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第56話 クラブ活動の勧め


ケン=マッケンジーがウルルス高専の3年生になってから1週間が経った。

いままでの2年間が何だったのかというくらい、クラスメイト達とは普通に話が出来ているし、上級生から無視される事も少なくなっている。

なんとも極端な話だが、ウルルス高専の学生はそれだけ愛校心が強くて、ルールや伝統を重んじるのだろう。


ケンの場合で言うなら、

『能力値強化の授業を受けられない者は、ウルルス高専の生徒とは認められない。

いままでの慣例や退学せざるを得なかった友人達の事を思うと、彼にどんな事情があったとしてもそれだけは曲げられない。

でも、3年目からはその授業はなくなる。

彼がこれまでの2年間、すごく頑張っていたのは知っている。

そこまでして学校に残る気があるのなら、能力値強化を受けていなくても、これからはウルルス高専の仲間だ』という感じだろう。


実にプライドが高くて偉そうだが、ウルルス高専生はそれだけの努力しているし、それに見合う力を持っている。

例えば、ケンの表向きの最大魔力値1212は、ウルルス高専の3年以上の生徒達の中では下の方であり、上位は1500を軽く超える。


ちなみに現在、ウルルス高専生の最大魔力値のトップは、ケンの友人であるハイド=ノワールで、1880である。

彼は、まだ魔力体が安定していないし、しばらくの間は自然増加も見込めるので、卒業までには2000近い数字になる可能性さえある。

もちろん、才能が優れていても、人のわざである魔術を使いこなすには努力が必要なのは言うまでも無いが。(文末参照1)



そのような事情で、順調にウルルス高専の3年目が始まったケンは、昼休みに午後の学科授業の予習をしていた。

3年8組には4人のクラスメイトが残っているが、勉強をしているのは彼だけだ。


3年以降の学科授業は、ほとんどが応用に時間がかれている。

頭が良い人なら、予習をしなくても授業中だけで対応出来るが、そうでなければ彼のように前もって応用問題をこなさないと対応出来ないのだ。

彼が、疑問点や質問点をノートにチェックし終わると、それを待っていたかのように友人のハイドが声をかけてくる。


「ケン、ちょっと話せるか?」

「いいよ、ちょうど今一区切りついたとこだ」


ケンが顔を上げてそう答えると、ハイドは彼の横の席に座る。

昼休みは、後15分は残っている。


「君はクラブ活動はどうする? まさか入らないのか?」

「入らないよ。それより、この問題が解らん。教えてくれ」


ウルルス高専では、3年になるとクラブ活動への参加が認められる。

1、2年の間は、能力値強化で皆体調が悪いので、それどころではないのだ。


「これは、この公式を代入するんだ。

…それより、3年生は全員がクラブに所属する必要がある。

何せ、学生数が少ないからな」


3年以上の生徒数は、180名程度だ。

5年の後期になると、クラブに参加する生徒はいなくなるので、実質は2年半の活動期間になる。


「…僕は帰宅部希望。

だいたいそれって、校則で決まってないただの慣例だろ。

だったら、時間を取られたくないよ」


「その慣例に、2年間苦労してきた奴がよく言う。

それに、何でわざわざ反感を買う必要がある?

ほとんど活動していないクラブもあるから、そこに所属している方が目を付けられないぞ」


「それって、賢いやり方かもしれないけど好きじゃない。

僕の場合、今さら目を付けられても不都合は無いしな」


ハイドは、苦笑しつつもケンの意見には理解を示す。

ただ、あまり利口な話では無いので、違う提案をする。


「相変わらずケンは面白い。君が決める事だから好きにすればいいが、今日の放課後にクラブ活動の説明会があるから、それだけでも参加して見たらどうだ?」

「…今日はダメだな。家庭教師の先生と約束があるんだ」

「それは驚いたな。家庭教師を付けているなら、もう少し学科の成績が上がりそうなものだが」

「へいへい、どうせ僕は馬鹿だよ。それで、天才のハイドは、クラブ活動はもう決めたのか?」


ケンとしては話題を変えるつもりで言った質問だ。

だが、わざわざクラブ活動について質問するという事は、少し興味が出てきた証拠だろう。

元々彼は、活動的な性格をしている。

それに対するハイドの返事は意外な物だった。


「俺はクラブ活動はしない。今期から生徒会の手伝いをする事になった。

ちょうど欠員が出たからサブメンバーとして生徒会の一員になる。

それがクラブ活動と言ってもいいかもしれないな」


「…ハイド、これ以上評価を上げてどうするんだ?

