第36話 ケンの魔術の才能
ケン=マッケンジーの神託の日から6日が過ぎた1月1日の午後。
マッケンジー家の居間には、家族4人がそろっていた。
マリが休みを利用して実家に帰って来ていたからだ。
今は家族会議の真っ最中で、テーブルのいつもの席に腰を下ろして、全員で話し合っている。
議題は、ケンの進路についてだ。
母親のルルが難しい顔をして、娘のマリに相談している。
「マリちゃんは、確か家庭教師のアルバイトをやっていたわよね。いい先生を知らない?」
「ケンちゃんの家庭教師? 魔術と受験科目を両方教えられる人がいいのよね…。
何人か心当たりはいるけど、ステラ村に来てくれる人は、思い付かないわ」
「やっぱりそうよね。
…いっそのこと、ケンちゃんをアビス市に下宿させてみようかしら」
ルルは思案げに腕を組む。
ケンは、前から言っている事を繰り返し言う。
「お母さん、前にも言ったけど、そんな必要ないよ。
ぜいたくは敵だって思うし、ボブ先生に教えてもらっているから大丈夫だよ。
それにシリウス高専(高等専門学校)に落ちても、すべり止めに行くから問題ないよ」
初めてケンの志望校を聞いたマリは、驚いて横に座る弟の手を握りしめる。
「ケンちゃんは、シリウス高専を受けるつもりなの?
どんな学校か分かって言ってるの?」
「うん、お姉ちゃん、ボブ先生に聞いたからよく知ってるよ。
今のままじゃ合格するのが難しい事や、授業内容だって聞いてるし、卒業するのが難しい事も全部知ってるんだ」
力強い言葉と目線、何より姉の手を強く握り返す様子に、彼の決意が現れている。
マリはその手を離し、そのまま黙ってしまい、難しい顔で考え込む。
次にケンに話し出したのは父親のダンだ。
「ケン、お父さんが頑張って稼ぐから、お金の事は心配するな。
未成年の間は、学費はかからないんだから、家庭教師の1人や2人は大丈夫だよ」
「お父さん、優秀な家庭教師は高いって聞いたよ。
それに、受験のテクニックを教わるなんて違うと思う」
息子のしっかりとした意見に、父親も黙り込む。
確かに、たかが高校受験程度で人生が決まる訳ではない。
人間族には、500年近い寿命があるのだから。
ダンは、少し落ちこみながら考えている。
(家庭教師も付けてやれないなんて、僕は父親失格だ。
こうなったら貯金を使い果たして……、でもなぁー、ケンが大学院まで行くって言ったら、その時は借金生活になるよなぁー。
…いかんいかん、僕が弱気になってどうするんだ!
だいたいこれは、喜ぶべき事なんだぞ!
…ああ、貧乏が憎い)
ルルは、夫の様子を見ながら考えている。
(お金の問題だけじゃないんだけどね…。
でも、ダンがエリート校の実態を知らないのは仕方ないかもしれないわ。
やっぱり、母さんに頼んで優秀な家庭教師を付けようかしら?
でも、ケンちゃんは頑固だから、きっと納得しないわね)
それならば、あえて確認する必要がある。
ルルは、厳しい口調でケンに詰問する。
「ケンちゃん、シリウス高専は結果がすべての学校なの。
努力するのは当たり前、才能があるのは当たり前、だから、家庭教師も当たり前なのよ。
合格するためだけの2流の家庭教師を雇っても、どうせ授業に付いて行けなくなるわ。
だいたい、お金がもったいないなんて理由で断るなんて覚悟が足りないわ。
落ちたらすべり止めに行く程度の気持ちなら、やるだけ無駄よ。
役に立たないプライドや、変なこだわりが捨てられないなら、シリウス高専に行くのはやめなさい」
だが、その言葉にも、ケンは自らの考えを曲げない。
「お母さん、僕は前に言ったよね。
今は、レクサと『決闘』の最中なんだよ。
レクサは自分の力で奨学生になったんだから、僕も同じ条件で戦いたい。
そうじゃないと、レクサに顔向けできないんだ」
『決闘』の話を出されては、敬虔なゾンメル教徒である両親は反論できない。
それは、彼らにとって何より重要な事だからだ。
だがそれは、愚かな選択だとルルは思う。
だから、ゾンメル教徒としてではなく、一人の母親として意見を言う。
「レクサ君だって、自分一人の力で勝ち取った結果じゃないわ。
周りの人達の協力があって初めて出来た事なのよ。
だから、親の力を借りる事は恥ずかしい事じゃないのよ」
「それでも、親がお金を払って家庭教師を付けるのはダメ!
