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第28話 番外編 マリ=マッケンジーの動揺


マリ=マッケンジーは、動揺していた。

実家の自分の部屋で母親のルル=リンクに悩みの相談をしていたはずが、どこをどう間違ったか、話が大切なペンダントをおばあちゃんに『鑑定』してもらう風に転がってしまったからだ。

ペンダント握りしめて、母の目の前から隠す様に身構える。


「母さん、私、このペンダントを売るつもりはないわよ。だから、おばあちゃんに見てもらう必要もないから」


マリの祖母、エマ=シンプソンは、やり手の商人である。

彼女がその気になれば、マリは赤子の手をひねるように売買契約書にサインさせられるかもしれない。


「誰も売るなんて言ってません。

ただ、価値を確かめるだけよ。

だいたい。私の母さんだって、かわいい孫娘の大事な物を勝手に売ったりしないわよ」


「そうかもしれないけど、母さん、何か別のことを考えてない?

例えば、ペンダントにかこつけて、ヨシトさんに無理矢理会いに行くとか、ペンダントを安く仕入れて儲けようとか考えてないの?

それなら、迷惑をかけるからダメよ」


完全にこちらの思惑を見抜かれているが、ルルは別に気にしない。

自分の娘の頭の良さはよく分かっているのだから、想定の範囲内だ。

だから、マリの質問をスルーして、たたみかける。


「マリちゃんは、このペンダントの事をどのくらい知ってるの?」


「…えっと、ヨシトさんからは、解毒の効果があるって聞いてる。

魔黄白金製だから、身体魔素の補助の効果もあるけど、どれくらいあるかは聞いてない。

でも、この重さの魔黄白金なら50以上は貯められると思う」


マリは気まじめにも答えてしまうが、それではルルの思う壺である。

ルルは、内心で娘の真面目さを好ましく思いつつも、同時に心の中で舌を出す。

それに、マリが言った事は無視できる内容ではない。


「それは、体内浄化魔術陣が仕込んであるってことなの?

…ちょっと信じられないわね。

もしそうなら、最低でも400万ギルはするわよ。

マリちゃんは、おかしいとは思わなかったの?

メンテナンス無しじゃ危ないわよ。

これは、ますます見過ごせないわ。

絶対、母さんに調べてもらわなきゃいけないわ」


「ヨシトさんの手紙には、問題ないって書いてあったわ。

私、毒とか飲んだ事が無いから確かめようがないけど…」


体内浄化魔術陣は、個人の体質に合わせてオーダーメイドしなければならない上に、数カ月に一度のメンテナンスが必要である。

彼が付けていた物をそのまま娘が付けているならば、効果がないどころか身体に悪影響を及ぼす場合もある。

ルルは、優秀な魔道具職人がそんな事も知らないとは思えなかったので、さすがにそれは無いとは思っているが、万が一のことを考えて、ますます鑑定をしてもらう事を勧める。


彼女の母、エマ=シンプソンの持つオリジナルギフト『鑑定』は、商品の名称や価値や性能が解るという、商売人にとっては実にうらやましい物である。

自分では解らないが、ペンダントに付加されている複雑な魔術陣の詳細も『鑑定』すれば明らかになるだろう。


その後も親子による押し問答が続いたが、結局はマリが折れて、シンプソン家があるミレーヌ町に行く事に決まった。


これは、マリが就職するに当たって、祖母に相談に乗ってもらう為に近々訪問する予定にしていたので「どうせ、ついででしょ。観念なさい!」とルルから言われた事が決定的な理由である。

もちろん、マリ自身にもペンダントの価値を確かめたい気持ちや、ヨシトの職人としての腕を確認したい気持ちがあるのを母に見抜かれていて、上手いこと丸めこまれてしまったからでもある。


