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第43話 ウッドヤット家の朝の風景


ケン=マッケンジーの朝は早い。

目覚まし時計が無くても、日が昇る30分前には起きてすぐに活動を開始する。

まずは、ゲストルームの1階部分にある洗面所に行き、冷たい水で顔を洗う。


ケンは鏡に映った自分の顔を見る。

かなりげっそりと、やつれているように見える。

彼の体調は最悪だった。

この2カ月で、体重は5kg近くも落ちている。

頭はガンガンと痛むし、体もだるくて思うように動かせない。


非常にタフであるはずのケンがこうなったのには訳がある。

彼がヨシトの家に来てから続けている、異常な修行のせいである。


「うぅー、頭の中がぐちゃぐちゃだ。寝る前の転写魔術はきついな~」

彼は、ヨシトから転写魔術の説明を受けた時の事を思い出す。



『ケン、本を読んで知識を身に付けるなんて効率の悪い事しなくていいから』

『じゃあ、どうやって覚えるんですか?』

『頭に直接書き込むのさ。『コンピューターのデータコピー』の様にね』

『そんなこと出来るんですか?』

『普通は出来ないけど、俺の造った魔道具を使えば出来る。まあ、ケンがやるのは少し危険だけどな』


ヨシトの説明によると、人間族の脳の仕組みは獣人族とかなり違っていて、特に記憶に関しては、シナプス結合の組み合わせによる物だけでは無く、ハードディスクのようにデータ保存された部分が新たに脳に作られるそうだ。

人間族が暗記が得意なのは、その脳の仕組みによるものらしい。


普通ならば魔術を使うか、かなり集中してゆっくりと繰り返して覚えないとその記憶の仕方は出来ないそうなのだが、一度覚えた事は忘れようとしない限りは忘れない。

しかも、記憶の整理をしないと上書きされてしまう可能性があるので、タグ付けしたり、分類分けしたりして記憶を最適化デフラグする必要があり、思ったより手間がかかる作業となってしまう。


ちなみに、記憶力には個人差があるので、集中もせず一度見ただけで覚えられる人もいる。

普通そんな事が出来るのは、『記憶術』ギフト持ちだけだ。

そこまですごくはないが、魔力野で思考プログラムを組んで記憶力を促進する記憶術魔術(思考補助プログラム)も存在する。

人間族の頭脳は、コンピューターの仕組みと共通する部分がある訳だ。


つまり、理論的にはその部分をコピー出来れば、記憶の転写が出来そうだが、人は機械ではないのでそう簡単にはいかない。

人の持つ思考力は一人一人違うので、PCパソコンに例えるなら、記憶のフォーマット形式から書き込み方や読みだし方まで全て違い、無理にくっつけても理解出来ないらしい。


ただし例外もあり、精霊族の中には思考や記憶の共有が出来る種族がいて、彼らの記憶は規格の統一されたフォーマット形式を持っているらしい。

その人達が使っている魔術が転写魔術なんだそうだ。

『君が知っている、水精族もそうだよ』とヨシトが言う。

そういえば、ノッコがそんな話をしていたのを思い出す。


精霊族は、脳の中でハードディスクのように記憶の取りつけが出来る。

だから、思考を共有してから転写魔術を使うと、記憶を簡単にコピー出来るらしい。

でもこれは、思考の共有が出来ない人間族には、不可能な技である。

それを解決する為に造ったのが、ヨシトの開発した魔道具である。


難しい理屈はケンには解らないが、要するにPCの外付けハードディスクその物であり、魔道具内に記録されたデーターを転写魔術を使って頭に詰め込む事が出来るそうだ。

名前は記憶魔道具というネーミングセンスの無い物で、ヨシト専用に造られたから、ケンが使うには、かなり微妙な調整が必要である。


『俺とケンとは思考力が違うから、ちょっと辛いはずだ。

ひどい場合は発狂するけど、転写速度を落とせば大丈夫。

寝る前に転写すると効果が上がるよ。

分かりやすく言うと、寝てる間に記憶が整理されて、分類付けやタグ付けされるんだ。

だから、一度覚えた知識はネット検索する様に記憶から取り出せる。

ケンには、俺が覚えている知識を中心に頭に詰め込んでもらう予定だ。

多分、知識だけなら高齢者にも負けなくなるはずだ。

何だ、不安か? そんなに心配しなくても、人間族の脳は記憶限界が無いから覚えれば覚えるだけ知識は増える。

まあ、一度に扱える量は大した事ないがな』(文末参照1)