必要だと思ったら、僕がお金を払って頼むつもりだよ。
でも今は、僕にはお金がないから、それは出来ないんだ」
もちろん、ケンだって志望校には受かりたい。
特殊な授業内容に付いていけない可能性も考えている。
他の受験生達が、専門の家庭教師に教わっている事で、自分が不利になるのは分かっている。
でも、両親に特別にお金を出してもらうのは、彼の中ではルール違反である。
レクサは、そんな事をしたくても出来なかったのだから。
何より彼には、譲れない想いがある。
レクサはもちろん、水精族のノッコや女神様に見られても、恥ずかしくない生き方をしたいのだ。
マリは、この時初めて弟の気持ちを理解した。
そこまでの覚悟があるなら、力になりたいと強く思う。
「わかったわ、つまり、周りの人の協力を得るだけならいいのよね。
だったら、お姉ちゃんがケンちゃんの力を見てあげる。
今から村の外へ行きましょう」
急にそんな事を言うマリに、ルルは首をかしげる。
「マリちゃん、いったい何をするつもりなの?」
マリは家族の顔を見ながら説明する。
「みんな、よく聞いて。
確かにシリウス高専は、魔術の才能がないと入れない最難関の魔術系高校だけど、その実態は、人体実験校だと言ってもいいわ。
私の教え子の中に、受験をした人がいるからよく知っているの。
まだ魔力体が安定していない若いうちに、伸びる能力値を伸ばす為のカリキュラムが組まれている特殊な高校なの。
厳しい授業に付いていけなくて退学する人も多いわ。
だから、私がケンちゃんの才能を確かめてあげる」
マリは立ちあがって、ケンに手を差し伸べる。
ケンはその手をつかんで、「お願いします」と言って立ち上がる。
「ケンちゃん、約束して。もし私が駄目だと言ったらシリウス高専はやめて、他の高校を選びなさい。
私は、投薬や魔術機械まで使って無理に能力を伸ばすカリキュラムは、はっきり言って非人道的だと思ってるわ」
「…うん、お姉ちゃん、約束する」
呆気にとられていたダンは我に帰ると、思わず立ち上がる。
「僕は、そんな事初めて聞いたぞ。
未成年に実験するなんて、いくらなんでも、無茶苦茶じゃないか!」
「あなた、落ち着いて。これは、よくあることなのよ。
人体強化実験のデータがあるから、安全性に問題は無いわ。
もちろん実験じゃないから、法律にも違反していないの。
あくまでも、伸びる能力を伸ばすだけだから。強化人間みたいに寿命を削る様な事では無いのよ」
妻が手を引いて、夫を座らせる。
まだ納得のいかないダンは、うつむいてつぶやくように言う。
「何でそんな事をする必要があるんだ?
確かに、若いうちにしか能力値は伸びない場合が多いけど、魔術をスキル化すれば対応出来るじゃないか。
時間をかけたり、みんなで協力すれば個人の力なんて関係ないだろう」
ダンの意見に頷きつつも、マリは素朴で優しい父に現実を理解させる。
「父さん、よく聞いて。
シリウス高専はエリート養成校の一つなの。
つまり、恵まれた才能を持つ人が、覚悟を持って入学するのよ。
そして、卒業後はほとんどの人が特待生として上の専門院に行くの。
決して、一芸に秀でている人の才能を伸ばす学校じゃないわ。
知性と体力と魔術の素質を総合的に高いレベルに育てるのが目的だから、一般人はお断りだし、多少無茶をしたって許されるわ。
それに合わない人は、辞めて行くだけなの」
ダンは、納得できない。
だが、反論も出来ない。
自分とはあまりに違う世界の話だから、何を言っていいかさえ分からないのだ。
彼の悩む姿を見て、ルルは少し間を取ろうと思い、今にも出かけそうな子供達に声をかける。
「マリちゃんもケンちゃんも、とりあえず座りなさい。
今から、ケンちゃん能力値の測定用紙と最近の学力試験の結果を持ってくるから、それを見てから出かけなさい。
私はマリちゃんの意見が聞きたいし、出来ればその決定を尊重したいわ」
「…そうだったわね、詳しい数値を聞いていなかったわ。
学力も試験まであと半年も無いんだから、伸びしろは決まってくるわ。
