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第46話 ウッドヤット家の午後の来客


ケン=マッケンジーがウッドヤット家に下宿し始めてから4カ月が過ぎようとしていた。

厳しい修行や受験勉強で毎日が戦争の様だったが、少しは心に余裕も出て来た頃だ。


肉体の強化は順調に進んでいる。

彼の師匠であるヨシト=ウッドヤットの説明によると、人間族の場合は獣人族の傭兵みたいに肉体を鉄の様な強度には出来ないが、体力的には肩を並べるくらいには出来るそうだ。

これにより、素手で殴り合わなければ、接近戦でも並の獣人族の傭兵と渡り合える力を持てるらしい。

『能力値を伸ばすよりは簡単だ。体型の見た目も変わらないから都合がいい』との事。


その一方で、魔術関係の能力値はそれほど伸びていない。

彼の魔蔵は幼い頃に強化されているので、更なる強化には時間がかかるという説明をヨシトからされている。

何せ、急にやり過ぎると死にかねないのだから、以前ヨシトから言われたように2,3年がかりで鍛えて行くしかないのだろう。


魔術については、冒険や戦闘に必要な物をスキル化するのが目標だ。

しかしながら、普通なら簡単な魔術でもスキル化するまでには早くても数年はかかる。

ケンの修業期間は5年間なので、これは一見無謀な計画に思える。

だが、ヨシトの得意技である魔力体の同調による経験の底上げを行った為に、すでに10歳とは思えないほどのレベルになっていて、ケンの魔術の腕は劇的に上がっていた。

ただし、この方法は数回やると効果がなくなるので、後はケン自身が修行するしかない。


『スキル化までの時間は、4分の1程度に短縮できる。

俺達は魔力体の相性が良いから、ここまで短縮出来るんだ。

俺の元で20年分の修業が出来るケンは、運がいいって訳だな。

それに自由魔素との親和性が良いから、スキル化するまでの時間が短くて済む。

だから、成人までに最低50種類以上の魔術のスキル化を目標とする』


ヨシト先生がそう請け負ってくれているから、彼は疑いもせず必死で魔術の修業を続けている。

ただし、目下の課題は、約1カ月後にある高校入試を突破する事だ。

ケンの志望校は、魔術系高校であるウルルス高専とムライ高校だ。

決めるまでには色々と悩んで、姉の様に普通科高校を選択する事も考えた。

レベルの高さだけでいうなら、医療系の高校も考えられた。


だが、普通科高校は将来の道を決めている彼には不向きな上に、エリート校のウルルス高専の超劣化版ともいえる。

医療系の高校の場合は専門的になり過ぎるので、資格を取る目的が無いケンにとっては、それほど行く意味が無い。

それなら総合的に高い経験が積める学校が良いと判断して、第一志望をウルルス高専、すべり止めにムライ高校を選択したのだ。


しかし、ウルルス高専に合格するかどうかは微妙な所である。

ケンの知能は悪くはないが、相手は国内最難関の高校であり、志望者が多い割には定員数が少ないのだ。

今年の8月入学では50人しか定員枠が無い。

志望者は200人以上いるので、狭き門と言えるだろう。


今日も朝から、ウルルス高専の過去入試問題や問題集を必死で解いているが、結果はそれほど良くはなかった。

ヨシト先生が言うには、

『ケンは、素直すぎる。だから、ひっかけ問題に簡単に引っ掛かる。

でも、一度引っ掛かったら二度と間違わないから、数をこなせば上達する。

応用問題は…、まあ、人には向き不向きがあるよな』


腹が立ったので、応用問題にも力を入れて勉強している。

ヨシト先生を見返すつもりで頑張ってはいるのだが、なかなか上達しない。

それに、エリート校志望はヨシトに会う前から決めていた事なので、いくら以前と比べて大して行く意味がなくなったとしても、再び決意したからには簡単にはあきらめたくはなかった。


