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『嘘』と『毒』使いの彼女は僕の世界を崩壊させる!?  作者: 濱田健太郎
第一章 世界崩壊の始まり
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14/19

世界崩壊の始まり14

「ねえ、中山田くんは人間以外の存在って信じる?」


「人間以外って……動物とか、昆虫とかの話か?」


「いいえ、それ以外の存在よ。簡単に言ってしまうと、空想上の存在」


「空想上の存在って……あれか、魔法とかドラゴンとか」


「そう、悪魔とか天使とかドラゴンとか魔法とか吸血鬼とか獣人とか人魚とか魚人とか魔法、異能、妖怪、魔物、魔王、勇者、妖精、エルフ、ドワーフ、ゾンビ、神様、女神様、とかよ。言うなれば空想上の存在の実在を信じる?」


 聞くまでも無い。そんなもの信じてはいないに決まっている。

 龍音寺の言う空想上の存在とは、あくまでも空想上の存在であり、この世界には実在していないのだから、信じるもなにもないじゃないか。そんなものがこの世界に簡単に存在していたとしたら、毎日がデンジャラスで大パニックの人類は滅亡な事は間違いないだろう。学校に登校中、モンスターが現れた。倒してレベルが上がった。なんとモンスターは起き上がり仲間になりたそうな目でこちらを見つめている。仲間になった。なんてことが日常茶飯事で起きるわけがない。

 ありえない。絶対にそんな事はあるわけがない。あってたまるもんか。

 と、つい数日前の僕ならそう思うだろう、いや、今ももちろんそんな事を思わないわけじゃない。僕の人生のモットーは平凡に生きて、平凡に死んでいくだ。

 特に起伏もなく、平凡な人生を送ることを何よりも信条にして生きてきた僕が、そんな小説や、漫画、アニメ、映画でしか出てこないような空想上の存在が実在しているなんて信じれるわけがない。

 だけど、僕は見てしまった。空想上の存在の実在を、この眼で見てしまった。


「そんなもの信じれるわけがない……と言いたいところだけど、お前みたいなやつがいて、そのお前がそう言うんだから信じざるを得ないだろ」


 その存在自体、まるで魔法のような美しさを持つ龍音寺麗羅。そして、奇妙な姿をした明らかな人外な幼女を従える、そんな彼女が言うのだから、その答えを出すのは誘導尋問にも似た質問だった。


「そう、中山田くんの言うとおり実在するわ」


「やっぱりそうなのか!?」


「嘘よ」


「……は?」


「私みたいな麗しい美女がいて、その麗しい美女がそう言うのだとしても、だからといってそれが全て真実とは限らないんじゃないかしら」


「……はい?」


「だから、嘘よ」


 嘘。だから嘘。


「いや、ちょっと待て、もう良くわからなくなってくるから一回整理させてくれ。どっからどこまでが本当で、どっからどこまでが嘘なんだ」


「どっからどこまでが嘘なのか、どっからどこまでが本当だなんてものは私にも分からないわ。だって私はこの世界に生まれてまだ二十年すら経ってもいない女子高生なの。嘘か本当の違いなんてものを断定するにはまだおこがましくさえ感じてしまう年頃なの。まだ知らない事が多すぎるいたいけな女子高校生なのよ」


「なにがどういたいけな女子高生なのか、僕には理解しがたいものはあるが、ってそんな事はどうでもいい。だから、つまり、どういうことなんだよ!?」


「だから、つまり、悪魔とか天使とかドラゴンとか魔法とか吸血鬼とか獣人とか人魚とか魚人とか魔法、異能、妖怪、魔物、魔王、勇者、妖精、エルフ、ドワーフ、ゾンビ、神様、女神様なんていう空想上の存在が実在しているかなんて事は私にもわからないわ。ただ、私という存在が実在しているのは確かな事。今はそれくらいの真実しか私にはわからない」


「……つまりは、これから何が起こるのか分からない。ひょっとしたらいるのかもしれないし、いないのかもしれない、だけど、会ってみないとわからない、その状況に遭ってみないとわからない。とでも言いたいのか」