ただし、私が家庭教師をしていたのは5年以上前だから、そのつもりでいてね」
「ええ、もちろんよ。ちょっと待っててね」
ルルは立ちあがって、2階の夫婦の部屋に資料を取りに行った。
しばらくして、ルルの取ってきた資料がマリに手渡される。
彼女は、ほれぼれする程の早さで確認する。
彼女にとっては当たり前だが、それを見ていたケンは自分との違いに驚く。
(お姉ちゃんはすごい。僕の読むスピードより何倍も早い。やっぱり天才なんだ)
そして、実感する。
これから自分は、そんな人達とも戦っていかなければいけないという事を。
一方、マリもケンの能力値の測定用紙に目を通して感心する。
特に自由魔素への親和性の高さは、心の中で舌を巻く。
(なるほど、これだけ高ければ何の問題もないわね)
彼女はそれを確認すると、あっさりと次に移る。
ここに書かれている能力値には、伸びしろが無いからだ。
単純に才能の問題であり、とりあえずは、足切に引っ掛からなければ問題では無い。
次に彼女が確認したのは、ここ半年間のテストの答案だ。
その内容を読むにつれ、徐々に感心を深める。
初めはケアレスミスが多いと思ったが、それが勘違いだとわかった。
単純に、ひっかけ問題に弱いのだ。
しかし、同じミスを繰り返してはいない。
これは、しっかりと復習をしている証拠であり、記憶力も良いのだろう。
つまり、この答案を見れば、彼がいかに努力家であるか理解出来てしまう。
(だけど、時間が足りない。このままでは、合格は難しい)
落とすための試験への対策は、テクニックを勉強するしかない。
数をこなす時間は残されていないのだから。
最後に見たのは、ボブ先生の意見書である。
一言でいえば、彼はシリウス高専への入学を良くは思っていないようだ。
マリも全くの同意見である。
シリウス高専へ合格すれば、学術都市にたった一人で5年間も暮らすのだ。
大きく環境が変わり、周りは人間族のエリートばかりでお金持ちばかり。
すぐに信頼出来る人が作れなければ、人間関係での苦労はマリの比ではないだろう。
(いっそ、不合格の方がケンちゃんにはいいかもしれない)
だが、今はその気持ちを振り払う。
一度、公正な目で判断すると決めたのだから、結論を出すには早すぎる。
マリは資料を読み終わると、テーブルの上に静かに置く。
「じゃあ、ケンちゃん。村の外に行きましょうか。
私が魔力視の魔術でケンちゃんの才能を見てあげる。
はっきりした数値は解らないけど、おおよその判断は出来るわ」
ケンにももちろん異論は無い。
それから2人は、村の外へ出かけて行った。
ステラ村から東に少し離れた山のふもとに、2人は到着する。
季節は冬だが、この辺りには雪は積もっておらず、遥か高くの山頂が雪化粧をしている程度である。
地面には木も少なく、岩肌と枯れ草が目立つ目立つ場所で、兄弟は向き合う。
「じゃあ、早速やって見せて。
覚えている基本術式の構築速度と威力を見たいわ」
「うん、やってみる」
ケンは、この5日間の練習の成果を見せるために、火をおこそうとする。
対象は、2m先の地面に転がっている小枝。
ケンの頭の中の魔力野が術式を構築する。(文末参照1)
火魔術は、酸化還元反応が弱いこの世界では、意外に難しい魔術だ。
系統は変化系魔術である。
しかしケンは、前世の記憶を活かして小枝の周りに酸素を集め、双方を加熱して酸化反応を活性化させる。
魔素が阻害する為に爆発は起こさないが、小枝は激しい炎に包まれ一気に燃え上がる。
マリは魔力視を使い、その様子を観察すると愉快そうに話す。
「面白い使い方をするのね。
でも今は、普通の魔術が見たいのよ。
まずは、意志付け出来る範囲から確かめましょうか」
ケンは頷くと、思念波を使い、地面に転がる近くの小石から、だんだん遠くの小石に向かって意志付けを始める。
およそ、5mごとに小石を意志付けすると、100m程で思念波が届かなくなる。
「遅いわよ。もっと速く意志付け出来ないの?
