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すみません、すごく期間が開いてしまいました。
そして未だに予定している本編に入れないという体たらく(;´∀`)
休み休み学校へと向かいます。
エイミーが用意してくれた紅茶は飲み干してしまったけれど、新しい護衛は野営のプロという事だったので、休憩の度に火を起こし、お湯を沸かしてもらって温かい紅茶を飲みました。
水はもちろん、その度に私が魔法で出します。
ティーポットや茶葉などはエイミーがちゃんと護衛に持たせてくれてました。
魔法を使うと疲れてしまうので、尚更休憩が増えます。
そのうち、ぼちぼちと馬車に乗った生徒が登校し始めました。
まだ時間に余裕はあるのですが、私はとある理由で余裕が無くなりました。
ええ。 水分を摂りすぎたのです。
私の水を操る魔法は、体内の水分を使用するのではなく、大気中の水分を使用するのです。
やろうと思えば体内の水分も調整できるとは思うのですが、失敗したら命に関わるので、今までにチャレンジした事はありません。
「さあ、私達も急ぎますわよ!」
立ち上がった途端、カシャン、と音がしました。
それが、メガネの最期の言葉でした。
私の膝から滑り落ち、儚くも砕け散ってしまったのです。
短いお付き合いでした。
あぁ、メガネ、貴方の事は忘れませんわ。
フレームを握りしめ、粉々に砕け散ったレンズの欠片を魔法で洗い流し、道の端に追いやります。
魔力の使い過ぎでフラフラになりながらも、身体に振動を与えない程度の全速力で学校に向かいました。
生理的限界よりも、肉体的限界よりも、背後に迫って来ている集団登校の一団のほうが問題です。
先頭でスペアメガネが光り輝いています。
なんとか学園の敷地内に辿り着き、すぐさま木陰に隠れて護衛に指示を出します。
幸い、ここいらで貴族御用達のメガネ屋と言えば2~3軒程度。
リチャードのようなド近眼が使うメガネは魔石使用なので、対象は1店舗に絞れます。
魔石使わないと、ガラスだとレンズがすごい厚さになりますものね。
というか、本当は魔石さえあればメガネいらねんじゃね? という話なのですが、そこはそれ。 メガネは重要アイテムです。 メガネ男子最高!
「今日中にリチャードさんのメガネを直してもらってちょうだい。 フレームも魔石も壊れてないから、できるはずよ! 通常の倍払うから、と言ってねじ込みなさい。 限度は5倍まで。 それ以上欲張るようなら、お父様の名前を出しなさい」
一月分のお小遣いを全部渡す。 領民のみなさん、無駄遣いしてごめんなさい。
いつか薄い本で稼いで領地を潤します。
護衛をメガネ屋に向かわせ、校門から校舎までの道のりを急いで歩いている間に、ついに集団登校の一団に追いつかれた。
『やあ、アンジー。 追いついたよ』
「えっと、あ、アンジー? はは、なんか照れちゃうな。 メガネはちゃんと君の力になれたかな? 僕もやっぱりメガネがいないとちょっと不安だったよ。 さあ、メガネ、帰っておいで」
いきなり声色を使い分けて話すリチャードを、ほかの生徒が不思議そうな顔をして見ている。
でもすみません、私今、それどころじゃないんです。
「あ、ご、ごめんなさい、スペアにリチャード。 あの、私、あの、メガネ、は、もうちょっと、待って。 もう少し、だけ、一緒に……」
尿意を我慢できず、ふるふると震えながら涙目で上目遣いにリチャードを見つめてから、走ってトイレへと向かう。
「え? アンジー、君達、まさかもうそんな関係に?!」
どんな関係だよ。
なんとかトイレに間に合い、久々に授業を受けた。 が、朝から歩いて、更に魔力を使ったせいか、疲れ果てて意識を失っていたようだ。
3日後から学科試験なのだけれど、元々成績が良いわけでも無いし、いくら成績が悪くても、余程素行が悪くなければ退学になる事も無い。
所詮、貴族の子息の出会いの場でしかないのだ。
たまに治癒者や冒険者として名を上げる人達もいるらしいけれど、そういうのってもう、生まれ持っての才能だ。
でも、私もやっと自分のやりたい事がわかってきたから、それに向けて頑張ろうと決意しました。
薄い本作成。
この世界には小説や絵本はあっても漫画は無いし、アンティークドール系はあってもフィギュアは無いし、前世パクりでそこらへんの事をやっていきたい。
そして、BL本作成。
ええ、眠っている時であっても、私は時間を無駄にしているわけではないのです。
先程の授業中にはとてもいいアイデアになる夢を見ていたはずです。
ええっと、確か……メガネの、フレーム受け、レンズ攻め?
そんな話を頭の中で展開していると、昼食時にまとわりついてくる梅ちゃんやジークフリート王子とその取り巻きも気になりません。
いつの間にかリチャードさんも同席して、裏声で話していましたが、まったく気になりません。
クルっと90度首を巡らせたときに、なぜかちょっと離れた席に居ながらもこちらを凝視していて、目が合った途端にガタガタと震えだしたエイリーク王子もこれっぽっちも気になりません。
あ、でもエイリーク王子はフレーム役のモデルとしていいかもしれない。 レンズ役はリチャードさんだとかなり落ち着いた感じに、ジークフリート王子だとリバありな感じになるかも。
そんな目で見ていたら、エイリーク王子は椅子から転げ落ち、這いずって食堂から逃げて行きました。
後姿を目に焼き付けます。 いい腰の動き。 さすが私の中での総受けキャラナンバーワンです。
放課後、護衛がメガネを持ってきたので、生徒会室へと向かいました。
護衛は5倍の値段を払ったようです。
リチャードさんにメガネを返すと、彼はメガネをまぶしそうに見つめました。
「恋を、知ったんだな。 朝と違って、すごく輝いているよ、お前」と呟きながら。
レンズ新しくなったからな。
リチャードさんが人払いをした後で、私に跪き、手の甲にキスをして言いました。
「アンジー。 僕は伯爵家の三男坊で、貴女は侯爵家の令嬢。 本来であれば、僕が跡継ぎであればまだしも、到底結ばれることの無い関係だったでしょう。 ですが、メガネと貴女が相思相愛になった今、僕は思うのです。 僕はメガネの付属品ではありますが、メガネとは長年苦楽を共にし、もはや一心同体なのです。 貴女とメガネの恋を成就させる方法が、一つあります。 僕と結婚してください!」
何を言っているのでしょう。
「リチャード、恋とは移ろうものですわ。 メガネと私はもう終わりましたの」
毅然とした態度で言い切り、生徒会室を後にした。
背後ではリチャードさんがメガネと語り合う声が微かに聞こえる。
「やはりかなわぬ恋なのか。 メガネ、お前は潔く身を引くつもりなのか?」
「だよな、諦められるわけがないよな。 大丈夫だ、僕も応援するよ!」
その後しばらくの間、私はメガネのストーカーに悩まされる事になる。
教壇の片隅に密かに置かれているメガネ。
学園の門柱の上に密かに置かれているメガネ。
寮の門の柵に引っかけられているメガネ。
道具箱の中にいつの間にか入れられていたメガネ。
私宛の郵便物の中に紛れ込むメガネ。
食堂で注文した料理の皿の上に、パスタに和えられたメガネ。
リチャードさんに叩きつけて割ってやりました。
メガネは恋に生き、恋に狂い、恋に死んだのです。




