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SCARLET  作者: 九条 隼
俺達天才サイキッカー!:超能力者達の話
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4-2とある少女たちの話:咲哉



 あのね、あたしね、如月ちゃんの紅茶すき。あったかくて、あまくて、心もぽかぽかするの。少し苦いけど、色も綺麗。


 あの子はいつもかわいいお家に招待して、紅茶を振舞ってくれた。お嬢様みたいとはしゃいでいるとあの子は優しく笑って、並んでソファに座った。



「和さんから?」


 聞きながら、少し困ったように、あの子は笑う。怒られるって心配してるのかもって、あの子にくっつく。細い腕に自分の腕を絡めて抱きつくと、危ないですよと柔らかく窘められた。でも少し優しく笑うから、もっとぎゅっとした。


「伝言ですよね?」


 小さく頷くと、やっぱりと肩を落とす。預けられた手紙を渡すと、あの子は眉を下げた。


「なんて書いてあるの?」


 たまにこうしてお使いをお願いされるけど、中身は見たことがない。いつもは何も思わなかったけれど、なんとなく、その日は聞いてみた。

 あの子は少し恥ずかしそうに目線を下げた。


「多分、手を出しすぎないようにって」


 よく分からなくて首をかしげると、あの子はそっと封筒を開いた。封筒の表に名前が書いてあれば、それは本人しか読めない。隣から覗き込んでも、そこには全く別の内容が書いてあるように見えるらしい。そう言うおまじないがかかってるんだよ、と前に宮辺おねえさんが教えてくれた。

 やっぱりと肩を落としたあの子は、小さくため息をついた。


「ここの世界、たいへん?」


 いつも疲れてるみたいで、すごく心配だった。本当は相方だろうとあまり頻繁に行き来しちゃいけないのに、こうやってあたしがお使いを頼まれる。きっと大変なことをしてるからなんだろう。


「そう……ですね、大変といったら、大変なのかも。でも、きっと……」


 小さく呟く姿が弱っているように見えて、心がきゅうっとなる。やっぱり大変なんだ。かわいそう。力になれたらな。そっと顔をのぞき込むと、あの子は苦笑した。


「ごめんね、何でもないの。きっと、なんとかなるよ。なんとかしないといけないの。せめて、せめて……最悪の事態だけは免れないと」









ーー居なくなっちゃったの。どこにも居なくなっちゃった。

 みんなに優しくて、紅茶を淹れるのがとても上手なあたしのお友だち。あの子のお家にはもう行かないようにと和さんは言う。なんでどうしてと聞くと、あそこは死んでしまったからと、答えた。


 死ぬ? 世界が死ぬ? そうならないようにあたしたちが居たんじゃないの? そうしたらあの子はどうなっちゃったの?


 和さんを質問責めにしていると、扉が開く。赤い髪のおねえさん。久しぶりに見たその人は、前と変わらずだ。集まりにも来ないから、滅多に会えない。

 だけど和さんは少し怒ったような口調でおねえさんに叫ぶ。



「どういうつもりです」

「どうって、なにが?」

「庇い立てして匿って、何をするつもりです!」


 なんの話か分からないけど、和さんが怒っているのを見るのは初めてだった。少し怖くて体がすくむ。おねえさんはゆっくり歩み寄って、あたしの頭をよしよしした。


「如月ちゃんは死んじゃったよ」

「赤桐!!!」


 死んだ? あの子が?

 意味のわからない言葉にじっとおねえさんを見上げる。


「でも、でも、あたしたちアリスだよ。また生まれ変わってくるよね? そしたらまた会えるよね? ね?」

「体だけ死んだのならまた会えた。でも、そうじゃないの。あの子は力を使い果たしてしまったから、また生まれ直すこともできなくなっちゃったんだよ」


 なんで? どうして? なんでそんなことになっちゃったんだろう。理解できなくておねえさんを見つめる。和さんがあたしとおねえさんの間に入った。



「やめなさい」

「過保護だね、この子は知る権利があるんじゃないかな」

「受け入れられる歳ではないでしょう!」

「へえ、それなら永遠に受け入れられないんだろうね」


 二人が言い合ってる。おねえさんの顔は和さんの後ろからじゃ分からない。和さんは知ってる。おねえさんも知ってる。なのにあたしは知らない。そんなの嫌だ。

 だってあの子はあたしのいちばんのお友だちなの。いちばん仲良しで、いちばん一緒にいたの。いちばんあの子のことをよく知っているのは、あたしだもん。

 和さんを押しのけておねえさんにしがみつく。



「サクちゃん」



 おねえさんは少しかがんで、あたしと同じ目線で話す。



「如月ちゃんはね、消えちゃったの。大切なものを守ろうとして、心を削りすぎていなくなっちゃったんだよ。あの世界も、死にかけて使えなくなっちゃった。みんな死んでしまって、サクちゃんの世界と同じように凍結されて動かなくなったの」

「あたしのところと、同じなの?」

「そうだよ」



 それは。それはとても悲しいことだ。

 みんながキャラクターみたいに同じことを話すあたしの故郷を思い出す。これはとても悲しい。動かなくなってしまったことも、そして、如月ちゃんがそこで居なくなってしまったことも。

 いなくなってしまった。もう会えない。

 現実味のない話だけど、おねえさんがこんな嘘をつくことは、きっとない。最悪の事態だけはとつぶやいていた如月ちゃんを思い出す。



「和さん、おねえさん、あのね、如月ちゃん頑張ってたの。頑張ってたんだよ。いつも大変そうにしてたの、あたし知ってるの。如月ちゃん頑張り屋さんだもん」

「ええ、……そうでしょうとも、わかっていますよ」

「あのね、でも……駄目だったの? 頑張っても駄目だったの?」


 おねえさんが何かを言おうとして、和さんが止めた。和さんはいつも如月ちゃんがしてくれてたみたいに、あたしをぎゅっとしてから、小さく謝った。







 その日、あたしは初めてルールを破った。






「あたしのお友達を返して」



 唯一見つけたその人に、泣いて、縋って。


 すぐに連れ戻されたけど、和さんは怒らずに、暫くは怜ちゃんと一緒にいるようにと、そう言った。






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