確か、生徒会のメンバーは成績が1割アップされるはずだよな?」


ハイドはすばやく防音結界魔術を行使する。

ケンが驚いていると、厳しい口調でハイドは問いかける。


「ケン、何でそれを知っている? 一般学生は知らないはずだ」

「そうなの? まあ、僕は職員室にずっと出入りしていたから、どっかで小耳にはさんだんだよ」


キュンメ先輩との関係は、ハイドにも内緒にしている。

もう、ウルルス高専を卒業したとはいえ、彼女の信奉者は多い。

それに、彼もそうでないかとケンは考えている。

生徒会にわざわざ入るのも、そのせいかもしれないのだ。

ハイドは、ケンの説明に一応筋が通っていると思ったのか、それ以上は追及するつもりはないようだ。


「…まあいい。ともかく、口外するなよ。

それと、誤解のないように説明しておこう。

特例として、半年間生徒会に所属すれば、卒業までの成績アップが教師達から認められているんだ。

実習や教練の成績とは関係なく、魔術学を含めた学科の定期試験点数の1割アップだ。

それを知られると、生徒会の正規メンバーの元に希望者が殺到しかねない。

実はかなり以前に、進級が難しい生徒の間で、かなりのもめ事があってから完全に秘密にされているんだ。

だから、ケンがそれをばらすと、間違いなく問題になる」


ケンはキュンメ先輩に内心で文句を言う。

それならそうと言ってくれればいいのに、きっとわざと説明しなかったのだろう。

ケンに自分の提案を断られた意趣返いしゅがえしかもしれない。


「…それは知らなかったよ。

わざわざ君が防音結界魔術まで使った意味が分かったよ。

でも、そんなルールおかしいよな?

生徒会をやめたら、そんな特典は必要ないだろ?」


「普通は、最低でも1年間は生徒会に所属するものなんだ。

そうすると、どうしても成績に影響してくる。

特に、選挙で選ばれないサブメンバーは、あくまでも手伝いだから成り手が少ないし卒業後の評価も低い。

ただでさえ生徒数が少ないのに、希望者がいなくなると困るから苦肉の策だそうだ」


ここの学生達はプライドが高くて論理的で理知的だから、せめて打算的な事でもない限り、下働きをする人はいないのだろう。

なんとも世知辛い話だが、ケンはその理由が嫌でもよく分かった。

ウルルス高専をどうしても卒業したい落第ギリギリの学生なら、3年になってすぐ半年間だけお勤めして、後は学業に集中すればいいのだ。

エリート校は相対評価じゃないから、成績の1割アップは大きいはずだ。


「…なるほど、了解した。もう結界を解除していいよ」


ハイドは、素早く防音結界魔術を解除する。

彼としては普通にやっているのだろうが、実に見事な腕で、特にその速度は鍛えているケンより速いかもしれない。

周りの音が聞こえ始めると、ハイドは先程の話の続きをする。


「ともかく、クラブ活動には参加するようにな。

暇なクラブに籍を入れておくだけでもいい。

納得出来ないかもしれないが、たった2年半だけの辛抱だ」


「ああ、考えておくよ。…ところで、君は生徒会長を目指すのか?

今の会長の任期は後4カ月程だよな」


「それは、生徒会の実情を見て決める。

もし続けるなら、トップを狙うのは当然だから立候補するけどな」


「なるほどなぁ、相変わらず前向きな性格だ。頑張りたまえよ、ハイド君」


「何を偉そうに、おまえこそ頑張れ。

それと、俺が会長になったらサブメンバーを頼みたい。

その場合は、クラブ活動を控えてもらう事になるが、生徒会は半年間でやめていい。

その後に復帰すればいいから、例の件も含めて君にぴったりだ。

せいぜいこき使ってやるから、恩にきる必要は無いぞ」


キュンメ先輩に続いて、まさかハイドからも生徒会に誘われるとは思っていなかったので、ケンは直ぐにはどうするかを決められなかった。

素直に感謝したい気持ちはあるが、雑用にこき使われるのは本当だろう。

馬鹿にされてはいないが、間違いなく下に見られているのもいい気はしない。

実際はともかく、ウルルス高専内ではその通りだから、悔しくても言い返せないが。


「君がお節介焼きだとは知っていたけど、そんな話になるなんて思ってなかったよ。

…僕ってそんなに頼りないかな?