ただし、今日は予備校が休みな上にヨシトが朝から外出しているので、解らない問題は後回しにして、帰って来てから質問するしかない。

彼の性格からいって、これは思った以上にストレスがかかる。

だから、仕方が無しにひっかけ問題を中心に解いているのだが、何だか逃げ出すようで気分が悪い。


もちろん、相変わらず体調も悪い。

体重は元に戻りつつあるが、頭痛もするし、体がだるくて痛くてしょうがない。

ケンは健康には自信があったしタフだったから、4カ月以上も続くこの状態が地獄の戦闘訓練よりも辛かった。

しかもこの状態が、まだ2年近く続くというのだから気が滅入る。

ただでさえ受験でのストレスがあるので、どうにもならない体調の事はあまり考えない様にしている。


(『ケセラセラ』、きっとそのうち慣れる。だから大丈夫だ)

そう楽観的に思い込むようにしているが、たまに切羽詰まって気が狂いそうになるので、そんな時は魔術を思いっきりぶっ放してストレス解消している状態だ。

こんな無茶な修行をしているケンだが、全ては自分で決めた事だから立ち止まる気もあきらめるつもりも無い。



姉のマリとヨシトが別れて以降も、週に一度、彼女とは魔道具造りの修業が終わった後に、必ず会っている。

2階の作業場の一室を借りて話す事もあるが、けじめを付ける為に外に出て話す場合が多い。

マリとヨシトが別れた後、初めて喫茶店で会った時にケンは突然に自分から切り出した。


『お姉ちゃん、僕、謝らないから』

『いったい何の事?』

『お姉ちゃんとヨシト先生が別れた事』

『…初めてケンちゃんを殴りたくなったわ』


これはケンが悪いが、マリはそれほど気にしていないようだ。

逆にケンは、すごく気にしているからこんな事を言ったのだろう。

その証拠に、次にケンから出てきた言葉は彼なりの精一杯の提案だった。


『僕は5年後に旅に出るから、その後に恋人に戻ったら?』

マリは首を振って、ほんの少し悲しげに微笑む。


『私は、もう新しい恋人を探す事に決めたのよ。

それに5年じゃ無くて、100年後の事を考えて今は修行しているの。

だから私は頑張れるの。

これは全部ケンちゃんのおかげだから、気にしなくていいのよ。

ケンちゃんは、自分の事だけ考えて頑張りなさい』


マリは、相変わらず将来を見据みすえて努力を続けているようだ。

彼女はゾンメル教徒であり、周りには心優しい家族がいる。

今は例え辛くても、何も心配はいらないだろう。

その中の大切な1人であるケンは、愛嬌のある顔で姉に話しかける。


『…よく解らないけど、お姉ちゃんが元気ならいいや』

『ケンちゃんは良い子ね。…そうだ、私が受験勉強を教えてあげようか?』

『うん、ありがとうお姉ちゃん』

兄弟仲は、色々あったにもかかわらず問題無い様である。


マリはヨシトと別れた後、一切いっさいウッドヤット家の住居部分には立ち寄らない。

だから今は、わざわざ駅前にある小さな貸し部屋を1時間1000ギルで借りて、ヨシトが忙しい時にケンの受験勉強を教えてくれている。

しかし、彼女はケンの家庭教師としては不合格だった。


『お姉ちゃん、この問題が解らない』

『どれどれ、……ケンちゃんが、何が解らないか解らないわ』

『お姉ちゃんは、家庭教師のアルバイトをしてたんでしょ? 何でそんなに教えるのが下手なの?』

『だって、私の生徒達は、これくらいの問題は教えなくても出来たわよ』

『…頭の良い奴なんて、みんな嫌いだ!』

『私は、ケンちゃんの事が大好きよ』


…まあ、兄弟仲は間違いなく良いのだろう。

そんな感じで、ケンは充実した日々を過ごしていた。