その夜に早速やってみたが、ケンは全然平気だった。

頭の中で、意味不明な記憶が暴れ回るのは、前世の記憶で慣れっこだったからだ。

ケンがその話をすると、『じゃあ、転写速度を上げてみようか。死にそうになったら言いなよ』と無茶な事を言うヨシト先生。


それでも、様子を見ながら慎重に速度を上げていたようだが、ケンが平気そうなので次第に速度が上がり、ついには最高速度での転写が行われる。

3時間くらいで、魔道具に記憶されていたデーターが全てケンの頭の中に転写された。


『いやぁ、最低でも50時間はかかると思っていたのに、3時間で終わるなんて予想外だな』

『……』

『今の情報量は、百科事典でいうと多分100冊分くらいはある』

『……』

『どうしたんだ? 気分でも悪いのか』

『オゲェー!』


ケンは口から血を吐いて、ぶっ倒れた。

思考力の微妙なズレと異常なストレスにより、内臓がひどいダメージを受けて、消化器から多量に出血したのだ。

すぐにヨシトが治療して回復したが、一つ間違えたら死ぬところだった。


人間族は、心臓が止まったり、体から全部の血が抜けても半日くらいは生きられるが、ショックで魔蔵がマヒすると魔力体を維持できず、1時間足らずで死んでしまう。

もっとも、魔蔵が一時的に止まる程度なら、ヨシトが蘇生させてしまうだろうが。


『どうも、思考力パターンの調整が今一つだったようだ。

この魔道具は、俺の思考力に合わせて造ったから、長く使うとケンの魔力体に悪影響を与えるみたいだな。

他人の思考力を完全に解析するのは不可能だと分かったはいたんだが、ケンがあんまり平気そうなんで、ちょっと調子に乗りすぎた。

…どうする? もうやめようか?』


ケンは首を横に振って答える。

『1時間くらいは何ともなかったんです。

でも、それからだんだん気分が悪くなって、気が付くと我慢できなくなってました。

でも、頭の中にはしっかりと記憶が残っています。

多分、一日読む本の百倍以上は入っています。

だから、絶対続けたいです』


2人はどうするべきか話し合う。

結局、ヨシトは魔道具をケンに合うように更に改良し、落ち着くまでは常に付き添う。

ケンは魔道具使用中は、常に医療機械に繋がれて体調のチェックを受け、少しでも気分が悪い時には中止する。

使用時間は、1日1時間までとされ、転送速度も半分までに制限された。


それからは大きな事故も無く、記憶魔道具も日々改善されているようだが、それでも少しは影響が残る。

頭の中に、無理矢理記憶を詰め込んでいるのだから当然だろう。



ケンは朝の支度を終えると、練習着に服を着替え、ゲストルームから出る。

外階段に繋がる4階出口から外に出ると、階段を下りて歩道の上に立つ。

これからするのは、魔力体と肉体をなじませて更に鍛える訓練だ。

まだ太陽が昇ったばかりのネオジャンヌの町をゆっくりと時間をかけて歩く。


この訓練も、ヨシトの指示による物だ。

『人間族の場合は、獣人族のように筋繊維が太くなって力が強くなる事は無い。

簡単に言うと、筋肉の質が変化するんだ。

魔力体に肉体をなじませるだけでも鍛えられるが、それだけでは獣人族には及ばないからちょっと特別な方法を使う。

肉体強化薬を使って体質を変える肉体改造をすると同時に、効率的なトレーニングで肉体を魔力体になじませ相互補完を行う。

トレーニングする際の注意点は、思念波を使って魔力体を動かし、明確な上達意思を持って指示通りに正確に鍛える事だ。

トレーニング方法は記憶の中にあるから予習しておく事。

初日は横に付いてやり方を教えるけど、後は自分でやるように。

肉体が変化してきたら、本格的な体力強化をやる予定だが、今は気にしなくていい』


そのアドバイスを思い出し、ケンは呼吸法に気を付けながら、思念波を使って肉体より先に魔力体を動かす。

今のトレーニング部位は、一部のインナーマッスルと呼吸器だ。

このゆっくりとした歩き方でも、慣れないケンの肉体は悲鳴を上げる。


ケンの肉体は、いま生まれ変わろうとしている。

体重が落ちている主な原因は、肉体が一時的に破壊されているからだ。

ヨシトは厳選した強化薬を調合し、更には魔道具や魔術機械まで利用して、ケンの肉体や魔蔵に複雑な負荷をかけて、魔力体の密度を一時的に上げる事により、強靭な体を作っている最中なのだ。


