7 外へ
「……ここが?」
「そっ! 美容室!」
昨日ロイドに、髪型を選んでもらおうとした時は「なんでもいいよ」と言っていた。
けど、一緒にネットを見ているうちに「これにしてみたい」と自分で決めてくれたのだった。
それが、なんだか少し嬉しかった。
左右バラバラだった髪を、おしゃれな髪型にカットしてもらい、メガネをかけると、どこか優しげな雰囲気になった。
(うわぁー!今風でめちゃくちゃカッコいい!)
美容室では「素敵な彼氏さんですね」なんて言われて、思わずニヤッとしてしまった。
「アン……何かニヤついてて、気持ち悪いんだけど」
「まさか! さ! 服も買いに行こう!」
そのままファストファッション店に移動した。
「これとかどう?」
そう言いながら、首筋を隠せるようにハイネックの服を選んでロイドに渡した。
何着か鏡の前で合わせてみせると、ロイドも自分から服を手に取ってみたりしていた。
ロイドが選んだ数点も含め、トップスとパンツ、あとはコートも買い揃えた。
せっかくだから、買った服に早速着てもらう。
「うん! すごくよく似合ってる!」
満足気に頷くと、ロイドは少し気まずそうに尋ねてきた。
「……お金、大丈夫なの?」
給料のやりくりが苦手な私は、ロイドに生活費を丸投げしている。
どうやら瞬時に収入と支出のバランスを計算したようだ。
さすがアンドロイド……計算能力が素晴らしい。
「貯金あるから大丈夫よ!」
(本当は結婚資金だったけど、必要なくなったし)
心配そうな顔をしながら荷物を抱えてくれるロイドを見て、欲が出てきた。
(もっとおしゃれな服も着せてみたいなー)
少し歩いて、メンズファッションがたくさん入っているファッションビルに入った。
しばらく歩いていると、ロイドがきょろきょろと周囲を見回しはじめた。
「どうしたの?」
「視線を感じる……」
そう言ってあたりを警戒するロイドを見て、私もギクッとした。
だけど、こんなに雰囲気が変わっているのに気づく人がいるだろうか?
少し不安になり、ロイドの服の裾をキュッと掴む。
おそるおそる周りを見渡した、その時――。
「……栞?」
私の名を呼ぶ声が聞こえた。
私が振り返ろうとした瞬間、ロイドはサッと私の肩を抱き寄せ、庇うような体勢をとった。
「……だれだ?」
危険を察知したかのように、ロイドは低い声を出した。
その鋭い視線の先には、驚いた顔をした元カレの延原伸が立っていた。
「お前こそ誰だ? 彼女は……」
言いかけた元カレの言葉を遮るように、私は慌てて声を張った。
「ロイド! この人は私の同僚よ! 会社の仲間! 大丈夫だから!」
必死に説得したが、なぜかロイドは警戒態勢を解こうとしない。
その張り詰めた空気を感じ取った元カレは、複雑そうな表情を浮かべていた。
「あー、延原君。私たち今デート中なの! じゃあまたね!」
そう一気に捲し立てると、まだ鋭い目つきで元カレを睨みつけているロイドの手を引き、逃げるようにビルを出た。
そのまま近くの狭い路地裏に飛び込み、バッグから取り出した煙草に火をつける。
深く吸い込み、紫煙をゆっくりと吐き出した。
けど胸の中は、まだもやもやしていた。
「どうしたの? あの人は……ただの会社の人だよ」
「……一瞬だけ敵意を感じたから」
「そんなの分かるの?」
「まぁ、そういう機能があるから……」
「……私に?」
「いや……俺に」
一瞬、目を見開いた。
ロイドはなぜか気まずそうに、ふいと目を逸らした。
「なんで……」