それに100mくらいなら誰だって出来るわよ」
「これで精一杯だよ」
そもそも意志付けは、距離が遠くなるほど難しくなる。
しかも個体への意思付けは、魔素親和性が高くないので難しく時間がかかる。
魔術を使い始めたばかりの時は、普通は100mも離れた固体を意志付け出来ないので、マリの言っている事は厳しすぎる。
だが彼女は容赦しない。
「そう、仕方ないわね。
じゃあ、操作魔術を見たいわ。
一番遠くの石を動かしなさい」
ケンは操作系魔術を使って石を動かす。
100m先の小石があっさりと浮き上がるが、すぐに地面に落ちてしまう。
「操作力は強いけど、やっぱり反応が遅い。
状況に対応できていないから、思念波で正確に操作出来ないみたいね。
繊細さが足りないと細かい操作は難しいわよ。
次は、最大操作力を見たいから、周りの石を一カ所に集めて」
「うん、やってみる」
ケンが言われた通りに魔術で石を集めると、2m程の高さの石の山が出来る。
「じゃあ、持ち上げるだけ持ちあげて見せて」
ケンは無言で集中すると、石の山全てを一気に持ちあげようと魔術を発動する。
石が、「ギュリギュリ」という嫌な音を立てて50cmは持ちあがる。
しかしすぐにポロポロと小石が落ちて、その後は一気に地面に落ちる。
「固体を一体化して扱えていないわ。意志付けも甘い」
「難しいよ、お姉ちゃん」
「泣き言を言わない! 次は展開力を確かめるわよ。
一番簡単な魔術陣でいいから、出来るだけ効果範囲を広げて見せて」
このようにしてマリは、ケンの持つ思考力や魔素に関する操作力、変化力、展開力、操作範囲や緻密さといった能力を次々と確認して行く。
30分もすると、全ての能力の確認が終わる。
「次は、覚えている術式の構築と破棄を繰り返しなさい。なるべく速く、正確に」
「うん、わかった」
ケンの頭脳は、もう悲鳴を上げていたが、歯を食いしばって指示通りにする。
15分も続けていると、次第に目の前が真っ暗になってきたが、それでも気にせずに愚直に構築と破棄を繰り返す。
彼の額には脂汗がにじむ。
「そこまで!」
それを聞いたケンは、急に緊張が解けたのか、その場に膝をついてしまい全く動けない。
呼吸は荒く、しゃべろうとするが声が出ない。
「…全然ダメね。
基本式や簡単な術式はともかく、複雑な物になればなるほど速度が落ちる」
姉の無情な声が響く。
ケンは、その言葉の意味を理解する。
魔術の構築速度は、頭の良さに関係してくる。
つまり、ケンの頭の回転は速くないと言われているのだ。
もちろんこれは、マリから見ての話である。
一般人のレベルから見れば、ケンは頭が良い方だ。
構築速度は鍛えれば速くはなるが、意外に伸びしろは少ない。
魔術をスキル化出来れば解消するが、それには時間がかかる。
しかも、最速の人が1,2秒かかるなら、ケンなら2,3秒はかかる。
だが、この1秒の差が意外に大きい。
特に戦いの場合は、致命的ともいえる。
「はっきり言うわよ。ケンちゃんは戦闘職には向いていない。
速度が圧倒的に足りないのよ」
「お姉ちゃん、やってみないと分からないよ。僕はあきらめたくない!」
ケンは顔を上げて、マリに反論する。
年明け早々、しかも冬の季節に、わざわざ自分に付き合っている姉には感謝しているが、それとこれとは別である。
自分の頭が悪いという理由だけで、チャレンジする前からあきらめるなんて、それは納得出来ない。
本当は理屈は分かっているが、それは譲れないのだ。
だがマリは、きょとんとした表情で言い返す。
「何言ってるの、別に戦闘職にこだわらなくていいでしょ。
ギフトも職人系みたいだし、万が一の場合は、戦闘に応用も利くんだから専業でなければ大丈夫よ。
レクサ君が戦闘職だからといって、まさか進む道まで同じにするつもりなの?」
「えっ…、僕は不合格じゃないの?」
「あのねえ、そんな訳ないでしょ。もちろん合格よ。
ただし、学科の成績が厳しいから、相当頑張らないとシリウス高専には合格出来ないわ。
あと半年もないんだから時間がないわよ」
マリは、優しく微笑んだ。
まるで、鬼軍曹が突然、女神様に変わったようだとケンは思った。
ともかくこれで、ケン=マッケンジーは姉のお墨付きを得た事になる。
もちろん、シリウス高専に合格するのは簡単ではないだろうが、それは最初から覚悟していたのだから。
ケンはゆっくりと立ち上がると、「お姉ちゃん、ありがとう」と可愛らしく御礼を言う。
それを見て、久々に『お姉ちゃんパワー』がマックスになったマリは、ケンに抱きついて困らせたのだった。
設定および解説
(1)魔術について
細かい話ですが、魔術とはどのような物かを説明します。
ややこしい設定なので、バトル物にする予定では無かった元作ではほとんど説明していません。