…待て、答えは聞くまでも無いから、黙ってていいよ」


「君が客観的に自分を見れる人で良かったよ。…それで、返事は?」


「魅力的な提案だけど、僕って生徒会って柄じゃないと思うよ。悪い風に有名だから、ハイドに迷惑をかけるかもしれないしな」


「じゃあ問題無いな。俺が会長になったらよろしく頼む」


「…おい。何でそうなる?」


「俺のギフトの派生能力は知っているだろう? ケンが生徒会活動に興味を持っている事は解っているんだ。だから、はっきり断らないお前が悪い。あきらめて俺を手伝え」


あきらめろと言われて素直に頷くケンではないが、それが前向きの提案であるなら話は別だ。

それに、ハイドの言うように生徒会活動にも興味があるし、彼と一緒なのも心強い。

何より、友人が自分の為を思って言ってくれているのだから、なおさら断る理由は無いだろう。


「…言っとくけど半年間だけだぞ。僕の場合は、本当に落第しかねないんだからな」


「言われるまでも無い。じゃあ約束だ」


ハイドは右手を差し出す。

ケンは、握手を交わす前に更に確認する。


「ハイドが生徒会に興味が無くなったり、選挙に落選したら約束は無しだからな」

「前の条件はともかく、俺が落選するだって? ありえないよケン=マッケンジー」


ハイドはケンの差し出した右手を強く握りしめる。

世話焼きで、保守的で、プライドの高くて自信家なところが、彼の長所である。

普通なら短所になる所も、彼ほどの能力の持ち主ならそうはならない。

それなのに非論理的な事が好きな彼は、ケンから見れば論理的な変人だ。

2人の手が離れると、ハイドは椅子から立ち上がって、自分の席に帰って行く。


(クラブ活動と生徒会か…。面白そうだけど、修業に影響が出るだろうな。一応ヨシト先生に相談してみよう)


クラブ活動はともかく、生徒会は確実に時間を取られる。

半年間とはいえ、修業に問題が出ないかヨシトに確認すべきだろう。


―――――――――――――――――――――――――


放課後、ケンはクラブ活動の説明会には参加せず、ウルルス高専を出てから、予定通りネオジャンヌ西門に向かう。

今日の放課後は、ヨシトと一緒に魔術の修業をする貴重な時間なのだ。

西門の手前でヨシトと落ち合うと、そのまま2人で門を出て、街から10kmほど離れた修業場所に向かう。

修業場所といっても単なる原っぱであるが、低い山影にあるので街からは見えない場所だ。


その場所までは歩いて行くのではなく、飛翔魔術を行使して飛んでいく。

飛翔魔術は、飛行魔術と違ってベクトルを操る物なので非常に難しい魔術である。

更に、ヨシトが教えた飛翔魔術は改良版で、空気を二重の物理結界にして纏い、低騒音で飛べるハイブリッド版なので、並列思考による魔術の行使が必要だ。

これが使えるだけでも、2人が相当の術者である事が分かる。

時速200kmほどの速さで空を飛ぶと、数分で修業場所に到着する。


着いた途端に、ヨシトの叱責が飛ぶ。

修業の間は、彼は鬼である。


「大気の干渉を防ぐ為の外側の物理結界の制御が下手だな。だからスピードが出せないんだぞ。もう2年以上教えてるんだから、そろそろスキル化出来てもいいはずだ」


無茶な要求だが、不可能ではないのだろう。

それだけ、ケンに期待しているともいえる。


「簡単に言わないでください。

飛翔は一応最上級魔術ですよ。

普通ならスキル化に100年近くかかる魔術です。

まあ、先生に底上げしてもらったから、多分半年以内にはスキル化出来ますけど」


「それは甘いぞ、飛翔魔術は、構築の仕方を変えてもらう。

頭の出来はどうにもならないが、ケンの魔蔵の能力は上がっているんだから、ベクトル操作の部分を単独の思考で行使するように」


ヨシトの厳しい要求に、ケンは驚く。

構築の仕方を変えるならば、スキル化するにはさらに時間がかかる。


「ちょっと先生、それじゃあ個人集合魔術を使うなって事ですか。それに、1からでは無いですけどやり方を変える訳ですから、成人までにスキル化出来ないかもしれません」


ヨシトはその疑問に対して、自分の見解を示す。


「そうだ、これからは簡単な最上級魔術は、個人集合魔術を使うな。

並列思考を5つ全部使うなんて思考の無駄使いだ。

物理結界2つとベクトル操作、合わせて3つに思考を抑えられれば2つ余裕が空く。

つまり、不意打ちに対応出来るって訳だ。

それに、難しい最上級魔術以外なら、5つ同時に行使出来るくらいケンの思考力は上がっている。

それぐらい魔蔵や能力値の強化は上手く行ったんだからな。

だから、レア魔術と難しい最上級魔術以外は、個人集合魔術を使用禁止にする」


「簡単な最上級魔術って言葉はおかしいですよね?

