世込みで、初お姫様抱っこだ!
厚い胸板に頬を寄せ・・・・・・たいとも思ったが、獣臭かったので、ただひたすらに進行方向に目を向ける。
真っ青な海が見えました。
ここら辺は海沿いの村だったようです。
途中、昨日一緒に飲んだ女性オーク達が棒をもって鹿のような獣を追っているのを見かけた。
あれは何をやっているのか、と聞いても、フーゴにはやはり通じなかったようで、首を傾げている。
いや、しかし、首を縦に振る、横に振る、傾げる、という動作は、今まで勝手にこういう意味だろうと決めつけてしまっていたが、果たして本当にそうなのだろうか?
フーゴに関しては、手招きさえしていた。
少なくとも手招きに関しては同じ意味だと思えるし、なんとなく今まで通じていた。
このオーク達は、もしかして人と関わっていたのでは?
聞きたいが、聞くすべがない。 言語の壁。
考えているうちに、女性オーク達が鹿を仕留めた。
フーゴの胸をトントン、と叩き、下に降ろしてくれるようにジェスチャーで伝える。
やはり理解してくれたようで、私を優しく地面に降ろしてくれた。
砂地に、指で絵を描いてみる。
女性オーク、鹿を追いかける、鹿を殴る、倒れた鹿、マンガ肉。
それを見てフーゴはフガフガ笑いながら、棒の絵を描いた。 そこに矢じりの絵を付けたし、ぐるぐると付け根を何度もほじくった(多分紐のようなもので結んだと言いたいのだろう)後、自分に指を向けて誇らしげに胸を反らす。
撲殺では無く、刺殺。 そしてその武器を作ったのは俺だ! と、自慢しているのだろう。
そしてフーゴは、稚拙ではあったが、筋骨隆々な女性オークの絵を描き、その足元に踏みつけられている男性オークの絵を描いた。
それから私を指さし、ジェスチャーで
「おまえは、おっぱい、があるのに、腕、足、棒。 やれやれ、使い物にならねえぜ」
と伝えてきたのだ。
恐らく人間の男性に対して「お前、キン〇マついてんのか」という類の罵倒なのではないだろうか。
オークは、ライオンのように、女性が狩猟をする種族なのでしょうか。
いえ、これっぽっちも悔しく無いです。
その後にフーゴは、『俺、お前、守る』みたいなジェスチャーをしてくれました。
それが、『俺、お前、食う』 で無い事を祈ります。
フーゴはまた私をお姫様抱っこして、森の奥に連れて行ってくれました。
そこはなんと! 一面の花畑。
そっと私を地面に降ろした後、その花を一輪、私に差し出します。
これは……
見たことがあります。パンジー。
花言葉は「私を思って」とかだったと思います。
が、オークが花言葉を解しているとは思えません。
そのような文化があったとしても、人間の考える花言葉とは別の意味ではないでしょうか。
という事は、これはどういう意味なのか。
前世の知識を総動員し、閃きました!!
「ありがとう」
フーゴからパンジーを受け取り、むしゃむしゃと食べました。
ちょっと苦いです。
ですが、昨夜は肉ばかり食べたので、やはりここは草的な物も摂取すべきでしょう。
しゃがみ込み、パンジーを次々に毟っては食べ、毟っては食べ。むしゃむしゃ。
花びらだけだと苦みはそんなに気になりません。
再度お礼を言おうとフーゴを見上げると、なんだか少し悲しそうな顔をしていました。
先月から入院中です!今日は転院のため一時帰宅中。
書いてあった分だけ見直しもせずにUPしちゃいます。
これからちょこっと手術したりするので、しばらく更新できません(いつもの事か?)ごめんなさい。
1月中はちょっと無理かな~~~