「じゃあ、早い方がいいわね。マリちゃんは、ミレーヌ町の位置情報は覚えてる?」

「うん、覚えてるけど、まさか、今すぐ行くつもりなの?」

「早い方がいいでしょ。それに、平日は母さんは忙しいから気がひけるわ」


そう言って、ルルはマリの部屋を出て行く。

引き止めようかとは思ったが、もう決めた事だからと納得し、マリも外出の準備を始める。

彼女には、他にも就職活動という重要な目的もあるから、色々と持っていく物も多い。


1階に下りたルルは、居間にいた夫のダンにミレーヌ町に娘と行く事を告げる。

「ああ、いってらっしゃい。マリの就職の相談かい? 確かに早い方がいいだろうね」

義母が苦手なダンは、一緒に行くとは言いださないが、今回はその方が都合がいい。

ルルは母の力を借りて、出来ればだが、ヨシト=ウッドヤットと娘の仲を取り持つつもりでいるのだ。

いくらなんでも、10代の娘の恋の悩みを夫には知らせない方がいいだろう。

まして相手が、彼より若い優秀な職人なら尚更である。


「じゃあ、ケンの面倒をお願いね、愛しのダン。遅くても明日の昼までには帰ってくるから」

「ああ、もしマリが正式にリンク商会のお世話になるなら、僕も挨拶に行くよ」

2人はギュッと抱き合うと、名残惜しそうに離れる。


それからルルは、2階にある夫婦の部屋に、簡単な荷作りをする為に上がっていく。

シンプソン家にもリンク家にも彼女の部屋があるので、着替えや大荷物を持っていく必要はない。



女性の用意には時間がかかると言うが、多くの人間族の女性はそれに当てはまらない。

軽く身だしなみを整える程度で、特別な日以外は、化粧さえもしない人が多いのだ。

見た目と体が十分若い種族ならではと言えるだろう。


そんな訳で、30分もかからずに支度を終えた2人は、家を出て村の外に向かう。

仲の良い親子は、おしゃべりをしながら村の道を並んで歩いている。


「マリちゃんは移送魔術をスキル化したから、これからは、頻繁にミレーヌ町に行けそうね」

「母さんも、スキル化して見たら? すごく便利だよ」


「私は、しばらくは無理ね。

それに、移送結界自体が小さくて、私一人が飛ぶのがやっとだから、スキル化出来ても、あと一人が精一杯と思うわ。

それと、あなたは悪気が無いんでしょうけど、高齢者になってもスキル化出来ない人の方が圧倒的に多い魔術なのよ。

移送結界自体を一生構築出来ない人も多いわ。

だから、嫌味にならない様に、気を付けなさい」


「はーい。気を付けます」

返事の良い娘に笑いつつ、ルルは質問する。


「それで、スキル化後はどの程度の能力になったの?」


「えっと、移動距離は750km程で、多分6人は余裕で運べるわ。

だから家族全員で旅行にも行けるわよ」


これは予想の範囲内なので、ルルは冗談交じりに娘に話す。


「マリちゃん、あなた、移送屋を開けるわよ。

と言うよりそれをアピ-ルすれば、どこだって就職出来るわよ。

なんなら我が家に就職する?」


「えーと、飛空車の代わりにされるのは、ちょっと勘弁してほしいかな。

だから、履歴書とかに書くつもりはないの。

スキルじゃ無くて、私を見てって感じかしら?」


「まあ、この子ったら、何て贅沢な悩みなのかしら。

移送結界を作れないダンに謝りなさい」


「父さん、御免ね。私の笑顔に免じて許して。なんちゃって」


「…マリちゃんは、芸人は無理みたいね」


そんな感じでおしゃべりしながら楽しそうに歩いていた2人は、村の正門に着くと、門番に声をかけてから正門を抜けて村の外に出る。


「じゃあ母さん、行くわよ」


「ええ、お願い。

だけど、こんなに早くマリちゃんにお世話になるとは思わなかったわ。

しかもタダで。ああ、何て素敵な響き。

やっぱり、子供は作っておくべきよね」