…そりゃ、先生に強化してもらったおかげで、最上級魔術の半分くらいを単独思考で行使出来るようになった事は感謝しています。

でも、構築にすごく時間がかかりますし、すごく疲れます。

理屈は解りますけど、個人集合魔術を使う方が楽なんです。

それに、今までのスキル化への努力が無駄になるみたいで、ちょっと納得出来ないです」


「それでもやるんだ。ケンの強みは、並列思考の多さと思考力が落ちない事だ。

だから、個人集合魔術を使うと、せっかくの利点が失われる。

確かに成人までにスキル化出来る最上級魔術の数は減るだろうが、長い目で見ると絶対にお得だ。

構築に時間がかかる点は、スキル化すれば解消する。

ケンは自由魔素の親和性が高いから、魔術の上達も人よりずっと速い。

これからも修業を欠かさなければ、後3年もしないうちに有効性を実感できるはずだ。

…いいか、あせるなケン。

せっかく2年間死ぬ思いまでして手に入れた力だ。

有効に使う事を心掛けろ」


「…はい、了解しました。あせるとろくな事が無いですもんね」


ケンが神妙に頷いたのを確認してから、ヨシトは雰囲気を変えるように元気な声を出す。


「…よし、まずはレア魔術の修業だ。いつものように移送魔術から始める。

さすがにこれは個人集合魔術を使うしかないが、並列思考の数を減らせないか?」


これも無茶な注文だ。

それでもケンは、真剣に考えてみる。


「今4つ使ってますけど、3つにですか?

