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メタル色の瞳  作者: 空蝉
40/43

40 抵抗


 玄関の扉が開く音がした。


 鏡から勢いよく目を離し、笑顔で振り返る。

 ロイドの姿が視界に入り、目が合った瞬間――

 彼の顔から、一切の表情が消え失せた。


 まるで、洋館に置かれたあのアンドロイドたちのように。


(え……?)


◇


 早くアンの顔を見て安心したくて、俺は急いでマンションへ戻った。

 玄関を開けると、すぐに彼女の気配が届く。


 奥へ進み、アンの姿を捉えた瞬間――体内で何かが勝手に作動した。


 本当は、今すぐにでも抱きしめたい。


 なのに――指一本、自分の意志で動かない。

 身体は意思を裏切り、キッチンにあった果物ナイフへと手を伸ばす。


(何をする気だ……やめろ、やめろー!!)


 アンが驚愕に目を見開く。


(逃げろ! 逃げろアン!!)


 ナイフを握りしめたまま、足がアンへと向かっていく。

 必死で抗おうとするものの、冷却ファンが激しく唸るばかりで、身体の暴走は止まらない。


 アンは、逃げなかった。

 微動だにせず、俺を見つめている。

 彼女の胸元には、俺が贈ったネックレスが輝いていた。



 ――ズブッ、と。

 手に、嫌な感触が伝わった。


(あぁぁぁぁ!!! 嫌だ、嫌だ――!!)


 目元から、勝手に涙が溢れ出していく。


 アンは血に染まった手を震わせながら伸ばし、俺の頬に触れた。

 そして、流れる涙をそっと指先で拭う。


「愛してるわ――ロイド」


 ただ一言そう残すと、彼女は固く目を閉じ、膝から崩れ落ちた。


「うわぁぁぁぁ!!!」


 声だけは、なんとか自分の意志で振り絞ることができた。

 だが、動きは止まらない。

 俺の腕は機械的にナイフを引き抜き、倒れたアンに向かって再び振り下ろされる。


「いやだぁぁぁ!!!」


 バンッ!!!


 強烈な音を立てて玄関のドアが開き、延原が跳び込んできた。


「ロイド――――!!!」


 背中に鋭い衝撃が突き抜け、一瞬で視界が途切れる。


(あ――緊急停止、してくれた……)


 闇に呑み込まれる直前、倒れるアンの姿が焼き付いた。


 アン――


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