「…母さんからだけは、料金を取ろうかしら?」


そんな話をしながら、移送スキルは発動され、2人はステラ村から西に650km程離れているミレーヌ町に向かって移送ロードを飛ぶ。

6秒ほどで到着すると、ルルにとってはよく知る町の擁壁が見える。

時間はまだお昼前である。


「さあ、シンプソン家に行きましょう。いないかもしれないけどね」

「母さん、おじいちゃんにも挨拶した方がいいかな?」

「リンク家は後よ。とりあえず、用件を済ませましょう」


マリのおばあちゃんとおじいちゃんは離婚していて、別々の家に住んでいる。

これは、別に珍しいことではない。

子育ての時期が終わると、結婚の意味はほとんどない為に、あっさりと離婚する人間族が多いのだから。


親子2人は、町と言うには立派すぎる正門を抜けて、リンク商会のすぐ近くにあるシンプソン家に向かう。

おじいちゃんの住むリンク家も近くにあり、シンプソン家から歩いて1,2分の所にある。

ただし、広い町なので正門からは、歩くと1時間以上はかかる。


「母さん、ギル車(タクシー)にする? 魔動車(市電)にする?」

「もちろん魔動車よ。ぜいたくは敵です」

「私は、貧乏が敵だと思う」

そんな事を言うマリだが、向かうのは当然ながら大型魔動車の駅である。


2人は大型魔動車に乗り込み、リンク商会の最寄り駅に向かう。

ここからは、およそ20分ぐらいの移動である。

親子は横長の椅子に並んで座り、車窓に移る街並みを眺める。

目的駅に着くまでの間に、仲の良い親子が小声で色々と世間話をするのは、地球でもルミネシアでも変わらない。

世間話の途中で、マリは祖父母たちの離婚の理由を母親に尋ねる。


「母さん、今まで聞いてなかったけど、何でおじいちゃんたちは離婚したのかな?

パートナーは今も続けているのよね?

恋人がいないんだったら、母さん達みたいに夫婦でいればいいのに」


仲が良いのにわざわざそんな事をする意味が解らず、2つの家に訪れる必要があるマリは愚痴をこぼす。

別に離婚自体は気にしていないが、合理的ではないと思う。

ちなみに、この世界の人間族は、兄弟で片親が違う事は当たり前で、それを不満に思う子供なんてほとんどいない。


「私もはっきりと聞いた事は無いけど、多分、プライドの問題ね。

夫婦でいる間は、稼いだお金は共有財産になるでしょ。

それが両親達は気に入らないのかもしれないわね。

2人は夫婦であるより、リンク商会の共同経営者であり、何より商人としてのライバルでいたいんだと思うわ」


母の説明に、なるほどと納得するマリ。

確かに以前この町に泊った時も、どちらの家に泊るかで張り合っていた気がする。

そうするとバランスをとる為に、今回はシンプソン家に泊った方がいいかもしれない。


大型魔動車が最寄り駅に着くと、そこから歩いて1分もかからない駅前の一等地にリンク商会は店を構えている。

店自体は開いているようだが、まずはおばあちゃんがいるはずのシンプソン家に向かう。

今日は休日だから、会長は自宅でゆっくりしているはずだ。


果たして、やはり親子の予想は当たった。

シンプソン家の呼び鈴を鳴らした後に2人を出迎えたのは、エマ=シンプソン、その人だった。


シンプソン家は、2階建ての地球で言う洋館で、広い立派な庭には小さな別館があり、そこは、骨董品集めが趣味のエマのコレクションの館である。

この世界では、町の中での植物の栽培は原則的に認められていないが、庭には森の木々を模したオブジェや彫刻が趣味良く飾られており、はっきり言って豪邸である。

一人で住むには大きすぎる家の、西洋風の豪華で格式高い居間に通されて、親子と祖母は向かい合わせでフカフカのソファーに腰を下ろす。


(相変わらず、おばあちゃんの家はすごいな~。今日は、お手伝いさんはいないのかな?)