…ちょっと出来る気がしません。

一つはどうしても魔術陣の統合制御に使いますし、移送結界は単独の思考では構築出来ません。

後は移送ロードの形成ですけど、思念波と思考波の違いがありますから不可能だと思います」


これは、ケンの話に突っ込む余地は無い。

ヨシトも解って言ったのだろう。

ほぼ不可能な事を無理強むりじいするつもりはない。。


「…仕方ないな。考えたら2つの思考で大きな移送結界が簡単に造れた事自体が、自由魔素との親和性が高い恩恵だし、これ以上絞るのは無理か。

まあ、ケンの頭じゃレア系の魔術はどうしようも無い部分があるからな。

だけど、自由魔素を多く使う魔術は別として、ケンはこれから出来るだけ思考数を抑える努力をするんだぞ」


「はい、2回も頭が悪いと言われてむかつきますけど、了解しました」


「じゃあ、移送魔術を行使してみろ。今は移送距離は150kmが精一杯だったな。少しでも距離を伸ばすぞ」


「はい、これだけは絶対スキル化します。冒険には絶対必要ですから」



こんな感じで激しい修業は始まった。

日が暮れるまでの間に、ケンの身体魔素は尽きていた。

いわば、MPゼロの状態だ。

もちろん、魔力体の維持に最低限必要な身体魔素は残っているので、体がだるいだけで何の問題も無い。


日が沈む直前の、夕焼け空の下の原っぱの真ん中で、師弟は座って休憩している。

ネオジャンヌに帰る為に、最低限必要な身体魔素の回復をケンがしているのだ。

彼は、4、5時間もあれば身体魔素が全回復するので、飛翔魔術をつかう程度ならすぐに溜まり、日が沈む前には街に帰れるだろう。

その間を利用して、ケンは今日のお昼にハイドと話した、クラブ活動や生徒会の参加についてヨシトに相談する。

一通りの話を聞き終わると、ヨシトは腕を組んでうんうんと頷く。


「いやぁ~、青春してるね。若いって素晴らしい。

修業は予定以上に進んでいるから、時間を取られても半年程度なら大丈夫だ。

それに、生徒会の手伝いの途中でも、並列思考を使って思考プログラムの修業をすればいいから、時間は無駄にはならないよ。

クラブも生徒会も、どんどん参加しなさい」


「…ホント、おっさんくさいですね。

それに、生徒会活動は本当にただの雑用係ですよ。

でも、先生がそう言うなら、どこかのクラブに参加してみます」


「ああ、学校での生徒会活動とかクラブ活動とかは、ライトノベルの王道展開だな。

これでヒロインが出てくれば完璧だ」


「先生と違って、僕の前世はそんな小説なんて読んでません。

高校時代は、完全に体育会系でしたよ。

バスケット部のエースだったから結構モテましたよ。

小説なんて読まなくても彼女もいましたしね」


「そんなケンに、女っけのない高校時代を過ごしたオタクとして、素敵な日本語を送ろう。

『リア充、爆発しろ!』」


「なんですそれ? …ああ、なるほど。『リアルが充実』って意味ですか。

本当に、何の意味も無い知識を僕は詰め込まれていますよね。

だいたい、人が爆発なんてしないでしょうに」


「地球じゃそうだが、ここではやろうと思えば出来るぞ。

身体魔素を一気に爆発させたら、人間爆弾の出来上がりだ」


「それって単なる自殺ですよね。

そんな先生に、僕もピッタリな日本語を思い付きました。

『いじめ、カッコ悪い』」


なんだかんだ言っていても、2人は楽しそうだ。

もう、2年半以上の付き合いなのだから、仲がいいのは間違いない。


ともかくこれで、ヨシトの許可も下りた。

ケンとしては、思いがけず学生生活を満喫する機会を手に入れた訳だ。

ウルルス高専の3年生になって、新たな展開が始まる…、かもしれない。




設定及び解説

(1)最大魔力値についての補足

以前に書いたように、最大魔力値は魔術の才能を測る代表的な指標です。

ただ、魔術の実力を見る場合は、あくまでも目安程度にしかなりません。

ゲームのMPのような物ですが、簡単に補う方法もあります。

例えば、魔黄白金や魔石等を身に付ければ、そこに最大魔力値と同等の身体魔素を貯められます。


ちなみに、魔黄白金や魔石は自由魔素を貯められる物質だと設定しています。

身体魔素は強固に意志付けされた自由魔素です。

体から離れると意志付けは弱くなりますので、最大魔力値以上は蓄積出来ないと設定しています。

例え体内に埋め込んでも、体の一部ではありませんので、それは同様です。


そもそも、最大魔力値が800以上あれば、日常生活で魔力が枯渇する心配はありません。

職業で魔術を多用する人であっても、魔道具や魔術機械を使えば魔素燃料で代用出来ますから大して困りません。

戦闘職とか、魔素消費が激しいレア魔術やオリジナル魔術を使う人以外は、人間族が最大魔力値を伸ばす行為は自己満足とさえ言ってもいいと思います。


それでは、何故ウルルス高専生がそこまでこだわるかといえば、最大魔力値が魔術の知能指数に近い性質を持つからです。

魔術の良し悪しは、威力、制御力、影響範囲と距離、緻密さや正確さ、構築速度、行使回数や継続時間、身体魔素消費量の軽減等の要素があります。

それぞれに対して、能力の指標がありますが、その才能が総合的に現れるのが最大魔力値なのです。

思考力の優秀さと魔蔵が持つ支配力や情報力や制御力が総合的に現れるといってもいいでしょう。


思考力の優秀さとは、個人の持つ魔素親和性による意思付けの範囲や量や速度。

思考力そのものが届く範囲や、その強度や魔術操作の正確さ。

術者の個性の違いによる、天然魔素の変化の量や質の違い等です。

そのような術者それぞれが持つ、基本的な才能が現れるのが最大魔力値です。


つまり、最大魔力値を見れば、個人の持つ総合的な魔術の才能がおおよそ分かります。

ですから、最大魔力値を人間族相手に聞く行為は、地球人で言うと、

「君の知能指数とスポーツテストの結果はいくつ?」というのと同じ意味です。

エリートにとっては、最大魔力値が高いというのはステイタスなんです。


もちろん、才能があるからといって、努力しなければ難しい魔術を使う事など出来ません。

魔術知識の理解は当然として、魔術の訓練も必要です。

具体的に言うと、1000以上はある魔術の基本式を全て暗記して、それを組み合わせて魔術陣を構築したり、高等技術である思考補助プログラムを自分に合うように調整して魔力野で起動したりする訳ですから、かなり鍛えたり、自分の能力を見極める必要があります。

魔術はイメージでなんて使えない、才能や努力が必要な人の業なのです。



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