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第12章・決別の時

 暮越は、小学4年生の時にこの魅月町に引っ越してきた。そしてその当時から”いじめっこ”だった。自分が楽しむために人を傷つける。気に入らないことがあっても人を傷つける。彼が小学6年生の時、風邪を引いてしばらくの間学校に来ない時期があった。その間多くの生徒達は束の間の安息を楽しんだ。しかし、久しぶりに登校した暮越は、以前にも増して影が濃くなっていた。


「……き……許さねぇ……」


 そうつぶやいている姿も、何度も見かけられた。


 中学生になってから本格的に「不良」の道に入った。義務教育制度がなければ卒業も出来ないほどの出席日数。白昼堂々、仲間を連れて表通りを歩きながらタバコを吹かす姿もよく見かけられた。


 一時期の間、その仲間に夜季もいた。


 夜季は率先してタバコやケンカに手を出したわけではないが、一緒に学校を抜け出し、真夜中まで街中をうろつくなどということはしょっちゅうだった。


 暮越と夜季は、悪友として周りに認識されていた。しかし、高校に上がる際、夜季はそのグループに「飽きた」のであった。


「で? ウワサってなんだよ。暮越」


 今、二人は学校の屋上にいる。


「ヨキ。お前さあ……ウチの副会長とツルんでるのは知ってたけどよ」


 ポケットに手を突っ込み、見下すような目つきで暮越は言った。


「最近、あの白髪女とも仲良くなってるって?」


「!?」


 夜季は一瞬驚き、表情を険しくした。


「別に仲良くなんてしてねーよ。向こうから絡んできてるだけだ」


「ほーう。じゃあよ、その白髪の企画したイベントに乗ってるってのはどーゆーこった? 話によると、お前そいつの家に毎日通ってるみてえじゃねえか」


 暮越はフェンスにもたれ、問い詰めるように言葉を続ける。


「俺の知り合いがよ、昨日の夜お前がその家から出てくるのを見たらしいぜ」


(……どこまで知ってるんだ、コイツは……)


 夜季は背筋に嫌な汗をかくのを感じた。


「お前も丸くなったよなぁ、ヨキ。昔はもっとツンツンしてたのによ」


「……なにが言いたい?」


 羞恥なのか、怒りなのか、よくわからない感情を必死に抑えながら、夜季は聞き返した。すると、暮越はフェンスから離れ、夜季の目の前に立った。


「なに似合わねえことやってんだよ。なにが文化祭を盛り上げる、だ。下らねえ」


 容赦なく、言葉を吐き続ける。


「教師共どもの開催する行事で、ガキがはしゃいでるだけだろうが。なんでお前がそんなことに手ぇ出してるんだ」


 暮越の言っていることは、夜季の意見と全く同じだった。今更言われなくとも、やめようと思っているところだった。


「どうせ、俺も……」


 夜季がそう言おうとした時、暮越が次の言葉を吐いた。


「みんなそう思ってるぜ。どうせお前も、俺と同類じゃねーか。あんな遊びで楽しめるほど幼稚じゃねえだろうがよ」


(同類……遊び……?)


 しばしの間、夜季の視界に暮越の姿は入らなかった。目は前を向いているものの、意識は別の思考に向かっていた。


(同類……傍からはそう見られているのか? 俺は……。他の人間からすれば、俺も「不良」の一人にすぎないってか?)


 それは、とっくにわかっているはずのことだった。自分はそう認識されている、ということは頭ではわかっていた。しかし、改めて暮越に言われると、なぜか知らないが抵抗を感じた。


(それに……遊びじゃねえ。確かにスーコは一見ふざけてるように見える。けど……なんだかんだで、現実に叶いつつある。前進している。……これは、遊びなんかじゃない。少なくともスーコやリンは本気だ)


 夜季の脳裏に、雛子や凛、夕紫、壬織の姿が浮かぶ。そして、”じぃ”のニヤけた顔が。


「おいヨキ。聞いてんのか?」


 暮越に胸倉を掴まれ、夜季の意識は現実に戻った。


「違う……」


「あ? なんだって、ヨキ」


 夜季は暮越の手を払い、視線をそらす。


「お前と一緒にするな。俺は俺だ」


「一緒だろ−が」


「違う。 俺も……アイツらも、お前が思っているようなもんじゃない」


 そう言って、夜季は屋上を去って行った。


 あとに残された暮越は、しばらくの間呆けたように突っ立っていたが、突然足を振り上げ、階段に続くドアを思い切り蹴りつけた。


 ガァーンと鈍い音が響くのを背中に聞きながら、夜季は生徒会室に戻った。


「ヨキ、どこいってたの?」


 部屋に入ると、まっ先に雛子が声を掛けてきた。


「やる」


「へ?」


 雛子の顔を見ながら、夜季は静かに言った。


「やってやるよ。美術係」


「本当!?」


 凛が驚く。半ばあきらめかけていたところだったらしい。


「その代り、他の脇役とかはやらねーからな」


「りょーかい!」 


 雛子がおどけて敬礼のポーズをとる。


「そんじゃ、放課後にマー君も呼んで早速撮影に取り掛かるとしますか」


「その前にキャストを決めないと。放課後、他の人たちにも集まってもらおう」


 夜季は壁に背を預け、目を瞑る。


(なんだか知らないが……暮越のやつにバカにされたままで終わりたくねえ)


 とにかく、本格的に動き出した。活動も、夜季も。


 そして、暮越も。この時から不穏な「なにか」を計画していたのであった……。

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