マリは、来る度に圧倒される豪華で趣味のよい部屋をチラチラと眺めている。

明らかに高価な物とわかる応接セットに座っている女性三人は、親子三代と言うよりは、兄弟のように見える。

ちなみに、マリとエマの年の差は200歳以上である。


エマは落ち着いた薄茶色の瞳を娘のルルに向け、女性らしいアルトの声で話し出す。


「それで、用件はなんだい? マリの就職の事かい?」


いきなり本題を話すのは、ある意味優れた商人の資質でもある。

家族に対しては駆け引きなど必要無く、それ故に社交辞令は時間の無駄なのだから。


「それもあるけど、もう一つ別件があるの。先にそれを済ましておきましょう。母さんに、マリちゃんの持ってるアクセサリーの『鑑定』をしてほしいの」


ルルも慣れたもので、無駄話はしない。

それからルルは、今日娘と話した事を簡潔にだが、丁寧に話していく。

しばらくして話し終わると、エマは孫娘の方に顔を向け、優しい声で話しかける。


「なるほどねぇ、ルルの依頼ならともかく、マリなら鑑定料は取らないよ。

ただし、そのヨシト=ウッドヤットと言う人物についての詳しい話が聞きたいね。

マリ、自分から私に説明しなさい。

それが依頼料だと思ってもらっても構わないよ」


鑑定料は取らない代わりに依頼料を取るという、一見矛盾した、実に商売人らしい言いように、マリは大人しく従う事にする。

実際、もしおばあさんの鑑定を受けるのなら、高いお金が必要なのだから。


「おばあちゃん、どこから話せばいいの」

「始めから全部だよ。せっかくの孫娘の恋の話なんだ、十分に堪能させてもらわなきゃ損だからね」


マリは姿勢を正し、ヨシトとの出会いから今までをすべて説明する。

もちろん自分の気持ちは出来るだけ抑えて、事実だけを話すように心掛けてだが。



出会いは偶然で、大学一年の時にアビス市で出会って、図書館を探している彼に大学の図書館を紹介した事から始まり、そのお礼に喫茶店でお茶をごちそうになった事。

彼が商会の会長で、主にオーダーメイド専門の魔道具職人である事。

ひょんなことから、水精族の村の場所の情報のヒントを与え、その御礼に、彼が付けていたペンダントを貰った事。


その後、悩みの相談に乗ってもらい、一緒に修業した結果、自由魔素に対する親和性が上がった事。

それを心配した彼に連絡先を教えてもらい、それからしばらく文通を続けていた事。

移送魔術をスキル化した後は、彼の住む街に度々押しかけて、無理に頼みこんで魔道具造りを教えてもらっている事などを出来るだけ感情を入れずに話し終わる。


長い話が終わると、エマは感慨深げに話す。

「水精族か…、ケンの事といい、妙な因縁があるようだね」

母親のルルも、その事は初耳だった様で、驚いているようだ。


「わかったよ、依頼料は確かにいただいた。さあ、そのペンダントを見せてごらん」


マリは首からペンダントを外し、エマに手渡す。

受け取った瞬間、エマの顔色が変わる。


エマは、じっくりと時間をかけて美しい幾何学模様きかがくもようのペンダントを調べている。

彼女のあまりに真剣な表情に、親子は声をかける事さえ出来ず、居間の中は沈黙が支配する。

2分程すると、ようやくエマはペンダントをテーブルの上に置く。

そして厳しい表情で、マリに質問する。


「これは、本当にヨシト=ウッドヤットが造った物かい?」

その質問が意外だったマリだが、素直に頷く。


「ヨシトさんはそう言ってた。少し形は違うけど、今も似たようなペンダントを身につけているから、間違いないと思う」


エマは、腕を組んで少し考えているようだが、結論が出ないと思ったのか思考を打ち切った。


「さて、何から説明しようかね。

…まず初めに、このペンダントの名前は、『解毒のペンダント』だ。

もっと気の利いた名前を付ければいいのに、製作者は遊び心が無いね。

次に素材だけど、魔黄白金じゃない。

正確に言うと純粋な魔黄白金ではない。

まあ、魔黄白金によく似た新しい合金だ。

私のギフトでは、その製法や物質構成までは解らないから説明に困るんだけど、強度と自由魔素の蓄積量が増加しているのは解る。

強度は約4倍、魔素蓄積量は5倍といったところだね」


ルルとマリは呆気にとられて言葉もない。

部屋の中には、エマの声だけが響く。