もちろん肉体の強化と同時に、魔蔵の強化も行なっているので、魔術関係の伸びる能力値は効率よく上げられるはずだ。

ヨシトは、徐々に負荷を高めて行って、普通ならショック死しかねないほどの強化をケンにしている。

地球人に例えるなら、常に心臓を締め付けられる痛みがケンを襲っている事になる。

ケンの優れた回復力と強くなりたいという信念が無ければ、1日だって耐えられる物ではないだろう。


もちろんこれは危険な行為であり、長期間に渡り細心の注意が必要であるので、誰もが出来る事では無い。

実際ヨシトは、1日2回はケンを念入りに診察して、細かい調整を行っている。

寿命を削る事無く、能力値を大きく伸ばすにはこうするしかないのだ。

また、あくまでも本人の資質の限界以上は伸びないので、強化人間の様に桁外れの力を持つ事は出来ない。

これらの事をケンに説明した後に、ヨシトは目標を設定する。


『ケンの場合は、すでに魔蔵が強化されているから、最大魔力値なら2000が目安だろうな。

魔力体が安定するまでの、この2、3年が勝負だと思う。

まあ、しんどいのも2、3年の我慢だと思って頑張る事だな』


最大魔力値2000といえば、姉のマリに匹敵する。

恐らく天才とは言えない人間族では限界に近い数値だ。

数値だけ見れば、並の人間族の2,3人分程度しかないが、それ以上の恩恵もある。

代表的なのは、寿命が少し伸びる事や、体力や魔蔵の思考力の強化等だろう。

その対価は、これから2年は続く体全身を襲う倦怠感や痛みや違和感である。

ヨシトが先生だからそれで済んでいるだけで、普通は命がけである。


30分かけて家に戻ってくると、シャワーで汗を流してから部屋に戻って受験勉強をする。

これももちろん、ヨシトのアドバイスうを聞いて必死に勉強している。


『ケンは、エリート校以外は楽勝だから、基礎問題をやる必要ない。

点数を稼ぐには、応用問題は後回しにする。

ひっかけ問題だけの問題集があるから、それを解くように。

答えと一緒に、問題作成者の意図も書くんだ。

つまり、相手をだまそうとしている人の考えを読み取れ』


ケンは、朝食までの時間を机に向かい、並列思考を使って問題集を解いていく。

だが、なかなかひっかけの部分が解らない。

まだまだ時間がかかりそうだ。


朝食の時間になると、3階の食堂に下りて行く。

最近ケンは、1日3食は食べている。


『体を作り変えるには、最低でも半年はかかる。

それまでは、きっちり食事を取るように。そうしないと、肉体が持たないよ』


これも、ヨシトの指示である。

だから、体が受け付けなくても出来る限り食べるようにしている。


3階のキッチンでは、ヨシトが料理をしている。

彼の料理は、速くて豪華で何より美味しい。

ケンも、修行の後半にはその技術を教えてもらう事になっている。


「おはようございます、ヨシト先生」

「ああ、おはよう。すぐに出来るから。おっと、その前に朝の診察を済ませよう」

「はい」

ヨシトは、ケンの手を握ると30秒足らずで診察を終える。


「…異常無し。相変わらずケンはタフだな。普通なら、そう簡単には回復しないはずなんだが」

「先生に言われても、褒められている気がしません」

「いいから食堂で待ってなさい。すぐに行くから」


普通じゃないヨシトから見れば、ケンは足元にも及ばないレベルだ。

だからこそケンは彼の指示をよく聞き、厳しい修業に耐えているのだ。



それからすぐに食事が始まる。

食時の時間は、日本語を使って話す事にしている。

つまり、前世の記憶のすり合わせをやっているのだ。


『僕の前世は、勉強が苦手です』

ケンの日本語はカタコトだ。


『なあ、健一君。日本語を教えようか?』

ヨシトの日本語は完璧である。


『いりません。今はたくさんです』

だが、ヨシトはあきらめない。


『実は、記憶魔道具の中に、日本語の情報を入れておいた。キーワードは、≪日本の科学力は世界一≫だ』


ケンは頭の中でキーワードを検索する。

その記憶にアクセスすると、どうやら非常に高度な翻訳魔術のプログラムが組まれているみたいで、ケンの日本語の知識が補完されていく。(文末参照2)