後はウルルス高専に合格出来れば、何も言う事はないはずだ。




そんな休日のお昼過ぎくらいに、3階の住居スペースの入り口のベルが鳴る。

ちょうどその時、昼食を終えたばかりのケンは、食堂の後片付けを終えたばかりだった。

一瞬、どうしようかと思ったが、内弟子である自分が応対しても問題は無いだろう。


ケンは、「はーい」と返事をしてから、3階の玄関に行きドアを開ける。

ドアの向こうにいたのは、金髪碧眼きんぱつへきがんの人間族の女性だった。

清楚な感じのする美人だが、少し不機嫌な様子に見える。

彼女は少し驚いた様な表情で、ケンに問い掛ける。


「ヨシト=ウッドヤットさんは、ご在宅ですか?」

「いいえ、外出しています」

「…そう、仕方無いわね。あなたはお手伝いさんか何か?」

「いいえ、僕は内弟子です」


その女性は、珍しい者を見るようにケンを眺める。

それからようやく表情を軟らかくして、姿勢を正して右手を差し出した。


「私は、ルシア=アドバンスといいます。ヨシトから聞いてない?」


握手を交わしながらケンは考える。

その名前をヨシトから聞いた事があったが、不機嫌な様子の彼女を警戒して、念のため慎重に返事をする。


「もしかして、パートナーの方ですか? プレイのお約束をされているなら、どうぞ上がってお待ちください」


普通なら、この程度の事は失礼には当たらない。

だが、ルシアは不機嫌な表情に戻ってしまった。


「違います。・・・全く、ヨシトったらどんな話をしているのかしら?」


どうやら、間違いないようだ。

何で機嫌が悪いかは解らないが。


「すいません。初対面だったからかまをかけてみました。先生は意外に敵が多いですから」


それを聞いたルシアは、更に不機嫌になる。


「…あのねぇ、いくら内弟子だからといって、師匠の悪い所まで真似する必要はないのよ。いくらなんでも、白昼堂々スパイを送り込むなんてあり得ないわ」


そう言うと彼女は身分証明書を取り出してケンに見せる。

ケンは、ヨシトがルシアの人柄を親しみを込めて話していた事を思い出す。


金髪碧眼きんぱつへきがんで、正義感が強くて感情豊か。

ミリア教の準司祭で、潔癖けっぺきな性格。

ヨシトにとっては、家族同然の大切な人。

彼から聞いていた通りの人物の様だ。


「どうぞ上がってください。

ヨシト先生は、もうすぐ帰ってくると思いますので」


彼女は、少しだけ思案する。


「わかったわ、お邪魔させてもらうわね」


そう言って、靴を脱いでからスリッパに履き替えて真っ直ぐに居間に向かう。

これだけでも、彼女が何度もこの場所に来ている事が分かる。

ケンは黙って、彼女の後ろに付いて行った。



ルシアにソファーに座るように勧めて、ケンはキッチンで紅茶の用意をする。

「おかまいなく」と彼女は言うが、これは内弟子としては当たり前の行為なので、構わずに作業を続ける。

彼女の前のテーブルの上に、紅茶のティーカップを置くと、

「ありがとう。良いお弟子さんね」と声をかけてくる。


「ヨシト先生からは不肖の弟子って言われてますけどね」


ケンが冗談交じりにそう言うと、

「そんな訳無いわよ。ヨシトは見込みのない子を弟子に取ったりなんかしません」

と真顔で答えてくる。

どうやらあまり冗談は通じないようだ。

最も、不肖の弟子と言われているのは本当だが。


「それにしても驚いたわ。私がネオジャンヌにいない間に、色々あったみたいね」

彼女は、カップに口を付けずに紅茶香りをそのまま楽しんでいる。


(少しは、気持ちが落ち着きますように)