「あら、中山田くんのくせに読解力があるじゃない。……まさか、中山田くんに似せた悪の結社の戦闘員!?」


「やめろ。今、思考回路が一番デリケートな時期なんだ。悪の結社の戦闘員とかそんな安易な設定の敵キャラいらないから」


 龍音寺の言葉全てが嘘にも思えるし、真実にも聞こえてしまう。いや、八割は嘘だと思っているけども。


「あら、中山田くん。案外それは本当の事なのかもしれないわ。だってさっきの気持ちの悪い少年もそんな感じの設定なはずよ」


「そんな設定って、お前……え!?」


 何気なしに、さきほどまでうなだれて廃人になっていた金髪少年の方へ顔を向けてみると、そこには、少年の姿はおろか、しぼんだ風船のような元マッチョな怪物もいない。


「上だぁっ! バカヤローっ!」


 叫び声にも似た声が上空から聞こえてくる。

 上から、風船のように膨らんだ、元マッチョだったものが、金髪少年と共にゆっくりと落下してくる。いつのまにどうやってあそこまで移動したのかわからないが、風船のように膨らんだ元マッチョは、身体全体が球状になっていて、その身体の大きさも先ほどの姿よりも肥大しているようだった。

 まさかとは思うけども、このまま僕たちの事を潰すつもりなのか。


「どこまでも俺様の事を馬鹿にしやがってっ! おっと、簡単に避けるなよ。こいつの今の重さは十トン近くある鉄の塊みたいなもんだ。お前らが避ければその下にある校舎の奴らはぺしゃんこになるのだからな。どうにか出来るものならやってみるが良い、はっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁぁ!」


 事態は急を要する事はわかるが、冷静になって話しを聞いていただきたい。まず、僕は基本的に被害者であり、あなたの事を馬鹿にはおろか、むしろ同情してしまう立場であることを理解してもらいたい! 僕は味方だ! 君の毒で蝕まれた心の痛みは良く分かるっ!

 と、声を大にして叫びたい所だが、あそこまで怒りくるってしまっていれば何を言っても、聞く耳は持たないだろう。顔面を真っ赤にさせてなにやら言葉にならない雄たけびをあげている。相当にショックを受けたんだろう。

 このままでは奴に潰されてしまう。でも、確かに避けてしまえば、校舎の皆もただでは済まないだろう。だからといって僕にどうすれば良いんだ。


「ねえ、そういえば、中山田くん」


 どうしようも無い状況に頭を抱える僕に対して、相変わらずのテンションの龍音寺が、いつもどおりのテンポで喋りかける。


「空想上の存在が本当に実在しているのか、そんな事は中山田くんはもちろん、私にだって分からないのよ。だからといって、実在はしないと決め付けるのは早いし、とても早計だと思うの。だから私は、私に出会ったものの存在を信じるし、出会ったものではないモノの存在も信じる。この世界は何が起こるかわからないものね」