そういえば、この一週間、ヨシトが2階の研究室で何かやっていたのを思い出し、呆れ果てる。


『…先生は腐れオタクですね。こんな手間のかかる事をしたって、僕以外には使えないでしょうに』

流暢りゅうちょうな日本語で話すケン。

どうやら、かなり怒っているようだ。


『いや、そう言うがな、ケンに会う前から日本語の翻訳魔術は造っていたんだ。

ほら、石川啄木の短歌にもあるだろ、≪ふるさとの、なまりなつかし≫ってやつが。

せっかくだから、使ってみたいじゃないか』


『その短歌の意味が解っちゃうのが、逆にむかつきますね。

一発ぐらい殴ったって、女神様も許してくれそうなくらいです』


『思わずやってしまったが、後悔はしていない。

まあ、お詫びと言ってはなんだが、獣人語の翻訳魔術プログラムを造ってやるから勘弁してくれ。

俺の記憶を元にして代表的な3種類の獣人語を覚えさせてやるから、少し訓練すればかなり流暢にしゃべれるはずだ』


勝手に希望以外の知識を詰め込まれたのだから、ケンが怒るのも無理は無い。

この世界で日本語をマスターしたって意味は無いのだから完全にヨシトが悪い。

だが、世界を回るのに獣人語は必要なので、ケンは妥協する事にした。


『それで、今日の予定はどうなってるんです? 僕は、予備校に行った方がいいですか?』

ケンは、高校入試と8月入学に備えて予備校に通っている。

形式的にだがステラ学園は卒業していて、義務教育は終了した事になっている。

予備校といっても、おおやけの学校だから未成年の間は授業料はかからない。

これは、レベルの高い学校を狙う生徒が良くする事である。


『いいや、今日はケンにエリート校の実態を見てもらおうと思っている。

これから学校見学に行くつもりだ。今日は2つの高校の見学をしてもらうよ。

2月入学生がそろそろ落ち着いた頃だから、見学するのは3月が一番いいんだ』

ケンは、納得しつつも思わず文句が出る。


『相変わらず勝手ですよね。前もって言って下さいよ』

『何言ってんだ。その方が人生が面白いだろ? ちなみに、決めたのは昨日だ』

『先生は、計画性が有るのか無いのか分かりません』

どうやら今日は、ケンとヨシトは一緒に行動する事になりそうだ。


ケンはヨシトの事は好きだが、色々と困った事をいう変人という印象を持っている。

特に、自分が前世の記憶を持っているからといって、全く自重せずオタク話をしてくるのはやめて欲しくて仕方が無い。

だいたい、日本語を無理矢理マスターさせたのも、オタク話をしたいからに決まっているのだ。


ケンは、心の中でひっそりと悪態をつく。

妙に勘の鋭いヨシトには、そうしないとばれてしまうからだ。

下手をすれば修業が命がけになるので、さすがにそれは避けておきたい。

以前に怒らせた時は、ケンの全身の骨が10カ所以上折れた。


多分だが、死なない様には気を付けてくれているのだろう。

もちろん信じてはいるが、怖いものは怖い。

ようやく彼の魔力体の強さには慣れてきたとはいえ、本気のヨシトはケンにとっては怪物と変わらない。

まだ自分1人で20m級の魔物と戦った方がましである。



しばらくすると、食事を食べ終えたヨシトが席を立つ。

『よし、それじゃあ日本語の時間は終わりだ。後片付けをしておくように』

『了解しました』


ケンは魔術を使って、食器の後片付けと洗い物や部屋の掃除をする。

修業も兼ねているが、内弟子だから当たり前である。


3階の掃除をしながらケンは思う。

何だかんだ言っても、忙しい仕事の調整をして、自分に付き合ってくれるヨシトは良い先生である。

魔術の腕も、この2カ月ではっきり分かるほど上達している。


「頑張るぞ、後4年10カ月しか無いんだから」

ケンはそう言うと、動かない体に気合を入れ直して、掃除をなるべく早く終わらせるように操作魔術の速度を上げた。


設定および解説

(1)人間族の記憶の仕組みと記憶魔道具について、

細かい設定が好きな方は読んでみてください。

読まなくても、物語を楽しめると思います。



人間族の頭の仕組みは、地球人の頭脳に加えて、コンピューターの要素があると設定しています。

感情や思考力があるので間違いなく人ですが、記憶を物理保存できたり、並列思考が出来るのが機械的です。

