4-3とある少女たちの話:宮辺
重たい空気が、その部屋を更に暗くさせていた。
リーダーの和さんを筆頭にみんなが座るその部屋で、僕らは話し合っていた。前はあの子の可愛いおうちだったけれど、もう使ってはいけないと和さんのところに集まった。ここは少し居心地が悪い。背中がぴりぴりして緊張が抜けない。
赤い目をこするのは居なくなってしまったあの子の相方で、その傍らには悲しそうな顔をした新入りちゃんが宥めていた。
「あの子のことは、非常に残念です」
決まり文句のようにそう切り出して、和さんは続ける。
「あの子は優しすぎた。普通に暮らすには多くとも、俺たちのように暮らすには無理があった。そして、きっとあの優しさでは、遅かれ早かれ、いつかはこうなっていたでしょう」
ああ、嫌な言い方だ。
そう思いつつも、悪役をかってでる人にそんなこと言えるはずもない。この人は恩人。途方に暮れていた僕らを救ってくれた人だ。
「あの子の席は、怜に。そしてあの子が担当していたあの世界のコピーは、赤桐が代わりました」
ちらりと目線をずらし、和さんが空席を睨む。
ごめんね和さん、赤桐ちゃんってば今日もおサボリです。
なんとも言えない空気の中、数人が難色を示した。それでも誰一人として抗議できない。それがあの子の希望だったから。それが赤桐ちゃんであるから。
「それから、発端の話ですが、罪人は消す決まりです」
誰も何も言わなかった。
ただ、まあ当然だろうと思う。罪人。世界を滅ぼす人。何処の世でも処刑は存在する。ありふれた話だ。
世界は沢山ある。
例えば、剣や魔法の世界。科学の世界。能力者の世界。数え切れないほどのそれらは通常交わらず、別々に別々の時間を過ごしている。一つ一つ秩序があるが、その秩序が崩れたとき、世界は滅びてしまう。 一つが滅びると歪みが生じる。それはこの、どことも繋がっている世界に影響を及ぼし、ほかの世界へとまた影響を伝えていく。
その秩序を守るのが、和さん。
そして和さんに個々の世界を任されているのが、僕らだ。
僕らは秩序を崩す奴らを監視し、報告する。それが決まり。
まあ今回は、義務感だけではないけれど。
「ですが」
ーーです、が?
びりり。
一気に空気がキツくなる。
殺気立ったみんなにひと呼吸おいて、和さんは言った。
「そうも行かなくなりました」
ガタっと大きく音を立てて、殺気立ったなっちゃんがなにかを怒鳴る。怒り狂って、何を言っているのかもわならないほどに。なっちゃんは、あの子のことを気に入っていたみたいだったから。
「落ち着きなさい」
複雑そうな顔をしてそう言って、ため息をつく。
余裕のある態度。いつもみたいな。
何故、急に取りやめを?
この間までは、やる気満々だったのに。
「今回の件は、赤桐に任せています。既にあそこはあの子の管轄ですから」
「待ってよ、和さん」
それじゃあ納得できないよ。あの子がそう望んだの? 本当に? でもそんなの浮かばれない。
「今までは管轄なんて関係なかったじゃん、なんで急に? そりゃ赤桐ちゃんの管轄だから意見を配慮するってのは、分からなくもないけどさ、でも全部任せるって乱暴すぎない? それって本当に和さんも納得して許可したの? 理由が無理なら、せめてどうするかだけでいいから教えてよ」
脳裏で無表情な赤桐ちゃんの横顔が浮かぶ。
赤桐ちゃんは外れものの僕らの中でも、異彩を放っていて。だからだれも赤桐ちゃんに強くは出れない。ほんの少し、 みんなと赤桐ちゃんはずれている。
誰も赤桐ちゃんの考えていることがわからない。意図してそうしているのか、自然とそうなのかすらもわからない。
赤桐ちゃんがわざわざ?
いつもはいくら催促されたって手を出さないのに。めんどくさがりなんだから、ルールに口出しするなんて思わないけどな。
でも、まあ、うん。
赤桐ちゃんが決めたなら、僕は特に反対はないかな。大切な相方だし。
「赤桐は、罪人に力を与えました。……赤桐の、ほんの少しの力です。それにより罪人は一生……永遠にあのダストボックスから出られません。記憶も剥奪されました。たまに迷い込む者たちの面倒を見ること。それが赤桐が罪人に課した罰です」
「はあ!? 何それ! 何それ!? どんな心境の変化なの! あの人が? 本当に? あんたが決めたんじゃなくて!?」
「あの子の元々の方針もふまえ、俺も許可しました。これは決定です」
「あの、私も納得できません。あの人は居なくなったのに、何故そんな……」
別の子から発言が上がるが、和さんが切り捨てる。
「それから、共犯者および危険度SSですが。彼らは今後赤桐が監視することになりました。あり得ないことですが、もし彼らにここを知られらようなことがあっては困る。皆、なるべく彼らとは接触を控えるように」