「次に、細工、つまり芸術的価値だが、これはちょっと値が付けられない。

例えばこれが純粋な魔黄白金製なら、600万ギルってとこだね。

まあ、気に入った金持ちならもっと出すだろうが」


つまり、材料費との差額だけで500万ギルはあるという事だ。

製作者の優れた腕を改めて確認した2人は、ただ黙って聞くしかない。


「だけどね、このペンダントの一番の価値は、この中に刻まれた魔術陣の効果だね。

名前に違わず解毒効果を持っているし、マリの説明通り、個人調整やメンテナンスも不要だ。

それを実現する為に、恐らく装着者の身体魔素を読み取る5種類以上の何らかの魔術陣が、偽装されて組み込まれている。

そしてさらに、微妙に効果の異なる身体浄化の魔術陣が10種類、このデザインに合わせて組み込まれている。

つまり、このペンダントに魔術陣を組み込んだ職人は、私にも読み取れないほど巧妙に、5種類以上の魔術陣を偽装して組み込んだ後に、同時に10種類の身体浄化魔術陣を構築して重ねがけをしなければならないはずさ。

このペンダントのような小さな個体に、これだけの数の魔術陣を組み込むのは、魔術陣の干渉にも気を付けなきゃいけないから、これを造った職人の腕は間違いなく超一流だ。

同種の魔術陣は後から重ねがけ出来ない事は、お前達も知っているだろ?

集合魔術のように魔術構成を分担して、同時に行使する場合と違って、意志付けや魔術の干渉の問題があるから、かなり綿密な構成をして、思考共有出来る一部の精霊族以外は、個人が並列処理で書き込むしかないんだよ」(文末参照1)


つまり、一言でいえば、もしこれをヨシト=ウッドヤットが造ったと言うならば、彼は10種類の魔術を同時に行使出来る怪物であるという事だ。

エマ=シンプソンは、一つ溜息をつくと結論を言う。


「そんな理由から、このペンダントに値段を付ける事は難しい。

だが、どうしても買い取れというなら、2000万ギルだね。

ただ、毒殺を恐れている獣人族の貴族なら、その10倍だって買うだろうさ。

…なあ、マリ。これは本当に、40前の人間族の職人が造ったのかい?

実物を目の前にして言うのもなんだけど、私はそれが一番信じられないよ。

いっそのこと、水精族の秘宝だと言ってもらった方が、まだ信じられる」


エマの言葉に、マリは返事を返せない。

彼女は無意識に、テーブルの上に置かれたペンダントを手に取り、困惑と歓喜が入り混じった表情で、ぎゅっと握りしめた。




設定および解説

(1)解毒のペンダントについて

エマが『鑑定』ギフト持ちだからここまで解っただけで、普通なら魔黄白金製のペンダントぐらいしか解りません。

魔術陣が仕込まれたアクセサリーは魔道具になりますから、価値が上がります。

固体に魔術陣を組み込む事を魔術刻印を打つとか刻むとも言いますが、専門家用語に近いのであまり使いません。

魔術刻印は独立した回路なので、重ねがけ出来るという設定ですが、同種の魔術を後から重ねがけすると、元々在った魔術刻印を破壊してしまいます。

魔術陣は立体的な模様の様なものですが、物理的なものでは無いので、少し重なるぐらいなら正常に機能します。

ただし、重なる部分が多いと魔術陣は干渉を起こし、魔術は効果を現さなくなります。

ですから、小さな物質に複数の魔術陣を組み込むことは難しいのです。


ヨシトは、この問題を解決するために、魔術陣が干渉しない様なデザインでペンダントを設計して、かなり細かく造っています。

このペンダントが、幾何学的なデザインなのは、そのような理由からです。

偽装して魔術陣を組み込む事は普通はやりませんが、非常に難しい技術です。

特に、ギフト持ちの鑑定でもはっきりと解らないほど偽装するのは神業に近く、今はそこまで出来るのは世界中でヨシトだけです。


ちなみに、魔術刻印には寿命があります。

術者の腕や素材によって差がありますが、魔黄白金の場合は最大でも100年程度と設定しています。

魔黄白金自体も、頻繁に自由魔素を開放すると劣化しますので、解毒のペンダントは不滅の物ではありません。

それと、この世界でのアクセサリーの値段は地球より安くて、天井知らずではありません。

素材も安く、職人系ギフト持ちがいる世界なので、当然と言えます。



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