また、魔蔵にも主に魔術知識を記憶出来て、魔術を使う時には副脳の役割を果たします。

他の違いは、脳に魔力野と呼ばれる思考力を具現化する魔術専門の部分がある事ですが、これは、この世界で思考力を持つ全ての生き物が持っています。


一見優れた種族ですが、もちろん、これによる欠点もあります。

そもそも、この世界の人類は、魔力野がある分だけ地球人より頭が悪くなるともいえます。

したがって、極めて優れた天才のレベルは地球人より下です。

特に人間族は、思考制御に優れていて記憶を物理保存出来る利点がある半面、感情も欲望も表向きは地球人類以下で機械的です。

変わりが無いのは、親子の情くらいだと設定しています。

ここでは関係ないですが、精霊族は更に極端で完全に個人主義になります。


また、並列思考出来る分、突飛な発想や想像力も生まれにくくなります。

ちなみに、ヨシトが『人間族の脳は、記憶限界が無い』と言ったのは魔力体にも記憶させる事が出来るからですが、基本は肉体部分のみを使います。

肉体部分だけでも、最低500年分の記憶容量はあると設定しています。

肉体部分を主に使うのは、魔力体の記憶を思い出す場合は、魔蔵を介して呼び出すので、時間がかかるし効率が悪いからです。

だから高齢者になると、よく使う知識は肉体に、それ以外は魔力体にわざわざ記憶を整理し直す人がいます。


最後に、『一度に扱える知識は大した事ない』とヨシトが言ったのは、言葉通りです。

PCでいうなら、ハードディスクの情報が増えても、メモリーやCPUはそのままですから。



(2)ケンの記憶に、非常に高度な翻訳魔術のプログラムが組まれて事に付いて

これもかなり細かい話です。

意味不明な点があるかもしれませんが、それでもよろしければお読みください。



この世界の人は、脳の魔力野を使って思考プログラムを起動する事が出来ます。

ただし思考力は個人それぞれが違うので、あくまでも思考の補助をする物です。

個人の持つプログラムをそのまま他人にコピーしても、ある程度は汎用性がありますが、理解できない事は意味不明です。

体を動かす様な簡単な技でも、自分に合うように調整する必要があります。

例えるなら、難しい論文を声を出して読んでも、何をしゃべっているのか解らないのと同じです。

技の場合は、例えば野球の場合でいうと、無理矢理バッティングフォームを真似して体を動かしても、自分に合わなければ良い結果が得られないの同じです。

つまり、プログラムを組める能力を持っているなら、普通は自分自身で作った方がいいといえます。


ただ、プログラムを組む事自体が非常に難しい技術なので、頭が良くて魔術知識が優れている人でも高度なプログラムを組むのは無理です。

ヨシトの場合は、前世でPCのプログラムを組んだ経験があり、なおかつ完璧な魔術知識があるから高度なプログラムが組めます。

しかし、高度なプログラムは汎用性がほとんど無く、思考力の個人差に合わせて調整する必要があるので、すごく手間がかかりますし個人専用の物になります。


つまり、ヨシトの作った翻訳魔術のプログラムは、ケンに日本語を理解させる為だけに手間をかけて調整したケン専用の物になります。

元々、ヨシトが日本語の単語や文法や例文が組み込まれている思考補助プログラムを用意していたので短期間で作れましたが、一から作れば年単位の時間がかかります。

こんな事をするヨシトは、『腐れオタク』と言われても仕方ありません。


ちなみに、例え他人に日本語翻訳魔術のプログラムを覚えさせても、外国語を直訳した日本語の様になってしまいますし、流暢にしゃべるまでには相当の訓練が必要なはずです。

思考力自体はコピー出来ないので、言葉自体は自分で使いこなす必要があるからです。

ケンが混乱もせずに直ぐに流暢に日本語をしゃべれるのは、日本文化をよく知っていて、ある程度日本語をしゃべれたからです。

だから、ケンの前世の記憶にない専門的な分野の単語や、細かいニュアンスまで理解出来ていません。

それでも、このままヨシトと会話を続ければ、完璧になっては行くでしょう。

言葉を使いこなすのは、それだけ難しいのです。

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