ケンはそう思い、明るく話しかける。


「アドバンスさんは、どれくらいネオジャンヌを離れていたんですか?」

「呼び方はルシアでいいわよ。ヨシトの内弟子ならそうしなさい」

ケンが、「了解しました」と頷くのを見て、ルシアは質問に答える。


「ネオジャンヌは半年ぶりよ。今回は長かったわ」

それなら、ケンが会っていなくても当然だろう。


「僕は、4か月くらい前に弟子なったんです。ルシアさんが知らなくても当然です」

「…そうなんだ。いくらお勤めとはいえ、あまり長いのは困ったものね」

彼女は小さく溜息をつき、それから紅茶に口を付ける。


「…美味しいわ。これも師匠直伝って訳なの?」

「見よう見まねです。お茶入れは弟子の基本ですから」

「…そういえば、まだ君の名前を聞いてなかったわね」

ルシアのうっかり者の性格は、相変わらずなようだ。


その時、玄関の扉が開く音が聞こえる。

ケンは、「失礼します」と言ってから玄関に向かう。

そして、居間の出口の扉の前で彼女に振り返ると「ケンです。そう呼んでください」と言い残し、その場を後にして急いで玄関に向かう。


3階玄関口で、彼は靴を履き替えているヨシトを出迎える。

いくら内弟子でも普通はそんな事はしないが、今回は特別だ。

黙って近寄り、彼の耳元で素早く小声でささやく。


「ルシアさんが来てます。不機嫌です」


ヨシトは少しだけ表情を崩すと、「わかった」とだけ言って、廊下を抜けて居間に向かう。

これで役目は済んだ訳だが、この後の展開が気になったケンはヨシトの後に付いて行く。

ヨシトは、ソファーに座るルシアの顔を見ると、胸に手を当てて声をかける。


「ルシアさん、ただいま。半年ぶりですね」

「いいから、そこに座りなさい!」


問答無用である。

ルシアの澄んだ声は、明らかに怒りを含んでいた。

ヨシトは神妙な面持ちで、ルシアの向かい側のソファーに腰掛ける。

それを確認すると、彼女は怒りを抑えて話し始める。


「一体どういう事なの?」

「…はぁ、何がですか?」

「とぼけるのはやめなさい。あなたなら、私が怒っている理由なんて説明しなくても分かるはずです」


彼は、困った顔で黙り込む。

予想は付いてはいるが、あまり言いたくは無い。

その様子を見て、ルシアの目がつり上がる。

ソファーから少し身を乗り出し、強い口調で言い放つ。


「何で、あんないい子と別れたの、理由を言いなさい、この、ヘタレ虫!」


すでにヨシトは人間ではないようだ。

少しタジタジになりながら、ヨシトは手を振って誤魔化そうとする。


「いや、それは、話すと長くなるというか…」

「言い訳は聞きたくありません! だいたいあなたは、難しい事を色々と考え過ぎなのよ」


((理由を聞きたいのか、聞きたくないのかどっちだよ!))

