41 延原と宮本
アンを探しに出て行こうとするロイドを緊急停止させ、スリープモードに切り替えた。
そのうえで、プログラムの解析を急いだ。
該当プログラムの場所は目星がついていたため、朝方には結果が出た。
――くそっ! なんてプログラムを入れやがる!
殺人システムの標的は、『プログラム作成者』から『小川栞』に書き換えられていた。
その時、スマホが震えた。
着信表示――宮本。
表示を確認し、通話ボタンを押す。
「おはようございます、宮本さん」
『どうだ。プログラムは確認できたか?』
「はい、確認できました。すぐに消去しますか?」
『待て。有力な証拠だ。ロイドの身柄をいったんこちらで預かる』
「はい。証拠としてですか?」
『ああ、そうだ』
「ところで、小川さんは?」
『ああ。隔離シェルターにいる』
「ロイドが居場所を確認できないと動揺していたんですが……」
『あそこはGPSの電波が届かないからな』
そこまで話した時、リビングで物音が聞こえた。
直後、パタンと玄関が閉まる音が響く。
「え……?」
『どうした?』
朝日の入る明るいリビングへ向かうと、そこにロイドの姿はなかった。
(スリープモードが解かれた?――しまった!朝だ!)
急いで玄関へ向かう。
靴もない!
「ロイドがいなくなりました!」
『なに?!』
小川さんの居場所が掴めないのに……いったいどこへ?
『おい! 大丈夫か?!』
「宮本さん! 栞は……小川さんは、本当にシェルターにいるんですか?!」
『すぐ確認する!』
数秒後。
スピーカー越しに、宮本の焦った声が聞こえる。
『いない!!』
その声を聞くや否や、僕はスマホをそのままポケットに放り込み、小川栞のマンションへ全速力で駆け出した。
――間に合ってくれ!!
マンションの部屋に駆け込むと、ロイドがナイフを振り上げている光景が目に入った。
「ロイド――――!!!」
背後から接近し、緊急停止装置をその背中に押し当てて作動させる。
ロイドが栞に向かってナイフを振り下ろす寸前、ピタッと動きが止まった。
視線を落とすと、栞が腹部から大量の血を流して倒れていた。
栞の腹部を押さえ、止血しようとするが、手が震える。
血があふれ出て止まらない。
『おい! どうした!』
スマホから宮本の叫び声が聞こえる。
「栞!栞が……!刺されました……!」
『くそっ!救急車を向かわせる!我々も間もなく到着する!』
「血がっ!止まらない……!」
(頼む!!止まってくれ!!)
遠くから、サイレンの音が近づいてきていた。
◇
栞は救急車で搬送された。
僕は停止したロイドとともに、宮本に連れられて施設へと向かった。
手がずっと震えていて、止まらない。
徹夜したというのに頭は異常なほど冴えわたり、さっき目撃した惨状が脳裏から離れなかった。
「先に……プログラムを消していればっ……!」
僕の声は、絞り出すような泣き声になった。
宮本が僕の背中に手を置き、静かに言った。
「いや――証拠のために残させたのは私だ。私の責任だよ」
僕が落ち着くまで、宮本は何も言わずにずっと隣にいた。
それから――
僕は施設で証拠書類の作成を手伝い、ロイドのプログラム修正を行った。
すべての処理が終わるまでに、2週間近くの時間を要した。
――明日、ロイドを再起動させる。




