↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタル色の瞳  作者: 空蝉
2/42

2 落とし物


ガサッ。


 目の前のゴミ箱の奥で、何かが動く音がした。

 息をひそめて暗闇を覗き込むと、巨大なゴミ箱の中に誰かがうずくまっている。


「大丈夫ですか?」


 声をかけて、思わず息をのんだ。


 顔面の左側と左肩の皮膚が裂け、そこから鈍い光を放つ金属パーツが剥き出しになっている。

 破れたシャツ越しに見える骨格の構造に、私は言葉を失った。

 全身をまじまじと見つめる。


 ――アンドロイドだ。


 左手に煙草を持ったまま、右手で彼の乱れた金髪をそっとかき上げた。

 綺麗な顔立ちをしている。

 見たところ、うちの会社の製品ではなさそうだ。



 シャツの裾をそっとめくり、腰のあたりを確認してみる。

 けれど、あるはずの製造番号が見当たらない。


 ……ということは、非合法製品!?


「メーカーに連絡? ……でも、どこの製品かも分からないし……警察?」


 スマホを取り出し、どこへ連絡すべきか頭を巡らせる。

 自分を落ち着かせるため、煙草を深く吸い込んだ。

 紫煙をゆっくりと吹き出しながら、ふと、突飛な思いが頭をよぎる。


(これ……持って帰っても、バレないんじゃない?)


 いやいやいや!


 もし見つかったら『遺失物等横領罪』で一発逮捕だ。


「ねえ……動ける?」


 裂けてない右肩をゆすってみると、「ウッ……」とかすかに声が漏れた。


「立って。そんなところにいたら、嫌な臭いが移っちゃうよ」

「……ほっといてくれ……どうせ、行くとこなんてないんだから……」

「ご主人がいるでしょ? 家はどこ?」

「戻ったってスクラップだ」


 自嘲気味の笑みを浮かべ、アンドロイドは呟いた。


(あれ?……)


「まさか……アンドロイドって高いでしょ? そんな簡単にスクラップだなんて……」


 アンドロイドは、それ以上何も答えない。

 ただぼんやりと、メタル色の瞳で遠くを見つめている。


 そんな彼の様子を見ているうちに――

 ザワリと胸の奥から、暗い欲望が湧き上がってくる。


 ――このアンドロイドが、欲しい。


 理由なんて分からなかった。

 けれど、このまま捨て置くことはできなかった。

 

「……行くところが無いなら、うちにおいでよ」


 短くなった煙草を、携帯灰皿でもみ消した。

 そして、私は彼の冷たい腕を、強く引っ張り上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。