ケンとヨシトは仲良く心の中で突っ込むが、もし聞けば「両方よ」とルシアは答えるに違いない。

何より、今の彼女には逆らわない方がいいだろう。


ケンはヨシトの答えに俄然興味がわく。

自分も、姉とヨシトが別れた理由が今一つ納得出来なかったからだ。

例え自分のせいで別れたとしても、修行が終わって出て行った後なら何の問題ないはずだから、付き合い直せばいいとケンは単純に考えていた。

だが、ヨシトならばともかく、マリまで恋人を探しているという。

それならば、表向きの理由以外の別の理由があるはずだ。


だが今までそうは思っていても、ケンはルシアのようにこれほどストレートには聞けなかった。

間違いなく、自分に責任のある事なのだから。

だからケンは、ヨシトとルシアの話の続きを居間の隅でこっそりと聞く事に決めた。



そんな弟子の心を知ってか知らずか、ヨシトはとりあえず黙秘もくひしている。

彼はこういう大事な事で、建前論や嘘を言う気はなかった。

目の前の人は、彼にとってのかけがえのない人で、話す内容は大切な人と別れた事情なのだから尚更だ。

その事情は、ケンの居る前では話せない。


だが、ルシアは一歩も引くつもりはなかった。

彼女は、悔しくて悲しくてたまらなかったのだ。

彼が一番つらい時に、そばで支えてあげられなかったから。

そして納得出来なかったから、ケンがいる事など忘れて本音を話す。


「あなたの事情を知っている人は少ないわ。

特に恋愛について話せる女性は、私かリンダさんくらいしかいないでしょうね。

…リンダさんには相談したの?」


ヨシトは首を横に振る。

今回の件では、彼女は全く関係していない。


「まさか、あなたの生い立ちや秘密が関係しているの?」

「いいえ、マリには全て話してました。何の関係ありません」


それを聞くとルシアは少し安心して、完全に怒りは治まったようだ。

それなら普通の恋愛関係の終わりだから、ヨシトの傷も浅いだろう。

深刻ではないなら、普通の恋愛相談で済む訳だから口が軽くなるのも仕方が無い。


「あなたは、マリさんと付き合い始めてからすごく幸せそうだった。

半年前に会った時は、別れるなんて考えつきもしなかったわ。

何があったか知らないけど、やり直せないの?」


ここまで言えるのは、彼女だからこそだろう。

ヨシトもそれは解っているし、ありがたくは思う。

だが、今更やり直しは無い。

それは単なる後戻りで、引き返せない道を進む事だから。


「…少なくても今は無理です。お互いが話し合って決めたんです」


「…事情を話してくれない? 相談に乗れるかもしれない。

無理だとしても、少しは気が晴れるでしょ?」


ヨシトは溜息をつくと、首を横に振って否定する。


「彼女とは、今でも週に一度は師匠と弟子として会っています。

以前とは、また違った関係になっただけです。

それに、もう俺にもマリにも新しいパートナーがいます。

出来れば、お互いに新しい恋人を探したいとも話しています。

だから、これでいいんです」


彼との付き合いが長いルシアは、その様子を見て直感する。

2人が彼女が思っていたよりもずっと深く愛し合っていた事に気付いたのだ。

だから、ケンがいる事も忘れて、つい口が滑る。


「冷却期間を置けば済む話じゃないの? そこまでする必要はないわ。

お互いが深く愛し合ってるのは罪じゃないのよ。

…確かに、結婚は早すぎる。 あなたはともかくマリさんがね。

でも、いくらなんでも、あなた達は自分に厳しすぎるわ」


ここまで言われると、ケンも気付いてしまった。

ヨシトが自分の家庭教師を引き受けるつもりだったのは、冷却期間を置く為だった事を。

そして、自分のわがままな要求が結婚まで視野に入っていた恋人達を無理矢理引き裂いてしまった事実を。

だから、たまらずに居間の隅から飛び出して口をはさむ。


「ルシアさん、僕の名前はケン=マッケンジーです。

そして、マリ=マッケンジーの弟です」


ルシアは、完全に存在を忘れていたケンから声をかけられひどくあわてるが、その言葉の意味を理解すると、ヨシトに向かって尋ねる。


「どういう事なのか説明なさい。推測は出来るけど、あなたの口から直接聞きたいわ」


さすがにヨシトは観念する。

ここまで知られたら、誤解のないようにはっきりと言った方がいいだろう。


ルシアには、完全に気持ちの整理がついた後なら、自分から話すつもりだった。

そもそも、マリとの事をルシアから聞かれれば答えるつもりでいた。

それに、一番隠しておきたかった秘密は、もうケンにばれてしまった。

もう何一つ隠す必要は無いだろう。


「ルシアさん、心配させてすいません。今から…」

『キンコーン』という音が居間に響く。

ヨシトが話し始めた時に、再び3階の玄関のベルが鳴ったのだ。

話の腰を折られた気がして、ヨシトは再び黙り込む。


いくら休日の午後とはいえ、予定も無いのに立て続けの来客なんて珍しい。

ヨシトにとっては都合が良いのか悪いのかは解らないが、カンの鋭い彼が微妙な表情をしているので、あまりいい予感はしないのだろう。

はたして、ルシア=アドバンスの次にウッドヤット家を突然訪れた来客は、この話し合いにどういった影響をもたらすのだろうか?

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