 ああ、本当に何が起こるのか分からないよこの世界は。そして、ちなみになんだけど、その世界がここらへんでサクッと終わっちゃいそうなんだけども。

 少しずつ落下スピードを上げて落ちてくる重さ一トンの塊。


「だから、そうね。中山田くんはこの状況で、もし魔法使いだったらどうする?」


「はぁ?、この状況で一体何言ってるんだよ!?」


「ボキャブラリーが低いのは分かってるから、そんな高レベルの回答は期待してないわ。早く答えなさい」


 この緊迫した状況で一体何を考えているんだろうか。そんな事を考えてる暇もなく奴らはもう目と鼻の先にまで近づいている。


「さあ、早く」


「……ああ、わかったよっ! とにかくバリアを張ってやつらの攻撃を防ぐっ」


「それから?」


「それからは、それからだよっ!」


 僕らと、奴らの距離はもう五メートルもない。もう、ぶつかる。


「バリア、ね。中山田くんらしいといえば、中山田くんらしいわね」


 もうダメだ、と思い目を瞑り、身構えていると、そんな皮肉たっぷりな言葉が聞こえたと同時に、腹の底まで響くような衝撃音が辺りに響き渡った。

 鼓膜が破けてしまったんじゃないかと思うが、その衝撃音の割りに自分の身体には痛みすら、むしろ何にも感じない事に気づく。

 一体、何が起きたんだろうか。むしろ、もう僕は死んでしまったんじゃないだろうか。なんて事を考えながら、恐る恐る眼を開けてみようとする。

 気づけば、ビリビリと小さな電気音のような音が聞こえてくる。


「人生のパラメーターを守備力に全部振り分けている中山田くんになんて言おうと無駄なのかもしれないけれど、人生、時には『責める』事も重要なのよ」


 それを言うのなら『攻める』だろう。と、言い返したい気持ちがあったけれど、今はそれよりも現状を把握する事が先決だ。

 重い瞼をしっかりとあけてみると、ありえない状況が目の前で起きていた。

 薄緑色した液状の膜が円を描くようにして、僕と龍音寺を囲っていた。その円に進行を阻まれるように、僕たちの頭上すれすれのところで、重力を帯びた十トン以上の衝撃があったであろう奴らは、ぴたりと動きが止まっていた。


「こ、これは……?」


「さて、なんでしょう?」


 薄緑色した液状の膜が円を描くようにして、僕たちをやつらの攻撃を防いでくれているように見えるこれは、漫画やアニメで出てくるあの『バリア』なんだろうか。


「ねえ、中山田くん。バリアって、何か障害から防いでくれる時に、バリバリって音が鳴るからバリアって言うのを中山田くんは知っていたかしら」


「嘘をつけ。僕も、バリアの名前の由来なんて知らないけど、そんな安易な発想の名前のわけないだろうが」


「ええ、嘘よ」


「分かってるよっ!」


「でも、分からないわよ。あのサラダには定番のシーザードレッシングの由来だって、作った人の名前をそのままもじっただけなのだから、バリアの由来もシンプルなものなのかもしれないじゃない。中山田くんの顔の造りみたいに」


「さりげなく人の顔を馬鹿にするなっ」


 確かに、そこまで深い造りの顔ではない事は自他共に認めるけども、シンプルイズベストという言葉があるように、何事も複雑な造りのものが全て良いとは限らないのだ。単純なものほど奥が深い。


「負け犬の遠吠え、という中山田くんにピッタリの称号を進呈するわ」


「そんなもの勝手に進呈するなっ!」


「じゃあ、贈呈するわ」


「いや、じゃあ、とかそういう意味じゃなくて……」


 どうしても僕の事を罵倒してくてしょうがないらしい。

 と、その瞬間、大きな電気音が聞こえてくる。龍音寺いわく、バリバリ、という音の鳴るバリアが何か障害から守ってくれている音だ。


「おいっ! さくっと無視してんじゃない。どこまで馬鹿にすれば気がすむんだっ!」


 ありえない状況の連続で僕の頭は少し麻痺してしまったのだろう。頭上に変な物体がいるというのに、完璧に存在を忘れていた。

 バリアを破ろうとしているのか、またもや人型の銀色首なしマッチョに変形した奴と一緒になって全力で僕らめがけて殴りつけていた。もちろん、バリアに阻まれて奴らの攻撃はむなしくもバリバリと音を鳴らせるだけである。

 このバリアがどれだけの耐久力があるのか、少し不安にもなったけど、十トン以上の衝撃を防ぐバリアなのだから、そう簡単には破られはしないのだろう。

 

「あら、まだいたの?」


 本当にいた事を忘れていた、と言わんばかりのテンションでそんな事をつぶやく。

 その声が聞こえてきたのか、奴らは必死になって殴りつけていた。勢いだけでみれば本当に破ってしまいかねない猛連打をする奴らに向かって、龍音寺は手のひらを掲げる。 


「今、中山田くんと大事な話をしている真っ最中なの」


 いや、今話している内容は、とてつもなくくだらない話なんだけども、主に僕の事を罵倒しているだけなんだけども。


「邪魔だからどっかに行きなさい」


 決して強くもなく、もちろん優しくもないそんな雰囲気で放たれた言葉の通り、音も無く目の前から消えた。いつの間にか、僕たちを覆っていた薄緑色のバリアはも姿を消していて、屋上に存在するのは、冴えない男子高校生の僕と、類稀に美しい少女の龍音寺だけだ。


「……龍音寺」


「何かしら?」


「今のはどうやって……いや、あいつらはどこに行ったんだ」


「さあ? たぶん、アンゴラ辺りじゃないかしら」


 アンゴラってどこだよ。今度、地球儀でも見て探してみる事にしよう。


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