ただし、思考力が物理的に存在する世界なので、SFタグを付けていた元作では、一応科学的な裏付けが必要だと思い、かなり当初から設定していました。
今作でも、難しい事を考えず読んでいただいても問題ありませんので、難しい設定が読みたくない人は読み飛ばしてください。
ギフトはイメージで使えますが、魔術は人の業ですから、思考力と脳の魔力野や魔蔵を使う必要があります。
固有魔術を除くと、人が使う魔術は3種類あると設定しています。
一番簡単なのは、基本式や思考力のみで使える魔術で、操作魔術や加熱魔術や冷却魔術等がこれに相当します。
次に、最も多く使われる魔術は、基本式を組み合わせて術式を作り、魔術陣を構築する魔術で、普通は魔術と言ったら魔術陣を使う物の事を言います。
最後は、魔術思考プログラムです。
(魔術プログラムや思考プログラムや思考補助プログラムや、単に技とも呼ぶ)
これは、脳の魔力野や魔蔵で思考の補助をするプログラムを組む魔術です。
かなり難しい技術なので、相当の魔術知識がないと使えません。
その内容は、簡単な技のような物(二刀流とか乱れ突き)から、魔術陣や記憶を組み込んだ高度な物(翻訳とか転写)まであります。
だから、魔術というよりは人の思考の補助そのものだとも言えます。
何の為にこんな事をするかといえば、技の威力や精度を上げたり、早くスキル化する為です。
魔術の専門家は別として、魔術思考プログラムを魔術と考えていない人もいます。
ここでは、3つある魔術のうち、魔術陣を使った魔術について解説しておきます。
今までも、魔術用語がチョコチョコと出て来ますので、それの説明も一緒にしておきます。
魔術陣は、術式をかたどった立体的な模様であり、線の太さの割合や形にも全て意味がありますが、大きさ、つまり縮尺は、かなり違わなければ関係ありません。
難しい魔術ほど術式の要素が増えるので、魔術陣は複雑で立体的になります。
魔術陣は、その威力の違いによっても高度な物になり、初級<中級<上級<最上級魔術陣までありますが、並の人間族が使いこなせるのは上級魔術陣までと設定しています。
それによって、行使された魔術を初級<中級<上級<最上級魔術と呼びます。
ただし、その区分けは結構いい加減で、初級魔術を初心者魔術とか基本魔術とか言いますし、魔術陣を使わない操作魔術や加熱魔術をそう呼ぶ場合もあります。
威力とは関係なく、魔術陣を構築するのに苦労する魔術を上級魔術、レア魔術の事を最上級魔術という場合もありますので、結構あいまいに区分けされたり呼ばれたりしています。
ちなみに、厳密にいえば、レア魔術と最上級魔術は違います。
レア魔術とは、威力とは関係なく、魔術陣の構築に魔素を多量に消費したり、制御が極めて難しかったり、魔術陣自体が構築出来なかったりして、結果的に発動自体が困難な魔術の事です。
次に、魔術陣を使った魔術の手順を簡単に説明します。
例えば、気体に思念波を使って魔術陣を構築すると、意志付けされた物質が魔術陣を形作ります。
それから、魔術陣に適量の魔素を加えて活性化すると魔術が発動して、その術式の内容に応じて魔術陣内や周辺の魔素が変化をします。
ここまでの一連の行動を魔術の行使と呼び、その状態を維持する場合もそう呼びます。
気体の場合は、思考を切れば、魔術陣は自然に消滅しますが、影響がしばらく残るので、一部を壊したり、魔素を流すのを止めて解除するのが普通です。
戦闘職の場合は、次に使う同種の魔術に影響を及ぼさないために、魔術を破棄(完全に魔術陣を破壊)する場合が多いです。
全ての行為は、人の持つ思考力によって行われます。
簡単にいえば、魔術の構築とは、魔術陣を作る事です。
魔術の発動とは、魔術陣に魔素を適量流して現象を発生させる事です。
魔術の行使とは、構築と発動と維持の事です。
魔術の解除とは、わざと魔術陣の一部を破壊する事です。
魔術の破棄とは、完全に魔術陣を破壊する事です。
魔術陣を使わない魔術の場合も同じ言葉を使います。
その場合は、現象を発生を発動と呼び。
発動と維持の事を行使と言います。
解除と破棄は、思念波や思考波を使うのをやめるとでも思ってください。
とは言え、あまり厳密に使い分けるつもりはありません。
魔術陣は、個々の種類や特性により、魔素の流れる量の適性値がありますから、多くても少なくても魔術は発動しません。
この適性値の誤差は、難しい魔術ほどシビアになります。
最後に、こんな小難しい設定を読ませてしまって申し訳ありません。
矛盾点が出てくる可能性もありますし、今作はファンタジーのタグを付けていますから、書かないでおいた方がいいかとも思いましたが、元作の補完の意味もありますので、結局書いてしまいました。
この設定を十分に生かせる話を書く事は多分無理ですから、参考程度に考えていただけると幸いです。




