↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタル色の瞳  作者: 空蝉
39/43

39 会いたい


 まだ薄暗いうちに、洋館を出る。


 黒いスーツの男性たちは全員出払っているし、奥様もまだ眠っている。

 それに、ここのアンドロイドは命令しないと動かない。

 自分から話しかけてくることもない。

 どこまでも、ただの機械だ。


(顔は同じなのに――ロイドじゃない)


 思ってたより簡単に洋館を抜け出せたことに、ほっと胸をなでおろす。

 けれど、不在がバレればすぐに連れ戻されるかもしれない。

 だんだんと白んでいく空と睨めっこしながら、ひたすら駅に向かって走った。


 駅のホームに着くと同時に、滑り込んできた始発電車に飛び乗る。

 誰もいない車両の席に座り、荒い呼吸を整えていると、車窓から朝日が昇ってきた。


 朝日が昇るのが異様に早く感じる。

 それに反して、電車のスピードはあまりにも遅い。


 早く! もっと早く――!


 あの日――

 ロイドが過去を告白し、私に手を伸ばした時。

 一瞬、体を強張らせてしまった。


 あの瞬間を、何度も、何度も後悔した。


「ロイド……」


 ロイドと離れて、初めて止めどなく涙が溢れ出す。

 泣いている場合じゃないのに――。


「会いたい――っ」


◇


 ゆっくりと瞼を上げる。


 眩しい――。


 あぁ、朝だ。

 アンにコーヒーを入れてあげないと……。

 横になったまま周りを見渡した。

 ハッと息をのんで、ガバッと起き上がる。


 家じゃない!!


 そうだ、昨日、延原の家で――。

 そこまで思い出して、急いでGPS機能を立ち上げ、アンを探す。


 ――いた!! 家にいる!!


 その時、隣の部屋から延原の声が聞こえてきた。


「はい。確認しました。すぐに削除しますか?」

「はい……証拠として――えぇ……」


 どうやら電話をしているようだ。


(確認?削除?プログラムのことか?)


 会話の内容も気になるが、今はそれどころじゃない。

 一刻も早くアンの顔を見ないと安心できない。


 俺は静かに立ち上がり、気づかれないよう足音を殺して部屋を出た。


◇


 部屋に戻ってきたけれど、ロイドはいなかった。


(ロイドはまだ、戻ってきてないのかな?)


 ダイニングテーブルの上に、あの日もらったオープンハートのネックレスが残されているのが目に入った。

 手に取ると、あの時の気持ちがフワッと蘇り、自然と顔がほころぶ。


 鏡を見ながらネックレスを付けると、小さなハートが胸元を優しく飾った。


 その時――。


 玄関の扉が開く音がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。